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2014.05
じぃじ先生 ちょっと教えて
 

アフリカのサバンナに行ってきたよ。

 

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イメージのままのアフリカの草原!

・・・と、チーター。

 

 

 


草原・孤立木とアフリカスイギュウ。

木のかたちがなんだか独特。

 

 

 

 

 

食事中のキリンの家族。アカシアが好きなんだって。

 

 

 

 


おしりの丸い輪っかが特徴のウォーターバック。

北へ行くとけっこういたけど、南の方では見かけなかったなぁ。

 

 

 

 

 

下草がススキみたい。

だけど、実は同じように見える下草の中にも、いろんな種類があるんだって。

 

 

 

 

 

トゲトゲの木。なぜかこのあたりには多いような・・・。

 

 

 

 

 

キリンはトゲにも負けない。長い舌で絡め取るんだって。

 
念願達成! アフリカで、たくさんの野生動物を見てたよ。

それはそれは。小さい頃から動物園が大好きだったからねぇ。 ・・・で、どうだったかな、本物は。


草原が、地平線までばーんと広がっていてね。空が広くて、朝焼けや夕焼けが最高にキレイだった。
平べったい木がぽこぽこと生えているなかにインパラが群れていて、ゾウやキリンがゆっくりと歩いているの。

ほほぅ。猛獣映画そのままの風景なんだなあ。
残念ながら、じぃじ先生は本物のアフリカのサバンナは見たことがないんだが、なるほど。


日本にあるサファリパークは、人の世界に動物を連れてくる形でしょう?
でも今回行ったところは、地域まるごとが国立公園で、動物が暮らすなかに人間がお邪魔するって感じ。だから、サファリの車から肉食獣の狩りが見られることもあるんだって。
私も、お食事直後の満腹のヒョウに出くわしたよ。近くの木には、その日の夕ご飯になっちゃったインパラがぶら下がってた。

おっと・・・まさに野生動物の世界だね。
その舞台になっている土地、なんていうか知ってるかい?


もちろんだよ! サバンナ、降水量が少ない土地だよね。

これは失礼、質問がやさしすぎたね。
地球上の陸地は、降水量がごくわずかで植物が生育できないところが砂漠、降水量がもう少し多ければ草原、降水量がさらに多いと草原に樹木が加わり、サバンナとなる。
さらに降水量多いと森林となるのが原則だけど、熱帯・亜熱帯ではサバンナが、温帯では草原が目立つ。暖温帯の草原・森林中間の草・低木混生植生は、チャパラル(カリフォルニア)、マキー(地中海)などと呼ばれているよ。

                      「新版森と人間の文化史」より


降水量が地球上の植生を決めているんだよね。(→2013.07ちょっと教えて
そこはね、公園とはいっても四国がすっぽり入るほどの大きさなの。
車で2時間くらい北へ行くと、木が増えてきたり、それまでいなかったウォーターバックが見られるようになったり、景色が変わるんだ。
ガイドブックによると、ちょうどそのあたりが暖温帯と亜熱帯の区切りになるらしい。

そうか。サバンナについてもう少し確認しておくと、主として熱帯・亜熱帯に広がる、草原に孤立状の低木が混在する植生のこと。
地球陸地面積の15%を占めている。


え? そんなにあるの?

意外だったかな。一般的な定義としては、夏には降水があるものの年間蒸発量が大きい乾燥地で、背の高いイネ科草本が地表を覆い・・・。


夏の終わりに行ったから、ススキみたいな下草が一面に生えていたよ。

反面、あまり大きな木はなかっただろう? 
草原に低木状の樹木がぽつりぽつりと生えていて、枝葉がつながっていない、つまり「閉鎖していない」状態のはずだ。


うん。有名なバオバブの巨樹は別として、熱帯雨林みたいな見上げるような大木はなかった。雨が少ないから木が大きくならないのかな。

降水量が少ないと樹高はあまり大きくならず、葉は小型でやや硬くなる。刺のある木も多い。


どうして葉が小型なんだろう。少ない降水量を受け止めるには大きい方が効率いいじゃない。

受け止める効率ねぇ、なるほど。でも、樹木の成長には受け止めた水を直接使うわけではないだろう?


