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2012.12
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

百人一首の練習をしたよ。

 

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匡房さん、サクラがきれいで嬉しかったんだろうなぁ。
我が家の50年超えの百人一首、再登場。






これこれ、この風景! ざ・里山!
「高砂の・・・」の歌、あの尾根筋にサクラが咲いたって感じ?






里山のクヌギ林。
長きにわたって薪や炭にする木を提供して、人間の暮らしを支えてきたんだよね・・・。






肥料用の落ち葉? 農業用資材? 食料? 燃料?・・・
うん、たしかになんでも取れそう。これが農用林。






「かやぶきの里」として有名な、京都・美山。
昔ばなしの世界へタイムスリップ!






伐っても回復しやすいという、ナラやカシの萌芽林。
こんな風に芽が出て育っていくんだって。なんか独特の光景だね。






これは「ぞうきばやし」かな?

 

 

 

 

 

学校で、百人一首の練習をしたよ。

もうすぐお正月だからなあ。

それでね、高砂の尾上の桜咲きにけり・・・っていう歌、あるじゃない?

外山のかすみ立たずもあらなむ・・・大江匡房だね。意味はわかるかな。

わかるよぅ。山の尾根にサクラが咲いたなぁ、どうぞ近くの山の霞よ、その桜を隠さないでくれ。サクラが見えなくなったら、悲しいから、って。
あれね、「日本昔ばなし」みたいな風景だなぁって思ったんだ。

それは正解だな。
ちょっと考えてごらん。山の尾根筋が見えて手前の低い山に続いてる。その低い山は人家に近いわけだろう? 人が眺めているんだから。ということは・・・

あ、里山だ!

そう。古くは人里近くの山を「外山」、「戸山」、「端山」などと称していた。江戸時代の国学者・賀茂真淵は「門山」、すなわち「入口の山」としている。いずれも「奥山」、つまり山の奥に対しての語だ。
だから「日本昔ばなし」は正解。


じゃあ、「里山のかすみ立たずもあらなむ」なんだね。

ついでに言えば、サクラの咲いている山も、そびえたつような山ではないはず。そんなに高い山に、サクラは生育しないからね。里山の高み、くらいの風景だと思うよ。

おお、すごい! そっか、木の種類で山の高さに見当がつくのかぁ。じぃじ先生にはそう読めるんだね。

和歌も科学だね(笑)。

ほんとだね。
その「里山」っていう言葉。結構よく聞くし、このサイトでも何度も出てきているけど(→2009.9森林雑学ゼミ、ほか)、言葉の歴史としてはそんなに古くないよね? じぃじ先生のお師匠さんが名付け親なんでしょう?

うん。四手井綱英先生による言葉というのが定説のようだ(→2009.12.30ひとりごと)。でも、実は古くに木曽谷で使われた記録があり、また東北でも使われていたという話もある。
とはいっても、ポピュラーになったのは昭和40年代からで、古い辞書には載っていない語だね。
「里山」を初めて取り上げた辞書は『日本語大辞典』(講談社/1989)で、「人里近くにある山」とある。続く『大辞林』(三省堂/1995)では「集落の近くにあり、かつては薪炭用木材や山菜などを採取していた人と関わりの深い森林」と記載しているよ。


あ、大辞林の説明がイメージだなぁ。
COP10で世界に「SATOYAMA」が発信されたのって、そんな意味からだったよね?(→2010.10ちょっと教えて

そう、人間と自然の持続可能な営みの象徴としてのことだったね。
ちなみに四手井先生は「直接収入を伴わない農用林」と定義している。


農用林?

農業生産・農村生活と結びついた林のことだよ。肥料用の落ち葉、農業用資材、食料、燃料などの供給源だね。

農業生産、農村生活・・・説明としてはわかるけど、なんか実感がないなぁ。
だって、現代ではそういう状況は減っているじゃない? なのに、「里山」って言葉は、あちこちですごくよく使われているもの。

お、それはいい指摘だ。
現在、たしかに「里山」が社会的な話題となっている。大抵の場合、人里や集落を広く解釈して使われているね。
山村においてはそれを取り巻く林業地帯、農村では農用林の低山地域、都市においては近在林地や街の中に残った丘陵林地・・・これらを総括して「里山」と言う、という理解だ。
ただし拡大解釈されようと、その中心的存在が「農村−農用林−低山地域」であることは言うまでもない。


そっか、時代の流れからちょっと意味合いが変わってきてるってことだね。
その「農用林」って、いわゆる雑木林だよね? 主に、どんな種類が生えてるの?

ありとあらゆる広葉樹、と言えるかな。里の人たちに薪炭林はじめいろいろに用いられてきたから。

薪炭林って、薪や炭をとるための林だよね。(→2011.8 森林雑学ゼミ

そう、落葉樹ではミズナラ、コナラ、クヌギ、常緑樹ではシイ類、カシ類などがその代表樹種。
ナラやカシは、大抵20〜30年ごとに伐採されるが、その時に皆伐に近い伐り方をしても萌芽しやすいため回復が早く、林が維持される。


ああ、はげ山になりにくいってことか。

そうだね。他によく見られるのは、暖温帯のシイ・カシ林の壊れた後がコナラやクヌギの二次林になっていることかな。 

え? どうしてシイ・カシ林が壊れるの? ・・・っていうか、林が壊れるってどういう意味?

人間の利用度が激しすぎると、土地はどうなると思う?

えーっと、やせていく? ・・・あ、そうか!

うん、わかったね。土がやせると、本来の森林が保てなくなるというわけだ。それを「壊れる」と表現するんだ。もちろん「壊れる」には台風や山火事の影響もある。

う〜ん・・・なんか悲しい。

「雑木林」という語について、ちょっと整理してみようか。『森林の百科事典』(丸善/1996)によれば、5つに分けられる。

@木材用途の主要樹種以外の樹種の林
A価値の低い樹木で構成された林
B広葉樹などの二次林(一度壊れた後に成立の林)
C萌芽更新(伐株からの萌芽を育てる)による薪炭材生産の薪炭林
D落葉採取や農用材を採るための農用林 

こんなに種類があるんだ。

そもそも「雑木(さつぼく)」とは林業の専門用語だ。
良い材木を収穫することが目的の林業において、良材にならない木、主要でない木、薪にする木、入り混じって生えている木などを指す。だから歴史的・基本的な意味としては@やAだった。
しかし一方で、農業・農村周辺にあっては現実にはDとして使われ、Cの方式をとるものが一般的。だから、その姿はBであることが多かったというわけ。

そういうことか。それはわかったんだけど・・・。
あの〜、じぃじ先生。ちょっと気になったんだけど、「雑木林」は「ぞうきばやし」だよ。小学校の漢字テストの定番。「ざつぼくりん」って読んだらバツなの。

なるほど、これはもっともだ。でもね、林業の世界ではそうは言い切れないんだよ。
うーん、そうだなあ・・・さっきの分類で説明してみると、@やAの色合いが濃いときは「ざつぼくりん」、CやDのときは「ぞうきばやし」。後者の方が、人々の営みが生んだ好ましい景観としてのBのイメージが強くなる・・・っていうので、どうだろう?

なんとなく・・・でも、ややこしいなあ。読み方でニュアンスが変わるんだ。
立食パーティーならちょっとおしゃれな会、立ち食いパーティーなら学生のがやがや打ち上げ、みたいな違い?

あははは。それはなかなかうまい例えかもしれないな。・・・さて、百人一首に話を戻そうか。高校生、さっきの歌を品詞分解してみるとどうなる?

えー、それは勘弁してー!







 

 

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