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2013.05
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

お伊勢さんの「御杣始祭」ってなに?

 

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2本の御樋代木。左が内宮用で、右が外宮用。

これが13,800本の中の2本なんだね。

 

 

 

 

 

まず内宮用の御樋代木を伐採。

倒れた木の梢が重なるように、慎重に。

 

 

 

 

 

三ツ紐伐り。倒す方向の切り口が「受け口」。

その脇の2本の弦が「横弦」で、受け口の反対側の弦1本が「追い弦」。

最後に追い弦を切ったら、ちゃんと受け口の方に木が倒れる。

 

 

 

 


 

御樋代木と、御樋代木を伐る小さい斧。

実は細かい作業だから、このサイズがちょうどいいんだね。

 

 

 

 


 

三ツ紐伐りの絵(木曽式伐木運材図会)。

本当に昔から変わってないんだ。

 

 

 


 

お供え物が運ばれてくる。もうすぐ伐採。

 

 

 


 

伐採開始。

内宮用のも外宮用のも、同時に斧を入れ始めるんだって。

 

 

 


 

御樋代木の伐り株にヒノキが挿してある。

20年後ももっと先も、ヒノキがありますように!

 

 

 

 

 
式年遷宮って、何年もかけてものすごくたくさんの儀式が行われるんだね。お伊勢さんのサイトに載っていたよ。

 

そうだね。今回のための行事は、平成17年、実に8年も前から始まっている。

 

「御杣始(みそまはじめ)祭」だっけ? 木曽谷で御用材のヒノキを伐り出すのは。

 

そう、御杣山(→2013.4ちょっと教えて)で、御樋代木(みひしろぎ)を伐採することが目的の神事。天皇の血縁者が神宮祭主として、天皇の名代で参列される、格式高いものだ。

 

御樋代木・・・?

 

内・外宮御神体を納める器を造るヒノキのことだ。
その2本は、御遷宮1回に要する13,800本の中でも、特に選び抜かれた、神聖な木なんだ。

 

その13,800本だって選ばれし者たちでしょう。じゃあ、御樋代木は超エリートだね。
どんなヒノキが選ばれるのかな。条件ってなんだろう。

 

胸高直径60〜70cm、樹高25〜30m程度の通直(真直ぐ)な幹をもつこと。こうした天然生ヒノキは木曽では300〜350年生の木だね。これがヒノキそのものについての条件。
さらにもうひとつ大事なことがある。その2本は同時に伐採するのが決まりだ。

 

同時に、ってことは同じ地域になきゃいけないってこと?

 

同じ地域どころか、内宮用をまず伐倒、続いて外宮用を伐倒するんだが、このとき、倒れた2本の梢が交差しなければならないというしきたりがあるんだ。

 

じゃあ、1本は長野県で、2本目は岐阜県で、というわけにはないかないんだ。

 

そう、つまりは内宮外宮一体ということ。だから、「遠からず近からず」生育している2本を厳選選定する必要がある。
さらには南向き斜面で、その下に谷川があることも選定の条件と聞いたことがある。

 

うわぁ、建築材不足の世の中、大変だぁ。
条件のそろった木を見つけるだけでも大変なんだから、伐り倒すときには失敗なんてできないね。

 

その通り。失敗はあってはならない事態だ。それを避けるために用いられるのが「三ツ紐伐り(みつひもきり)」という方法だよ。
木曽の赤沢で見た伐り株の特徴を覚えているかな?

 

え〜っと・・・。あ、3点を残して伐るやり方だ!

 

そうそう。幹の三方から斧を入れ、弦(つる)と呼ばれる3点を幹の外側に残し(3点支持)、幹を伐り抜いて穴を¬貫通させるやり方だ。

 

それなら倒す方向が絞れそう。でも、斧だけで倒すとか、現代の方法とはずいぶん違うよね。

 

古くから貴重材の伐採法だったんだ。今もって継承されているのはこの祭りだけのようだが。
だから、言うまでもなく技術の伝承が必須。いつも伐り出す木曽地方では、技術伝承の組織が生まれている。

 

写真にある斧で伐るの? なんだか小さくて使いにくそう。時間もかかりそうだし。

 

あははは。でも考えてごらん。幹に3点支持で穴を貫通させるのだから、そもそもそんなに大きな斧は使えないよ。
木を伐採するという作業は一見荒っぽいが、実はなかなか繊細な技術が求められるんだ。

 

なるほどなぁ。でも、小さい斧で伐るとチェーンソーでウィ〜ンって伐ったものみたいに、伐り口がキレイにならないんじゃないのかなぁ。

 

それは、後で切り揃えれば問題ないさ。
それよりもこの「三ツ紐伐り」でやれば、木が裂けるとかひび割れるという事態を回避することができる。

 

ああ、だから、古くから貴重材の伐採に使われてきた方法なのかぁ。納得。
ねぇ。じぃじ先生は御杣始祭に参列したことがあるんだよね。どんな感じだった?

 

昭和60年の時と平成17年の2度ね。式典・伐採、めったに見られないものだけに、やっぱり感激するよ。「賑やかで華やかだけど、厳粛な」、といったところかな。
伐採終了後に参列者は、散らばっている木屑を拾って帰るんだ。これはお守りになる。
神事は式次第にそって進んでいく。

 

 

<式次第(抜粋)>

 

 時刻 参列者所定ノ席ニ着ク
 修祓
 忌物神饌及鶏卵ヲ奠ス
 祝詞ヲ奏ス
 神職奉拝八度拍手両端
 神宮祭主拝礼(一拝)
 忌物神饌及鶏卵ヲ撤ス
 御木伐初メノ儀 
 

 ※これを内宮・外宮それぞれについて行う。

 


そしてこの後、伐採は伊勢からつれて来た鶏を「コケコッコー」と鳴かせ、それを合図に始まるんだよ。

 

鶏の鳴き声って、歴史上、何かと合図に使われる気がする。とにかくメインイベントはヒノキを伐り倒すこと。雨が降ったら大変だなぁ。

 

それが、だ。御杣始祭には雨は降らないんだ。

 

え? え? どういうこと? そんな絶対に降らないなんてこと・・・。

 

・・・と思うだろう? それが、100%晴れなんだそうだ。少なくともこれまでは。実はこれ、じぃじ先生には経験があるんだよ。
平成17年の時、前日の6月2日の時点で、当日3日の天気予報は雨だったんだ。招待客のこともあるし、長時間の祭典と伐採は無理かもしれない。祭典は省略型にしてご神木の伐倒にもチェーンソーを使っては、という、非常事態対応も考えられたという。

 

そうだよね。何しろ場所が山の中だもの。そんな神事に傘をさして参列するのも、なんか違う気がする。

 

だろう? しかし、そうやって周囲が焦っているなか、落ち着いていたのは伊勢神宮の神官。

きっぱりと仰ったんだ、「明日は晴れます。この御杣始には雨の降った記録がありませんから」って。

 

で、実際はまさか・・・。

 

その、まさか。3日はきれいに晴れた。じぃじ先生は日焼けして帰りましたとさ。

 

おお!! お伊勢さんはすごい。断言したその神官さんもすごい。
「御杣始祭は必ず晴れる」というのも伝統なんだねえ。それも1300年分。
う〜ん・・・ずっしり。
 

 

 

 

 

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