只木良也森林雑学研究室 本文へジャンプ

 
2010.08
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

土砂崩れって、どうして起こるの?

 

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土砂は奥から手前へ。なぎ倒された木、すっと立ち残った木。






どれだけ大きく崩れたか! 真ん中に写る人の姿から規模を感じてください。






右上から左の真ん中あたり、それが崩れた境目。かろうじて残る木の根がむき出しに。






鳥居の前を土砂が流れていったそう。ちょっと怖くて、ちょっと哀しい。






ごっそりえぐられた土壌。住めそう・・・?

(写真はいずれも、平成18年7月の岡谷市豪雨災害)

 

 

今年の梅雨は、ものすごく降ったね。災害のニュースも多かったなぁ。
特に「土砂災害」っていうのが目立った気がするんだけど、土砂崩れって、そもそもどうして起こるの?

大きくわけて、表面の崩壊と深層の崩壊、2つの構造がある。
豪雨で土の中にしみこみきれないほどの雨が降ったとき、その水は地表を流れる。これが地表流。
水は必ず低い方へ流れるから、地表面のわずかな凸凹でも、凹の方へ集中するだろう?
そして水は水だけで流れず、必ず土や石も一緒に流れる。これを表面侵食というんだ。
浸食された溝はだんだん大きくなって浸食・崩落が進み、水と土石は土石流となって、田畑や人家に襲いかかるというわけ。

こわいよねぇ。
木の根が土砂崩れを防ぐって話を聞いたことがあるよ? 

そう。樹木の細根は土壌をつなぎとめて、網をかけたように働き、直根はその網に杭を打ったように働く。確かに、表層の浸食・崩壊を防ぐのに大きく働いている。
こうした表層の崩壊に対して、深層の崩壊がある。

深層崩壊って、土ごと根こそぎ滑り落ちることだよね?

お、よく知ってるな。
降水時間が長く、降水量が多ければ、土の中は水で一杯になって、土の粒同士だけでなく、基盤の岩石と土の境目の結びつきが緩くなる。
水がしみこみにくい基岩と土の境目に水の層ができてしまうんだよ。そして、土は基岩の上を滑って落ちるんだ。


そのとき、土の中に張っていた木の根っこはどうなるの?

根っこは土を抱いているよね。その土とともに、一緒に流れるんだよ。文字通り、「根こそぎ」だ。
だから、厳密に言えば、深層の崩壊、つまり基岩との境目から滑り落ちる崩壊に対しては、森林は直接的な効果がない。もちろん深層崩壊に至る前の段階で、その影響を和らげているとはいえるけれど。

日本で最近、深刻な土砂災害が多いのは、やっぱり昔と比べて森林が減ったから? 

いや、日本の森林は、実は減っていないんだよ。
確かに、人の目にふれるところ、つまり街の近くでこそ減ったが、日本全体として見れば、そう激減したというわけではないんだ。だから森林が減ったというのは理由にはならないね。
考えられるのは、土砂崩壊を食い止める力が弱くなったからだろう。

食い止める力が弱くなった? どういうこと?

これは主には人工林の手入れの問題だね。ちょっと込み入った話になるから、これは森林雑学ゼミで詳しく説明することにしようか。
ただ、近頃は森林の機能の低下ばかりではない。やはり集中豪雨型の雨が多くなったことが最大原因だと思うよ。今年の豪雨も異常だった。

でも、森林には、水を貯める働きもあるでしょ? バングラディシュだったか、上流の森林伐採が土砂災害の原因のひとつだと聞いたよ。

そう。よい森林があれば、落ち葉などが腐りながら土に混ざり込み、孔(すき間)が多い土を作る。そうした森林の土はよく水をしみ込ませるので、地表流は少なくなる。
しみこんだ水は、ゆっくり時間をかけて土の中を動き谷川へ出たり地下水になったりする。だから、下流の川では、雨が降ってすぐに急増水(洪水)せず、晴天続きでも水涸れ(渇水)しにくい。
これを「河川水量の平準化」というが、「緑のダム」の名もこのことを言う。

その働きでは止められなかったの?

それにも限界があるよ。あれだけ降ってはなぁ。
森林の水保全と土保全は、そもそも同じことといえるんだ。水が土にしみこむことが基本なのだから。また、水を貯めるからこそ、かえって、土が緩んで災害の可能性が高まると考えられることもある。
でも、そうはいってもやはり、森林が持つ水保全の性質は、プラスの面に働くことの方が大きいんだよ。


ニュースで気になったのは「以前にも起こった」ということ。そういえば、メコン川やナイル川では、古代から氾濫をくりかえしてたっていうよね。
洪水や土砂災害って、くりかえし、同じ地域で起こるものなの?

地形、土質、気象条件などの面から考えて、同じ災害が起こりやすい場所があるのは当然。
「災害は忘れたころにやってくる」というが、初めて起こったという場所でも、うんと昔には同じような災害が起こっていた可能性は高い。
例えば、長野県岡谷市。ここはもともと雨の少ない地帯なんだが、平成18年の7月15日から19日まで降り続いた降水量は400mmを越え・・・。

ちょっと待って。400mmの降水量ってどのくらい?

岡谷市の平均年間降水量の3分の1程度かな。


うわぁ。それが5日で一気に降ったってこと? すごいなぁ。

でしょ? その大量の雨が市内数箇所で山地崩壊・土石流を発生させ、死者8名、家屋の全壊10戸、半壊17戸、浸水271戸の被害を生んだ。
この災害について「過去に例が無い」というような表現が使われたが、それは「記録・記憶が無い」だけで、沢の出口の扇状地形から見て、過去にもあったことは明らかなんだよ。
それと、これはじぃじ先生の推測なんだけど・・・。
そうした土石流災害の現場にはもともと神社などが多く見られたんだ。それらは、過去に類似の災害があり、その跡に祈りを捧げるために設けられたものの名残、と思えてならないんだよなぁ。

災害が起こってそれを鎮め、またそこを災害が襲って・・・。
大量すぎた雨、それから梅雨が明けてからの猛暑続き。「記録的な」ってくりかえし言われているけど、そんなにすごいの?

すごいすごい。じぃじ先生の子どもの頃は、クーラーなんてなかったし、なくても過ごせたよ。


それって地球温暖化・・・?

地球温暖化といっても、地球全体の温度が一様に高くなるわけでないんだ。
地域差が当然あって、それによって気流が変化するなどして異常気象となる。
今年の猛暑は、北極を巡る偏西風の経路が変わり、そのすぐ南側の日本列島に高温で湿った気団が例年以上に影響したということらしいよ。
これくらいはまだ序の口だろうなぁ。これからもっと大変なことが起こるだろう。

大変なこと・・・?

地球規模の気候変動は、温暖化によって海水面が上昇したりするだけじゃない。
雨の降り方が変われば、農業生産に影響し、増加する地球人口が養えなくなるし、今の気候条件下ではある地域に閉じ込められている疫病が蔓延したり、・・・。

え〜っ!? それはほんとに大変だぁ!

そうした問題に、世界レベルで対応しようという組織が、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」。気温上昇も含めて気候・気象の異常全てを対象にしている。
でも、人間たちが、今の活動を続け、ますますエスカレートさせる限りは、森林はじめ植生も当然変わるはず。
まぁ、それでも「生き物」は存在するだろうが・・・。


問題は「ヒト」だよね。一体、どうなるんだろう・・・。


 

 

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