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2012.04
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

今年のサクラ、どうしちゃったの?

 

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こんな意味でも、「特別な花」。
いつもコレが欲しかったんだよね・・・。







お花見は春の風物詩。
大阪・桜ノ宮にて。







自生種代表のヤマザクラ。
花より先に、葉が出る。







コヒガンザクラ、高遠城址公園には、1500本! 
長野県伊那市高遠町







淡墨(薄墨)桜、エドヒガン。
1500歳なんだって!?
岐阜県本巣市







日本サクラ界における最大勢力、ソメイヨシノ。
葉が出るより早く花が咲く。
京都・加茂川土手にて







夜桜もきれいだよね。
でも、ちょっと妖しくて怖い感じ・・・。







きれいなサクラは好き。
おいしいお団子はもっと好き♪

 

 

  いつもより咲くのが遅いよね?

そうだね。今年は高知で3月21日に開花したのが、沖縄を除く全国で最初らしい。
高知では平年より1日早いけど、ほかの地域では、1週間くらい遅れているようだ。
2月の寒さは厳しく、3月も暖かい日が少なかった。4月に入っても、京都ではまだ暖房が欲しい日もあるほど。
・・・で、サクラの花芽の生長が遅くなっている。


サクラの開花ってなんか気になっちゃう。日本人には特別な花なんだろうね。古文だって、平安以降は「はな」っていえばサクラだもん。

春の花の代表選手だね。
じぃじ先生の小学1年生の国語教科書は、「サイタ サイタ サクラ ガ サイタ」で始まっていたよ。


こんなによくニュースに登場する花、ほかにないよね。

そう、毎年皆が、それこそ「なんか気になっちゃう」。新学期というタイミングのせいもあるんじゃないかな。
南からスタートした桜前線(開花日)は、鹿児島から青森まで約1ヵ月かけて北上する。1400km距離があるので、時速2kmだと、幼児が歩くくらいの速度だね。


気象庁がやっていた「桜の開花予想」はなくなったんだよね。

お、よく知ってるな。2010年から、開花予想・公表の担当は民間会社の担当になったね。
開花予想の始まりは、明治から大正に変わる頃。
冷害が続いたことから農業気象の目安として使えるように、というのが目的だった。
その後、太平洋戦争が終わって「桜の開花予想」が公表されるようになり、判定するための標本木が各地で指定され、観測・予測値が全国をつないで、「桜前線」となったんだ。


標本木って、開花日をきめるための基準になる木のことだよね?

そのとおり。長年にわたって開花予想は気象庁の所管だったから、標本木も測候所内のものが多かった。民間に移行してからは、サクラの名所などにも標本木が増えているという話だ。
標本木に指定された木で、5〜6輪咲いたら「開花」、8割以上咲いたら「満開」と判定する。過去の膨大なデータからは、開花日・満開日の平年日も算出できるんだ。
たとえば、鹿児島の開花日・満開日は3月26日・4月3日、青森は4月24日・5月1日といったぐあいにね。

でも、咲く日って種類によって違うんじゃないの? 近所の公園のサクラに比べて、御所の「ねんねの桜」(→2010.4森林雑学ゼミ)は遅いよね。
開花予想に使う木は種類が決まっているのかな? 

いい質問だ。ヤマザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンなどを代表に、わが国には数多くのサクラ自生種がある。それにサクラ好きの日本人は、それこそ数え切れないほどの園芸品種を育成してきた。
その中で、もっともポピュラーで普及度ナンバーワンなのがソメイヨシノ。で、本州、四国、九州では、これを標本木としている。
北海道では、札幌まではソメイヨシノだが、東北部では、エゾヤマザクラ、チシマザクラ、沖縄ではヒガンザクラが標本木。これは、北海道では低温すぎ、沖縄は高温すぎてソメイヨシノが少ないからなんだ。


そっか・・・やっぱりソメイヨシノは最大勢力なんだね。

若い時期から、葉に先立って美しく華やかな花を咲かせるのが人気で、人工的にサクラの園や並木を作るのに用いられるのは、今ほとんどがソメイヨシノ。
ただし、病虫害にやや弱く、何より最大の欠点は寿命が短いこと。確かな理由は不明だが、100年を越すものは稀なんだよ。
一方、エドヒガンは1000歳を超すといわれる古木もあちこちにある。

ソメイヨシノって、かなり昔からあった種類なの?

