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2010.06
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

今の時期のこと、どうして「梅雨」って言うの?

 

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スーパーの店先に、梅酒用の梅が並んでいた





熱帯のスコール。文字どおり、土砂降り





マングローブの林の中の水路を行く。根は水にどっぷりつかっているみたいだけど・・・





干潮時のマングローブ。
ほんとだ! 土が空気に触れている!





これが熱帯雨林










 

6月、雨の季節だねぇ。
今の時期のこと、どうして「梅雨」っていうの? 梅の季節って冬じゃない?

それは花の季節。今は、梅干しになる梅の実、それが実る時。その時期に降る雨という意味だよ。
日本には、季節について、「雨」という字を用いた古くからの表現がいくつもある。
また降り方の表現もさまざまだ。天気雨、こぬか雨、五月雨、寒の雨・・・とかね。和歌にもよく詠まれるよ。また、絵などの題材としても好まれ、例えば、江戸の浮世絵師・広重は雨の風景をいくつも遺している。


和歌・・・? 
あ、「村雨の露もまだひぬ真木の葉に霧立ちのぼる秋の夕暮れ」!
広重の浮世絵は、大雨の中大きな橋を人が渡っている図(=名所江戸百景/大はしあたけの夕立)を本で見たことがあるよ。

お、よく知ってるな。

その梅雨、「今年は雨が多い」「今年はカラ梅雨」とかって聞くけど、梅雨に雨が降らないと、どうなるの? 木の育ち方に、影響がありそうな気がするんだけど。

植物一般、夏に水不足で、枯れることはもちろん多々あるよ。
雨量が足りないことによる米の凶作は新聞にも大きく扱われるね。


日本では梅雨、熱帯地方では雨季があるよね。
木にとって、雨はまとまって降る方がいいの? それとも、平均的に降った方がいいの? 

そりゃ、平均的な方が良いとは思うな。水不足の時がないわけだから。それに、偏った降り方は洪水、渇水ということにつながるからね。
熱帯の雨季と乾季は、いわば、中緯度地域(北緯・南緯ともに30度〜60度付近)における夏と冬のようなものなんだ。


熱帯の乾季って、半年くらい雨が降らないでしょ。
その間、水がないのに、どうして枯れてしまわないの?

雨季と乾季の差がはっきりしたところでは、乾季は水が不足する。
貴重な水だから消費を抑えたいし、そもそも水が確保できないと光合成もできない。だから葉は不要となり、落葉してしまう。
つまり、木は自分の体の中に水をためておく工夫をしているというわけだ。
このような林を、雨季に緑の葉をつける林という意味で「雨緑林」と呼ぶ。
一方、中緯度に分布する、冬に葉が落ちる林は、夏に葉をつけている林の意味で「夏緑林」というんだよ。


水って、逆に多すぎても植物にはよくないんだよね? 上高地の大正池の木は枯れてるもの。植木鉢の花だって、水をあげすぎると、枯れちゃう。
・・・あれ? でも、熱帯のマングローブは水の中に根を下ろしているよね。なぜ、枯れないの?

マングローブとは、おもしろいところに目をつけたなぁ。
うん、あれは確かに水の中だね。
ただ、陸上の植物に必要なのは、土の中へ酸素を取り込んだりするために土と空気が接していること。すっかり水に覆われると枯れてしまうんだ。
大正池の場合は、土が完全に水没してしまっているから枯れる。
一方、マングローブは、実は毎日潮の干満があって、土が空気に触れているんだよ。だから枯れないんだ。


そうなんだ! マングローブ、いつも水の中から生えているイメージだった。
水分が少なすぎても、多すぎても木は育たない。じゃあ、どれくらいの量がちょうど良いんだろう。

陸上植物は、常に土の中から水を吸い上げて身体の中を通して葉などから蒸発させる。
蒸散作用というけれど、これが無いと植物は死んでしまう。
森林でこの蒸散に使う水の量はかなり大きくて、降水量に換算すれば、年に300から1,000mmという。蒸散量は、もちろん草原よりも森林で多く、それが満たされなければ森林は生育できないんだ。
つまり、降水量の多いところだけが森林生育可能な地域というわけ。
その地域の範囲は、地球の陸地面積の1/3程度にあたるといわれてきた。その後砂漠化が進むなどして、いまや1/4程度に減少しているそうだよ。


森って、広い地球に1/4しかないの!? 
その地域は、場所によって雨の量もいろいろなんだろうね。

そのとおり。いくつか地域別に、例を挙げてみようか。
年間降水量世界最大の記録は、インド北東部のチェラプンジという町の26,461mm(1860-61年)、最少はエジプト南部のアスワンの0mm(1901-20年)で、平年値0.7mm。
わが国でいえば、平年値は、紀伊半島の尾鷲4,000mm、北海道の網走600mmなど。
・・・イメージできるかな?


具体的な量はあんまりピンとこないけど、差があるのはわかった。
そのあたりの地域はそれぞれ樹木の種類も違うんだろうなぁ。

そう。木にもそれぞれ好みがあるからね。ただその好みの対象は、雨の量よりも、土の湿性の違いかな。
例えば、マツ、ツツジなどは雨の少ない乾燥地、ヤナギ、ハンノキなどは、うんと湿ったところが好きだね。


日本では雨の降ること、木があることがあたりまえで、それが生活になじんでいる。
だから雨を表す言葉がたくさんあったり、昔から和歌や絵などの題材になってきたんだね。

そう。そして、そうした雨などの気象条件の違いは、その地域に暮らす人々の思想にも影響する。じぃじ先生はそう考えているんだ。
これは、森林雑学ゼミの方で詳しく話すとしよう。

 

 

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