只木良也森林雑学研究室 本文へジャンプ

 
2010.10
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

今年は「生物多様性年」なんだって。

 

  swpochiバックナンバー






秋の彩り、四国にて。
山にはきっと、動物いろいろ、植物もいろいろ。




里山・里地、京都美山。多様な生態系の密接混在。SATOYAMAは、COP10へのわが国提案、キーワード。




湖水とヨシ原。
琵琶湖に連なる西の湖(安土山の西)。


食べる側・食べられる側・・・。
食物連鎖って、こんな感じ。




ミズナラの根元の洞穴、クマの冬眠用らしい。お留守でよかった・・・。

 

 

今年は「国際生物多様性年」なんだって。科学館で特別展をやっていたよ。国際会議もあるんだよね。

そう、国連によって定められたんだよ。
2002年に企画された「生物多様性の減少速度の減速」の目標年にあたる今年、「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」が、10月に名古屋で開催されることになっている。
新聞やテレビでよく話題になっているね。

あれ? 去年コペンハーゲンでやったのは、たしかCOP15。
今度が10? 数字が減ってるよ?

お、よく知ってるな。そう、それはよくある疑問。
COPというのは、「締約国会議」の略号なんだが、同じCOPでも内容が違うんだ。
昨年のコペンハーゲンは「気候変動枠組み」条約第15回でCOP15、今回は「生物多様性枠組み」条約の第10回会議なのでCOP10、というわけ。

そっか。いま、たくさんの生物が絶滅しつつあるんだよね。哺乳類展でも見たよ。ちゃんと保護しなくちゃね。

それはそうなんだが・・・。
そもそも「生物多様性」って何かな?

え? 地球上にはたくさんのいろんな種類の生き物がいるってことでしょ。

その答えは間違いではないんだけど、う〜ん・・・。
「生物多様性」という語は、英語では“Bio Diversity”。
この言葉の解釈、なかなか難しいんだ。混乱や誤解が生じやすいというか・・・。
その「生物多様性」って言葉、知っているのはどういう使い方だろうか。

よく聞くのは、「生物多様性の維持」・・・かな。
いろいろな生物が共に生きられる環境を整えましょう、希少種とか絶滅危惧種を守りましょうって、ことだと思うんだけど。

なるほど、一般的にはそうとらえられているようだね。
「多様性」は「種の数が多ければ」と、考えられがちだ。希少動物を保護することも大切。
ただ、ちょっと考えてごらん。
「多様性」を考える舞台は地球だ。植物園や動物園のような施設で、多種の生物を育てているのとはわけが違う。

え〜っと・・・それぞれが、それぞれに生きていかなきゃいけないってことかな?

うん。生物が生きていくために必要なのはなんだろう?

空気とか水とか食べ物とか・・・。

その「食べ物」は、どんなもの?

草とか木とか、虫とか動物とか・・・これも生物だ。あ、食物連鎖だね。

そのとおり。
生物が生きていくためには、これまた生物が必要なんだ。いろんな生物が互いに食ったり食われたり、関連しあって生きている。
とすれば、その生物種の数を多く保つためには「生態系の多様性」が必要となる。

生態系の多様性・・・?

同質の生態系ばかりが広がっているよりも、そこに、各種さまざまな生態系が混在している方が、多様性は当然高くなるだろう? 

あ、そうか。
食べられる側の種類が多いってことは、食べる側はそれに応じて多種存在できるってことか。

そう。
生物多様性の維持について考えるとき、この「生態系の多様性」を本質として、「生物種の多様性」「遺伝子の多様性」を加えた3つが柱とされる。
多い種数を維持するということは、それぞれの種の絶えることを防ぐために、「生物種(内)の多様性」すなわち「遺伝子の多様性」を保つ必要があるというわけだ。

じゃあ、生態系が多様じゃなくなったら、自ずと消えていく生物も・・・。
・・・あれ、これって絶滅しそうな種を保護することと矛盾してる?

それを淘汰というんだよ。
自然淘汰は自然の掟。
だからといって、希少種は守らなくてもよいということでないよ。
だけど、単に、ある絶滅危惧種や希少種を守ることだけでなく、それを含めて、生態系全体の働きを維持して、全体を守るという点に意義があると思うんだ(→森林雑学ゼミ)。

生態系全体を守る・・・。いまひとつイメージがわかないなぁ。
とりあえず、COP10でどんなことが話し合われるのか注目しておくことにするね。


 

 

swpochiページの先頭に戻る

swpochiじぃじ先生 ちょっと教えて バックナンバー

 

   


 
Stories of Forest Ecology  只木良也 森林雑学研究室
当サイト内の文章・画像等の無断転載はご遠慮ください。©2009-2024 YOSHIYA TADAKI All Rights Reserved.
inserted by FC2 system