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2013.10
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

カナダに行ってきたよ。

 

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大学のプログラムで、カナダに1か月間、語学研修に行ってきたよ。

おかえり!! 

向こうからくれたメールで、「いろいろ取材中」ってあったけど、どんな話を持って帰ってきたのかな。


うふふ。
まずは12時間も飛行機に乗って、上空にさしかかったときの写真。なぜかこれを見たときに「あ〜、カナダの森だぁ」って思ったんだよね。

「カナダの森」か。そう感じたポイントは、なんだったんだろう。


う〜ん、なんとなく。日本の森よりも、遠くから見たときに黒いような気がしたの。

おお、それはなかなか見る目があるな。
カナダの気候区分は亜寒帯。日本で言うと、北海道の針葉樹林帯のような植生が見られる。
カナダでいうトウヒは、日本では北海道に見られるエゾマツのことだ。モミはトドマツ。
こうした針葉樹林帯の森林は、ブナ林など広葉樹林帯よりも暗い色になるんだ。


じゃ、観察は合格だね! 
暗い色っていうのは、葉っぱの色の問題なのかな。

色のことなら、前に若葉の色の話をしたのを覚えているかな。(→2012.6ちょっと教えて)。
葉は、1年目の色は薄くて、2年目には濃くなっていくんだ。


あ、キッコロとモリゾーの話! 成長したら色が濃くなるんだった。

そう、それがひとつ。
そしてもうひとつ、葉の枝についている期間の長さ、すなわち寿命のこともある。
落葉樹の葉の寿命は最長で1年だけだけれど、多くの針葉樹は常緑樹で、葉がもっと長い間枝についている(カラマツは例外)。
例えば、マツでは2年間、モミやトウヒは5年以上だ(→2009.10森林雑学ゼミ)。
そして、そんな風に葉の寿命が長い樹種の林ほど、葉の量も多い。
だから、寿命の長い常緑針葉樹の森が、黒っぽく見えるというのは大正解だよ。

 

 

 
次にこれは、滞在していた大学の寮の部屋からの写真。
なんだか異国にいる感じがあまりしないと思わない?

鋭いなぁ。それも正しい観察だ。

ここに写っているのはローソンヒノキだと思うが・・・、これは、おなじみ木曽谷のヒノキの親戚だから、木曽で撮ったといわれても信じてしまうような風景だね。
日本のヒノキの同属は北米に3種あるといわれ、その材は日本にも輸入されているよ。

 

 
これも、日本と似ているでしょ。大学のすぐ隣にある雑木林。

うーん、これこそ、じぃじ先生でも騙されるなあ。
上層部が針葉樹、下層部が広葉樹という、ちょっとした里山の風景だよ。秋にはキノコがいっぱいとれるんだろうなぁ。シカなんかが出てくるかもしれない。
つくづく環境のいいところだったんだなぁ。


そうなの! リスとかスカンクがそのあたりをうろうろしていて、池や小川にはカナダガンがいたんだよ。まさに森の中に大学があるっていう感じ。

それは、さぞ勉強がよくすすんだことだろう。


あはははは。

 

 

 
大学から外に出ると、広大な農場。単一の作物を巨大な土地に植えるっていうのが、いかにもアメリカ大陸らしい感じでしょ。

これはトウモロコシかな。地平線まで一面畑だね。


もうねぇ、すべてがビックサイズなの。左の端っこに写っている道路標識と比べてみて。トウモロコシの背の高さがわかるでしょ。

これはなかなか、日本では見られない景色だね。

 

 

 
これは、近所の遊園地で。大学にもたくさん生えていた、マツっぽい木。これ、枯れてるんだけど、松くい虫かな? 
・・・っていうか、松くい虫って、カナダにもあるの? 

あるよ。あるどころか、そもそも北米が発祥と言われている。


え? じゃあ、カナダでもマツ枯れは深刻なのかなぁ。 

それがそうでもないんだ。北米大陸には昔からその被害はあったんだが、天敵がいたために爆発的・伝染病的に広がることはなかった、と聞いたことがある。


天敵って何なの? 
それがわかれば日本の被害も止められるじゃない! 

まぁ、そうなんだけど・・・。

ひとつこんな話をしよう。 日本のマツ枯れの記録としては、古くは明治末期日露戦争の頃に「らしき」ものがある。

しかし古い時代、マツは薪(燃料)として重宝されたから、枯れ木が出ても直ぐ燃やされる、つまり「焼却防除」されてそんなに大被害にはならなかった。

被害が爆発的に広がったのは戦後昭和30年代から、つまり薪利用がなくなってからだ(→2010.1森林雑学ゼミ)。


・・・ってことは、マツ枯れの天敵って「人」なんだ。人間と里山との付き合い方が、変わっちゃったんだよなぁ。 

 

 

 

 
さて最後は、カナダのシンボル、メイプルツリー! 国旗にデザインされているだけあってポピュラーで、いたるところで見かけたよ。

日本でもおなじみのモミジ(カエデ)の仲間で、北米特産のサトウカエデのことだ。


色がね、明るい緑ですごくきれいなんだ。大学にも多くて、竹トンボみたいな形の実をよく見かけたよ。 
でも、メイプルって広葉樹だよね。針葉樹林のイメージが強いカナダだけど・・・。

葉樹林は亜寒帯、メイプルは冷温帯が主たる分布だけれど、カナダには両方が共存できる推移帯も広い。
また、斜面や日当たりのよくないところにも生える針葉樹とは異なり、広葉樹は生育環境のいいところを選んで、はやく大きく育つんだ。人里に近いところに多かったから、カナダの人はそれを活用してきたんだね。
それにしても、なかなか良い取材ぶり。楽しませてもらったよ。


お楽しみはもうひとつ。お土産に、定番中の定番、メイプルシロップ買ってきたよ。

それはそれは。じゃあ、今日のおやつは・・・。


ホットケーキにしよう!
 

 

 

 

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