江戸末期に生まれたといわれているね。染井村(現・東京都豊島区)で、オオシマザクラとエドヒガンを掛け合わせた園芸品種で、サクラの名所吉野山にあやかり、ソメイヨシノの名としたそうだ。

江戸末期かぁ・・・じゃあ、『頭山』で咲いているのはソメイヨシノじゃないんだね?

『頭山』って・・・落語の?

うん。江戸時代にできた噺だって聞いたよ。

あははは! こりゃまた、おもしろいものを持ち出してきたなぁ!
確かに、成立年代を考えるとソメイヨシノの可能性は薄いね。
ただ、『頭山』なら、あのサクラがソメイヨシノではない、もっと絶対的な理由があるな。

絶対的な理由?

『頭山』って、どんな噺だった?

えーっと、サクランボをタネごと食べた男がいて、そのタネがお腹の中で芽を出して育って、頭の上に花を咲かせるっていう・・・。

そう。上方落語では、そのものズバリ『さくらんぼ』という題だよ。
・・・で、決め手はというと、「タネ」だ。
ソメイヨシノはね、実はタネでは繁殖しない性質なんだよ。不稔性といって、人工交配で生み出した品種には時々そういうことがある。つまり、接ぎ木や挿し木をしないと増えないんだ。一種のクローンだね。


ああ、じゃあ、ソメイヨシノじゃないんだ。確定!

なるほど、おもしろいなぁ。『頭山』とは考えたこともなかったな。これはやられた(笑)。

あははは。ところで、サクラの開花予想はどうしてできるの?

生物の世界では、気温の積み重ねがある量に達した時に、ある現象が起きるということが多い。
たとえば、カラマツの葉は春先、日平均気温が2℃を超えた分を日々合計して、それが100℃に達した日に葉が開き始め、それに225℃(約25日分)を足した日に開き終わる。

つまり、平均気温が2℃だった日は0℃、5℃だった日は3℃を足していくということ?

そう。この原理を使えば、サクラでもその年の気温予測をもとに、開花や満開の日が予測できるというわけだ。

じゃあ、温暖化が進んで気温が高くなったら、その影響って・・・?

もちろん、あるある。温暖化が進んで以降、この20年ほどの間に、開花日は1週間ほど早まった。
それから・・・このままもっと温暖化が進めば、花見はできなくなるかもしれないよ。

できなくなる? あ! 寒さが足りなくて?
花が咲くためには、冬の「寒さ」が必要だったよね。(→2010.3森林雑学ゼミ

お、よく覚えてた。
・・・で、花の芽のもとは、いつできるんだったっけ?

えーっと、前年の夏だったよね。

そう。その芽は、できてすぐ「休眠」に入る。春が来る前に咲いてしまわないための安全弁だ。
この休眠から醒めるためには冬の寒さが必要だ。植物はある一定の寒さを感じて目覚め、花開く準備、後は気温上昇、日々足し算して一定積算量になるのを待つ、というわけ。

寒いのってあんまり好きじゃないけど、やっぱり大切なんだね。

開花日が早くなる全国的傾向とは逆に、鹿児島など温暖地では、開花日が遅くなりがちだ。これには、休眠打破の冬の寒さ条件を満足させるのに日がかかるせいではないかという解釈もある。
だから温暖化が進んで、一定の「寒さ」がなくなれば、花芽は眠ったままで・・・。

じゃあ、温暖化が進んだ未来では、『頭山』が通じなくなっちゃうよ。
皆に親しまれているサクラと噺が消えてしまうようなことには、どうかなりませんように!


 

 

 

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