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2012.05
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

京都の林業大学校、はじまったね。

 

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4月9日、ついに開校。







これが、丹波と呼ばれる地域。
兵庫県・京都府にまたがる。







ばぁば特製。
お正月じゃない時に出てくると、とっても嬉しい♪






京丹波町の食のキャラクター・味夢(あじむ)くんだって。頭は黒豆、身体は栗、髪飾りは水菜や松茸!









和知の山々(上)と由良川(下)。
ここに木材が集まり、運ばれていったのかぁ。
※写真提供:京都府立林業大学校






1期生の皆さ〜ん!
「自然を尊敬できる人」めざしてがんばってください! 
※写真提供:京都府立林業大学校

 

 

  学校、どんな感じなのかな?

初年度だから大変なことも多いけれど、今のところ順調だ。学生さんたちも、先生方もがんばっているよ。
何より地元の方の応援が大きいのが、嬉しいことだね。


町に幟や横断幕があふれてるって、感激してたよね、じぃじ先生(→2012.2.5ひとりごと)。
学校のある和知(わち)って、どんなところなんだろう?

京都府船井郡京丹波町。2005年に、丹波町・瑞穂町・和知町が合併してできた町だ。
京都駅からJR山陰線で福知山に向かって北上すること1時間ちょっと。
日本海に注ぐ由良川が流れ、その両岸に丹波の山々が迫る、まさに風光明媚なところだよ。


丹波といえば黒豆だよね。ばぁばのおせちの、ふっくらつやつや黒豆、毎年楽しみにしてるんだ。
・・・あれ? でも、あの黒豆は丹波篠山、兵庫県産じゃなかったっけ?

それ、それなんだ。京都人としては、なんとももどかしい話なんだなぁ。
というのは、たしかに、丹波黒豆(黒大豆)や丹波栗は、篠山(兵庫)の特産品というイメージが強く、丹波=兵庫県と思われがち。
でも、昔でいう“丹波の国”は、実は、現在の京都府と兵庫県にまたがっていて広いんだよ。


ほんとだ、地図で見たらつながってる。なぁんだ。もとは同じ地域なんだ。

そう。和知も同じ丹波地域。地元には、京都が“丹波”の本家だという主張もあるようだ。

じゃあ、こっちの黒豆もきっとおいしいんだね。

どうも、黒豆が頭から離れないみたいだな(笑)。
夏は枝豆、冬はおせち料理の定番。そう、美味しくて特産だよ。
そのほか、丹波大納言の銘柄で有名な小豆、クリも丹波栗として有名だね。マツタケ、シメジなどキノコ類、平安時代からの歴史を持つミズナ、由良川の清流が育てたアユ・・・。自然の恵み豊かなところだ。


自然の恵み・・・となると、林業も盛んなのかな?

そうだね。食べ物ばかりじゃなくて、そろそろ木の話をしようか(笑)。
丹波は古くから良質のスギの産地として有名で、林業地としての歴史は長い。近くに京都という大消費地を抱えていたこともあってね。


スギ? 京都の林業でスギと言えば、北山杉? まっすぐに育てて、床柱に使われるんだよね。

お、よく知ってるな。そう、確かに北山杉を育てる北山林業は京都を代表するものだ。
しかし、和知周辺の林業はその北山式ではない。
もちろん影響がないわけではないが、北山林業の中心地からはかなり距離があるという理由もあって、さほど盛んではないね。
むしろ、和知は材木の産地としてより、丹波一円の材木の集散地としての役割が大きかったんだ。


集散地って?

あちこちで収穫した材木を集めて整理し、消費地へ送り出す拠点のことだよ。
和知に流れる由良川の水運と、山陰道という街道があった。つまり物流の条件が良かったので、丹波地方から伐り出された材木がここに集められていたんだ。
したがって、地域の経済の中心地としての役割も担っていたというわけだ。

大事な場所だったんだ。
和知では今も盛んなの? 今の時代、日本の林業の景気が良くないって、じぃじ先生言っているけれど・・・(→2011.12ちょっと教えて)。

いやいや、日本全国、木材産業は景気が悪いの一言につきるね。和知も同じだ。
太平洋戦後の復興期、好景気だった林業が、昭和39年の木材貿易自由化にともなって低迷化したのは前に話したとおり(→2011.12森林雑学ゼミ)。
以来、林業面の経済・経営政策は不十分で、経営の近代化に遅れた結果、世界の先進国・森林国でありながら木材の自給率の低さは際立ち、一時は20%を下回った。現在は多少回復しつつあるけれど。


なぜそんな時代に、わざわざ京都府は林業大学校をつくったの? 
IT産業が盛んになったから、大学に関係の学部ができるとか、コンピューター系の専門学校が増えるとかならわかるけど。

うん、それは実に基本的な質問だ。
考えてみよう。森林は木材生産のためだけのものじゃない。環境提供も文化育成も大きな仕事だろう?


地球温暖化防止に役立ったり、あ、このあいだの震災でも、津波の被害を抑えたよね?(→2011.11 /2012.3ちょっと教えて2012.3森林雑学ゼミ
それに、「森林が文化をつくる」ってじぃじ先生の口癖だ。(→2010.6森林雑学ゼミ

しかし、そうした多くの役割のうち、金銭経済に適うものといえば、実は木材だけなんだ。
それが低迷すれば、どうしても、それを通じて手当てされてきた環境や文化のための森林対応もおろそかになる。
日本の自然の骨格は森林だ。だから、林業が低迷している今こそ、その森林を生かす方法や技術を学ぶための場が必要なんだよ。


つまり、森林のスペシャリストになるための学校ってこと?

スペシャリスト・・・う〜ん、それからもう一歩進んだところ。知識や技術を持っているだけではなく、適切に使える人になるための学校だね。

適切に使える人・・・?

たとえば、前に話した「森林林業再生プラン」を覚えているかい? 低迷する国内林業と山村衰微問題への対策を、政府がまとめたものだ(→2011.2森林雑学ゼミ)。
戦後の拡大造林の話もしたね(→2010.8森林雑学ゼミ)。あの人工林の保全の問題もある。
それに、さっき出た森林の木材生産以外のいろいろな働き。その効果を維持していくことも、今後ますます重要だ。
これらに対応していくための技術や政策は、決して小手先ではなく、森林をしっかりと理解した上での、森林という自然が持つ摂理に沿ったものでなくてはならない。
そしてそれを実践していくには、優れた技術者かつ地域のリーダーとなれる存在、というのが不可欠なんだよ。


ああ、なるほど。そっか、木の育て方やチェンソーの使い方とかを勉強するだけじゃないんだ。

もちろん、それらを学ぶのは大前提。重要なことだよ。
ただね・・・ほら、自然のメカニズムには「うまくできてるなぁ」と思うことがたくさんあるだろう?

光合成とか? あ、物質循環もそうだ(→2010.12ちょっと教えて2010.11森林雑学ゼミ)。

そう。そういう自然の摂理って、知れば知るほど畏敬の念がわいてこないかい?
そうなれば、その摂理にかなったやり方で、自然と付き合おうという気持ちになっていくんじゃないかな? 学生さんたちには、そこを期待したい。
自然を愛する人は多いが、自然を尊敬できる人は少ない。
じぃじ先生は、「自然を尊敬できる人」になってもらいたいと思っているんだ。

自然を尊敬できる人かぁ・・・。初代校長のじぃじ先生、責任重大だね。


 

 

 

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