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2014.03
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

大雪で木の枝が折れちゃったよ。

 

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大学の木。

あちこちでこんな風に枝が折れてたよ。

 

 

 


スギ人工林での冠雪害。

わぁ、ぽっきり折れてるー! 京都・貴船

 

 

 

 

甲府の雪景色。

友達が送ってくれたよ。ずっしり重そう・・・。

 

 

 

 

 

雪つり。

やっぱり金沢が有名だけど、東京・日比谷公園でも発見!

 

 

 



前の写真と同じ、日比谷公園の雪つり。

と、手前にあるのは霜対策「わらぼっち」。かわいい!


 

 


根曲がり。若いころに雪で押しつぶされたんだねぇ。

山形・羽黒山

 

 

 

 

こちらは崖の木。雪の重みでななめになっちゃったんだって。

長野・鍋倉山

 

 


 

うちのマンリョウも、雪の重みで曲がって、雪に埋もれてたよ。

 

 

 

 


その後のマンリョウ。起こして、隣の木にくくりつけておいたよ。

まっすぐになったかなぁ。

 

 
こないだの大雪の日。その翌々日、大学にはまだ雪がたくさん残っていて、あちこちで木の枝が折れていたよ。

関東はすごかったようだねぇ、特に。
これも一種の「冠雪害(かんせつがい)」だな。
普段、雪が少ない暖かいところに大雪が降った場合は、これに要注意なんだ。


冠雪害? どういうものなのかな。
単純に考えれば、雪をかぶることによる被害だよね、たぶん。

そうそう。暖かいところに降る雪というのは湿っているものだ。
だから、枝や葉に積もった雪が落ちずに、さらに次の雪を捉えてどんどん重くなっていく。


それって、重みで枝とか折れないの?

それそれ、まさに。積もった雪の重さで木の幹や枝が折れてしまう害のことを言うんだよ。
「わがものと思えば軽し傘の雪」(榎本其角)という俳句があるが、実は雪というのは重いもの。
広葉樹では、主に枝が雪の重みに耐えかねて、むしられたような折れ方をする。この写真もそうだ。


うん。これはサクラの木だった。

広葉樹は、枝が広く張っているだろう? だから、雪が積もりやすく、枝が折れることが多い。
この大学の木の場合は、ほかにも枝葉があるから大丈夫なんだが・・・。


針葉樹の場合は、現象が違うの?

針葉樹の梢というのはまっすぐに伸びている。
だから、上部の葉の上に雪が載って、その重みで頭を下げてお辞儀をするような格好になっていく。
しかし、それには限界があって、そこまでくると、幹の途中でポキンと折れてしまい、木の上部、つまり葉のある部分が失われてしまうんだ。


ってことは・・・枯れちゃう?

そのとおり。


枯れちゃうのかぁ、針葉樹。広葉樹は枝が折れるだけ・・・まぁ、それも大変な災難だけど。雪の重さって、すごいものなんだね。
そうそう、甲府の友達が、写真を送ってくれたんだけど。大雪で、大変だったみたい。

これはこれは。木の上にどっさりだなぁ、雪が。


かわいそうに、枝が今にも折れそうでしょ。

その枝折れを防止する方法を知ってるかな?


「雪つり」だよね。金沢の兼六園のが有名。日本庭園やお寺に良く似合う風景だよね。

そう。この写真は、東京・日比谷公園のもの。
支柱を立てて縄を何本も下げて枝にくくりつけ、枝を吊り上げるという方法だ。枝振りの良さが売り物のマツの木によく使われている。


あれ? このキノコみたいなのは何だろう。

それは霜対策だよ。
これはソテツだろうけれど、もともと暖かい地域の植物だから、寒さに耐性がない。維持のためには、寒さから守ってやることを考えなければならないんだ。


コートを着せてあげたってことだね。

コートか。うん、そうだね。鑑賞用の庭木や植物園などでは、こういう方策が必要だ。


でもね、庭木や植物園の場合はそれぞれ丁寧にお世話ができるだろうけど、山の木なんてどうするの? 全部のお世話・・・どう考えても無理だよねぇ?

そんなの、とてもとても。不可能だよ、もちろん。そこが、庭の手入れとは大きく違うところだね。
ただ、ちょっと考えてみて。そもそも、そこに木が自然に生えているということは、どういうことだろう。


え〜っと・・・あ、その木は、その土地の気候や土壌の条件に合っているってことか!

そう。人工林の場合も同じこと。その土地で育ちやすい樹種を植えるというわけだ。
・・・というので、冠雪害をひととおり。湿った雪が降る暖かい地方の特徴的な現象だということを覚えておこう。
逆に、寒くて雪の多い地域で問題になるものが「雪圧害(せつあつがい)」。地面の積雪の重さによるものだ。


「雪」の「圧」力による被害だね。押しつぶされちゃうってことかな。

押しつぶされるというのは、厳密に言えば表現がいささか異なるかな。
この現象は、雪がたくさん降ると、樹木が雪のなかに埋まってしまうというものだ。


そりゃあ、木の高さ以上に降ったら、当然そうなるでしょ?

違う違う。木の身長に対しての半分くらいの積雪量で、だよ。
例えば2mの木があって、そこに1mの雪が降ったら、その木は雪の中にうずもれてしまうんだ。


うずもれる? 木自身の高さの半分くらいしかない雪に?

そうなんだ。ちょっと意外な気がするだろうけどね。
とはいえ、木が若く柔らかな時代の話だ。
降り積もる雪に徐々に倒され、そのまま積もる雪の中に埋もれていってしまうんだよ。

 

 

木が雪の中で寝ちゃうってこと? 折れちゃわないの?

もちろん、折れるのもあれば、斜面を動く積雪の力で、根の抜けてしまうものもあるさ。
しかし一般に、広葉樹や若い針葉樹は幹が柔らかく、復元力もある。だから、雪がなくなればまた起き上がることができるんだ。
これを何年も繰り返しているうちに、できた樹形が「根曲がり」だよ。幹の下の部分が大きく折れ曲がり、そのまま上に伸びている木のことだ。


あ、前に木曽で、根曲りのヒノキを見たね。

あったあった。
メカニズムとしては、根元は曲がったままで固定、木は大きくなり、梢は雪に埋もれなくなる。そしてその後は、ごく普通に成長するというもの。これで根曲がりの樹形ができるんだ。


雪国で見られる樹形といえば、もうひとつ。崖に生えている木が下向きに伸びているなんて場合もあるよ。


雪の重みに負けなかった、根性ある木ってことだね。

あははは。まぁ、根性があるかどうかは別にして、針葉樹の人工林などでは、春先に「雪起こし」と言って、雪の重みで倒れた木を起こして、ひもでくくって回る山作業をするよ。


あ、もしかして、うちの庭のマンリョウの木にヒモが結んであるのはそれ?

お、気づいていたか(笑)。
あのマンリョウは、わずか数センチの雪ですっかり地面に押し付けられ、しかもそのまま凍りついていたので、助け起こして、隣のウメの木にくくりつけたんだ。


そういうことだったんだ。なるほどなぁ。
・・・で、そろそろまっすぐになっているかな。ちょっと見てくるね。
 

 

 

 

 

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