そうだ。土から吸い上げた水を使うんだ。

そう。そこで重要なのが「蒸散」による水消費の抑制。蒸散をセーブするには葉は小型、革質のほうが向いているんだ。
ちなみに東アフリカでは、木本は傘状の樹冠を持つアカシアの類が多いようだ。


あ、ガイドしてくれたレンジャーさんがキリンの大好物だって言ってた。
「ノブソーンアカシア」って聞き取れたんだけど?

Knob thorn Acacia、幹に瘤と刺のあるアカシアのことかな。


それかなぁ。キリンは長い舌でトゲを上手によけて食べるけれど、それでも顔に傷がついちゃう場合もあるみたい。 私も、5cmくらいもありそうな大きなトゲに何度も引っかかれたよ〜。

 

 

 

 


ゾウだけが通れないように工夫された柵。

ここはまだ試験的に張ってみているだけみたい。上手く行ったら、ゾウの過密もどうにかなるかも?

 

 

 

 


日本、奈良公園。シカの背の届く高さまでの葉は、全部食べられちゃうんだって。シカの背が届いて、葉が無くなっている高さを「ディアーライン」という。

 

 

 

 

 

これがリカオン(ワイルドドッグ)!

保護センターではこんな感じで肉を食べている。


 
そうだ! 動物が食べる姿といえば、これ、見てみて。

うわぁ、すごい勢いだなぁ。これだと、ゾウがたちまち公園中を食べつくしてしまいそうだ。


そう、そこなのよ。この公園内での森林被害の一番の原因は、ゾウなんだって。レンジャーさんが教えてくれた。
もちろん葉っぱの食べ過ぎもあるけど、何より、若木を根こそぎ倒してムシャムシャ食べてしまうことで、枯れちゃうわ、育たないわの大問題。
ゾウだけが通れないような柵を試験的に設けている場所もあったよ。

だろうなぁ、この食べっぷりなら。
でも一方で、アフリカゾウは数が少なくなっている、貴重な動物だよね。保護される立場だ。


うん、ワシントン条約のレッドリストに載っている絶滅危惧種。
アフリカでは、ゾウの群れを、ゾウの少ない別の地域に移動させて、ゾウも樹木も守ろうとする、大がかりな措置がとられているところもあるんだって。

日本でも、天然記念物のカモシカの件がある。
絶対保存的な保護のおかげで数が増え、山に植栽した苗木を食害するだけでなく、田畑の作物を害するので問題になっているよ。


北海道では、エゾシカが増えすぎて列車との衝突事故が後を絶たないって、新聞にも載っていたよね。

ちょっと特殊な例では、奈良公園のシカだ。これも天然記念物。
園内を悠々と歩いているぶんにはいいけれど、隣接の春日山原生林内で、本来の植生であるシイ、カシ類などを食べてしまう。
そのため、国内移植種のナギ、外来種のナンキンハゼなど、シカの食べない樹木が取って代わって旺盛になってきて、困っているんだよ。


ハイキングの途中に山で出会ったら、天然記念物。街に出てきて、人の生活に支障をきたしたら害獣。うーん・・・人間の都合だなあ。

奈良に限らず、山の動物たちによるこうした被害は全国で多発しているようだ。
もともと環境というものは、気候や降水量から、その土地の植生や動物まで含め、すべてが絶妙のバランスの上に成り立っているもの。そのバランスが失われたら、おかしくなってしまう(→2013.07ちょっと教えて2013.08森林雑学ゼミ)。


それで思い出したけど、見学に行った野生動物保護センターでは、野生復帰させる予定のリカオン(ワイルドドッグ)に、生餌を与えていないの。
なぜだと思う?

リカオンは、もちろん野生では、生きた獲物を狩っているだろう?


そう。リカオンは頭がいいから、フェンスのなかで生餌を与えられたら、「獲物をフェンスに追い詰めて狩る」という方法を覚えてしまう。だから敢えてやらないの。野生で生きていけるように。
野生動物も、やみくもに保護するだけじゃダメ。数のコントロールや野生復帰の準備など、人間の手による積極的な保全が重要なんだよね。

「積極的な保全」。その考え方、何かに似ていないかな?


うん、思った! これって、森林の保護と一緒なんだよね。(→2010.102013.06森林雑学ゼミ

 

 

 

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