檜皮葺(ひわだぶ)きの屋根にタネが発芽。これも、遷移のスタートです。
京都上賀茂・大田神社にて
桜島には今日も噴煙が。
周囲を飲み込む真っ赤な溶岩流は恐ろしいけれど、後には、貴重な資料になるんだね。
きれいなシラカンバ!
このサイトおなじみのヒノキ林より明るいなぁ。そうか、これが「陽樹」ってことか。
長野・奥志賀
砂漠では、遷移が途中どころか、スタートすらできない。
水がないって、植物には致命的なんだね。改めて実感。
草原は、遷移はスタートしたものの、すぐに止まってしまった姿。
その理由は・・・やっぱり水不足だって。
♪夏が来れば・・・
尾瀬の湿原。行ったことないのに知ってる気がするのは、この歌のせいなんだろうなぁ。
落葉広葉樹のブナ林。
冷温帯気候での代表的な極相の姿といえば、コレらしい。
群馬・利根川源流
亜寒帯(亜高山帯)での極相は、常緑針葉樹、亜高山林なんだって。
長野・乗鞍岳中腹
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今年は空梅雨だと思ってたら、とんでもない。「ゲリラ」が多すぎる。
ほんと、じぃじ先生もよく遭遇するよ。近頃は降り方がちょっと異常だね。被害も多い。
まぁ、今年は多すぎるけど、雨は森林を育てる。雨の多い日本だからこそ、国土に森林が多いんだよね。
そうだね。自然の姿は時間とともに移り変わる。その場所のさまざまな条件によって最終的に到達する姿を「極相」というが、雨の多い日本の場合は、原則として森林が極相だ。
そして、その極相に至るまでの過程のことを・・・
ああ、そうだった。
植物が勝手に生えてくる、そして時間がたてばそこの環境が変化し、それに応じて植生が自然に移り変わっていく現象。つまり、生態系(→2010.11森林雑学ゼミ)の完成過程だ。
遷移のこうした一定の順序のことを「遷移系列」というんだ。
一定の順序ってことは、順番はどんな場合も同じなのかな。草が生えて、木が生えてっていう・・・。
大体はそれが基本だが、植物ゼロのところ、例として火山の溶岩が流れたところで考えるとしよう。桜島をサンプルにした研究がある。
鹿児島の、昔から噴火をくり返していて、今も噴煙を上げている火山だよね。
桜島のあちこちに残る溶岩流については、噴火年代のわかっているものが多い。これに、鹿児島大学の田川日出夫先生が目をつけ、それらの上に今、何が生えているかを調べ、年代順につなぎ合わせて遷移の系列を明らかにしたんだ。
これが系列かぁ。でも、溶岩流の上って土がないじゃない。それにカラカラに乾いてそう。コケって、もうちょっとじめじめしたところに生えるイメージだけど。
ああ、一般的な認識はそうかもしれない。
ただ、キゴケ、ハナゴケ、シモフリゴケなどは、コケの名はついているが、岩石の上などに生育する地衣類だ。カラカラのときは手でもめば粉々になるが、水をかけると復活するといわれるほどだよ。
へぇ、乾燥に強いコケもあるんだ。
こうした乾燥したところから始まる系列を、乾燥遷移系列という。
乾燥裸地 → 地衣・コケ → 一年生草草原 → 多年生草草原 → 陽性低木林 → 陽性高木林 → 陰性高木林 というのが、遷移の一般的なパターンだ。
乾燥遷移系列というなら、湿ったところから始まる遷移もあるんだよね、きっと。
あるある。湿性遷移系列は、池や湖の中でも、沈水植物、浮葉植物、抽水植物などと遷移するとともに、枯死物の堆積や土砂の流入によって次第に湿原化、陸地化し、草原、森林化するもの。
他にも、海岸や干拓地のような塩気の強いところでおこる塩性遷移や 乾燥しやすい砂が風で動きやすく不安定なところの砂性遷移などがある。
系列は、その遷移が始まる場所の状態によって決まるってことかな。
そう。最初に生育する植生は、当然ながら、その場所の条件に強い種類だ。そのことを先駆種という。英語で言えばpioneer。
おお、“開拓者”! わかりやすい。
塩性遷移では、塩に強い植物、草ならアッケシソウ、ハマナツナなどからスタート。木本ではマングローブが塩に強い。砂性遷移では、地下茎が発達するコウボウムギ、匍匐つる性で砂を覆うハマヒルガオなどからスタートする。まずは砂の動きを止めることが重要だからね。
じゃあ、砂漠の緑化は、砂性遷移と同じような遷移を人工的に推進しているということなのかな。
砂漠には、水も無ければ土の中の栄養も無いだろう? だから人工的に水や栄養を与え、そこにタネを蒔いたり、植え込んだりする必要がある。砂漠の緑化は、人工的に遷移を起こさせ、遷移系列をショートカットして、目的植生を育てることだといえるだろう。
あ、なるほどね。場所のことはわかったけど、植物としては、遷移のそもそもの始まりってタネなの?
それも、ある。胞子もタネも根の切れ端も植物質皆無の溶岩流の上のようなところへ、どこかから飛んできた胞子やタネが生育して出発する遷移が、一次遷移だ。
対して、山火事や風倒などによって遷移が中断・停止したところ(土の中などに前生の植物質あり)から再出発する遷移を二次遷移という。
始まりの状態は違っても、遷移の系列の後半はみんな共通だ。
ということは、終点である極相は陰性高木林。みんなこれを目指して遷移していると考えてもいいの?
うん。日本においては、そう考えて、まぁ、構わない。「あとは野となれ山となれ」って言うだろう。あれは日本ならではの言い方。言うまでもなく、「野」は草原、「山」は森林のことだ。
砂漠地帯では成り立たないことわざだね。 そう。ただ、降水量、気温、土壌、地形、生物的要因といったいろいろな条件によって遷移進行できないこともある。その場合、ある段階で長期間安定していれば、それが極相だと認めるのが現実的だろう。
ある段階・・・陰性高木林にまで達しない、例えば草原とか低木林とかの途中の段階ってこと?
そう。考えてごらんよ、日本にもいろいろな自然の姿があるよ。
乾性なら火山溶岩流、湿性なら湖・湿地・川の中洲とか。湿原で有名な尾瀬も、昔は大きな湖だったのが陸地化したところで、これは湿性遷移の途中の姿だ。塩性や砂性でいえば、海岸に見られる白い砂浜と松原、いわゆる白砂青松の姿、とかね。
砂漠や草原も、降水量が制限因子となった極相の例。気候極相、土壌極相、地形極相・・・さまざまだ。
あ、そうか。森林も樹種はさまざまで、降水量と気温という条件によって決まるんだった(→2013.7ちょっと教えて)。ということは、あの樹種の違いも、その地の気候条件下での極相の形ってことだね。
そのとおり。ところで遷移を英語でなんて言うか知ってるかい?
ちょっと待って、調べる・・・あ、successionだって。
そう。連続、継承の意味だ。
これって・・・あ、successなんだ!
なるほど〜!
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