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2012.01
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

ナンテンって、縁起がいいんだよね。

 

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大政奉還の舞台、二条城の門松。
その背丈、どど〜んと約3m。さすがです。





縁起物、ナンテン。
マツとともに、日本のお正月を飾る。





これが3回複葉というナンテンの葉。
複葉のニセアカシアとは、葉のつき方がちょっと違うね。





葉は、こういう種類に分けられる。
2011.9ちょっと教えて より





赤い葉。鮮やかだね。





ばぁば流のおせちはゆったりすっきり。
添えたナンテンも、のびのび。





こちら、センリョウ。





こちらは、マンリョウ。





おまけ。黄色いナンテン、見〜っけ。

 

 

  お正月、あちこちで門松を見かけるけど、やっぱりマツって、おめでたい植物の代表なんだなぁって、つくづく思う。

冬も緑で縁起がいい「常磐木(ときわぎ)」の代表だ。古くから日本人にどれだけ好まれ大切にされてきたかは以前に話したね(→2010.1ちょっと教えて)。

うん。縁起がいいっていえば、赤い実のナンテンもだよね。マツと一緒に飾られているのをよく見るよ。

お正月には特にね。掛軸や短冊などにもその絵は多い。
武士はかつて、鎧びつ中にナンテンの葉を入れ、出陣に際してはナンテンの枝を床に飾ったという話もある。


あ、「難を転ずる」だ。その意味からだよね、きっと。

だろうね。義経も修行した鞍馬山に今も伝わる竹伐会式という仏事では、山伏は腰にナンテンを挿す。またその折に奉じられる舞は「南天招福の舞」と呼ばれるものだ。

昔から霊験あらたかな植物だったんだね。どれくらい前から親しまれてきたんだろう? 

弘法大師がナンテンでできた杖を地面に突き刺したら根付いたという話があるよ。仙人が持つ杖はナンテン製だともね。
ほかにも、安産のお守りとして、火災除けとして植えるという風習もあったようだ。


あ、でもちょっと待って。今調べたら、日本の文献に最初に出てくるのは『出雲国風土記』らしいよ。

となると、奈良時代か。それはそれは、長〜い付き合いだねぇ。

「南天燭」って記述があるんだって。

南天燭とは、実南天の意味だろう。
南天、南天燭、南天竺など、ナンテンにはいろいろな呼び方があったと本にある。南天竹というのは葉が竹に似ていることからかな。
また、三枝(さきくさ)という呼び名は、3回複葉の意味なんじゃないかと思うよ。


3回複葉? 複葉って、ニセアカシアの葉みたいな?(→2011.9ちょっと教えて) でも、ナンテンの葉って、こないだ教わったのとちょっと違うみたいな感じがするんだけど。

あのときの話、「再複葉」という言葉があったのを覚えてるかい? 葉の種類について、前に使った図でちょっと復習しよう。
まず単葉と複葉の大きく2種にわけられて・・・再複葉は図の一番下。羽状複葉の小葉がさらに小葉に分かれたものだ。ナンテンはこの例だよ。
ただ、ナンテンはさらにもう一段分かれた小葉ももつ。そのため、「3回羽状複葉」と呼ばれているんだよ。


たまに葉っぱが赤いのも見かけるけど、あれも同じナンテン?

ああ、そうだよ。
暖温帯の常緑樹だから、原則として落葉時期は春の新葉が展開した後で、正月には緑色。
しかし株によって、栽培種などには、冬の初めから紅葉して正月には赤いものもある。
ちなみに、葉の散り方はばらばらまちまちで、そんなに目立つものではないよ。

あの葉の形、実の色。本当にきれいだよね。赤飯やおはぎなんかに添えてあるのも、わかるなぁ。

あるある。ただ、それは彩りの理由だけではないんだなぁ。

え? 飾りじゃないの?

ちょっと迷信がかっている部分がなきにしもあらずだが、ナンテンには効能話があるんだ。それは、さっき出た「難を転ずる」に由来する。
そもそもは、小豆を使った食べ物というのは傷みやすいから、食中毒という「難」を回避する意味でナンテンを添えたんだそうだ。
しかし、実際のところ、ナンテンの葉から発する化学物質が効果を持っているという。魚の毒消しにも効くとも。その他、消化、酔い止め・・・。
長い間の経験は合理的な使用法を生んだ。果実も咳止め、樹皮も神経系に薬効があるそうだよ。


あ! そういえば、「南天のど飴」って飴がある・・・!

ね? 古い料理本には、「祝儀の時には葉の表を、不祝儀の時には葉の裏を上にして使う」と書いたものもあるというから、おめでたい時だけに使うものではなさそうだ。
風習との関連で言えば、赤ちゃんが初めてお乳以外のものを食べる儀式・お食い初めというのがあるだろう? そのときに使うお箸はナンテンでできたものが良いとされている。
ナンテンの箸は食べたものの消化が良くなるといわれるんだよ。


きれいなだけじゃないんだね。
そもそも、ナンテンってどこの木なの? なんとなく中国のものっぽいけど。

・・・と思いきや、実は日本の木なんだ。
中国、インドにも分布しているが、本州、四国、九州、暖温帯の、れっきとした日本の自生種だよ。


ええ! 日本なの!?

学名は Nandia domestica といって、命名者は幕末に来日したスウェーデンの植物学者カール・ツンベルグ。Nandiaとは、明らかにナンテンをもじった命名だね。
そしてdomesticaとは「国内の、馴化された」のこと。日本のどこでも見られる木ということに由来するらしい。


いかにポピュラーな木だったかがうかがえる話だね。
ナンテンとよく似た赤い実をつける木で、センリョウ、マンリョウっていうのもあるよね? 

お、よく知ってるなぁ。千両、万両とは本当に見事な名だよね。
その名と真っ赤な果実、そして常緑であることから人気が高く、この両者と並べてアリドウシを植えると験(げん)がよいとされる。「千両・万両有り通し」なんてね。
アリドウシはアカネ科の低木で、これも常緑樹で赤い実がつく。枝に鋭いトゲがあるのでこの名がついた。


すごく似てるけど、ご親戚??

いやいや、センリョウ、マンリョウはよく似ているが、それぞれセンリョウ科、ヤブコウジ科。そして、ナンテンはメギ科だ。
なので、分類上の科も違うまったくの別物なんだよ。
ちなみに、見分け方は実のつき方で、センリョウは上向きに、マンリョウは下へ垂れ下がる。


そっか。共通するのは、どれもあまり背が高くならないってことかな。

そうだね。基本的には低木で、ナンテンについては、幹の太さ10〜20cmのものが「太い」と記録に残っている程度。
そういった材は稀少なものとして珍重される。金閣寺の書院にはナンテンの床柱があって有名だが、床柱になるほど大きなものは滅多にない。


日本で生まれ日本で愛されてきたナンテン。ん? じゃあ英語ではどういうんだろう?
・・・Sacred bamboo っていうんだって。意味は「聖なる竹」。
Heavenly bamboo、「天国の竹」っていう呼び方もあるらしいよ。
うわぁ、外国でも神がかった、特別な植物ってことなのかな。なんかちょっと感動だなぁ。


 

 

 

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