2012年のベトナムの街角。
雨が降ると、すぐこんな感じで路地が水没しちゃう。これも温暖化の影響なのかな・・・?
マレーシアの熱帯雨林の中。
まさに光合成していそう!
熱帯林の伐採跡。この後はアブラヤシの畑になったらしい。
こういう風景が、「伐採は良くない!」っていうイメージを植え付けたのかな。
二酸化炭素をたっぷりため込んだ木を伐採して木材に。
その後に燃やしちゃったら、二酸化炭素を放出しているだけなんだけどね。
東本願寺の御影堂。
広さは間口76m、奥行き58m!
建築面積世界最大の木造建築物なんだって。
ここ全体でどれくらいの二酸化炭素をため込んでいるんだろう。
こっちは木造建築日本第5位、京都・知恩院。
大改修中の屋根はこんな感じ。
この一本一本に二酸化炭素が貯まっている。
吉野のスギ人工林。
植栽後90年だが、適正な手入れによってまだ炭素蓄積中。
ちょっとお年寄り、春日山の照葉樹原生林。
5月のコジイの花盛りの様子。年々の炭素蓄積量はわずか。
大阪・能勢の炭焼き小屋。
炭にしちゃったら腐らないから、燃やさない限り貯め込んでおける。
| 12月に、南米のペルーでCOP20が開催されたみたいだけど、あまり話題にならなかったねぇ。
そうだなぁ、大きく報道はされなかったかもしれない。
でも、実はそれなりに大切なことが決まったんだよ。
COP3の京都議定書に不参加だったアメリカと中国が、参加する方向になったんでしょ? ニュースで見たよ。
そのとおり。1997年の京都議定書の段階で、中国は「先進国ではない」と参画せず、これを不満としてアメリカは議定書締約国から脱退。その後、2012年に京都議定書の期限延長が審議された時も、この2国が参加しないなら意味がないとする議論があり日本は参加せず。
二酸化炭素の排出量は世界1位中国、2位アメリカ、両者で世界の排出量の40%以上を占めるわけで・・・(→2011.1森林雑学ゼミ)。
確かに、ツートップは外せない。
それが今回、ようやく参加への道筋がついた。まずは一歩前進と言えるだろう。
もうひとつ決まったのは、2020年以降の新しい温暖化対策国際枠組みについて、だ。
各国間で交渉を重ね、2015年(COP21、パリ)で合意すべきこととして、その道筋が何とかついたんだ。
あ、そういうのもあったんだ。
今回、日本は二酸化炭素対策の遅れを指摘されたということだけど。
ちょっと厳しい追及をされたね。
東日本大震災の影響もあって、日本の対策はあまり進んでいない。3.11の前には、石油発電の代わりに「二酸化炭素を出さないから」と原子力発電の強化を計画していたわけで・・・。
なかなか辛い立場だっただろう。
ほんとに、ここ数年、自然災害と異常気象が多いよね。
世界レベルで事態は深刻だ。
海抜高の低いキリバスは海水面が上昇して国土が失われつつあるらしいし、北極海の氷が2050年頃には消えてしまうという予測もある。
昨年公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書も、「このままでは手遅れ。本気で取り組まないといけない」と、かなり厳しかった(→2014.8森林雑学ゼミ)。
でも、京都議定書って1997年のことじゃない? もう20年近くも経つのに、かけ声ばかりで実際に進んでいる感じがあまりしない。
日本も世界も、いったい何をしてきたんだろう。
これはこれは手厳しい。しかし、毎年繰り返すCOP(条約締約国会議)では、確かな進展もあるんだよ。
たとえば2011年COP17(南アフリカ)では、「伐採後の木材も温室効果ガスの貯蔵庫として計測される」ということで合意した。
あ、木は二酸化炭素を蓄積するんだったよね。
古い森林は伐採して新しい森林をつくっていくことが有効という話があった(→2012.3森林雑学ゼミ)。
お、よく覚えているな。ある程度以上に育って、二酸化炭素の吸収力の衰えた森林を伐採する。そして、伐採した跡をまた森林化し、吸収力の旺盛な若い森林を育てていくというものだ。
COP17の合意というのは、その伐採後の木材についてだよね。
そう。伐採した木は二酸化炭素をため込んでいるから、燃やしたり腐らせたりしたら、もちろん放出してしまうことになる。
しかしそのまま木材にして建設や家具に使うのであれば、二酸化炭素の放出はない。
しかもそうして使われている間は貯留したままだ。
たとえば奈良の法隆寺は、もちろん木造建築。建設から1400年もの間、二酸化炭素を貯留し続けているというわけだよ。
林野庁によると、そうしたものを「伐採木材製品」って言うんだって。英語ではHarvested Wood Products(HWP)。
・・・これ、英語の方が断然いいなあ。harvestって収穫の意味だから、大地の恵みみたいなイメージがあるもん。
ああ、なるほど。森林伐採は二酸化炭素を収穫すること、という考え方は確かにいいな、うん。
ねぇ、二酸化炭素と森林については、カーボンシンク、カーボンソースって言葉があったと思うんだけど・・・。
お、先に言われたか。それ、まさに今回のキーワードだよ。
二酸化炭素の吸収・放出を指す言葉で、光合成によって二酸化炭素を吸い込むことをシンク(sink)。
森林を伐採して燃やしたり、腐らせたりして二酸化炭素を発生させること、つまり森林が二酸化炭素を吐き出すことをソース(source)という。
吸収と放出。あれ? 蓄積は?
そう、そこだよ、重要なのは。
シンクとソースという2つのSについて、どちらが大きいかという議論は、実は以前からずっとあった。それは裏を返せば、二酸化炭素問題は、この2点でずっと語られてきたということだ。
それがCOP17で貯留というものが認められた。
じぃじ先生は、この貯留、すなわちストック(stock)という3つ目のSの視点が必要だと思ってきたんだよ。
生きている森林で二酸化炭素を吸収させ、木材で貯留させる。
・・・ということは、二酸化炭素をより吸収させやすい状態の森林をつくることが大切だね。
だから、「吸収力の旺盛な若い森林」の育成が必要ってことなんだ。
そのとおり。では、問題。
天然林と人工林、どちらが若い森林が多いでしょうか。
それはもちろん人工林でしょ。天然林は手つかずの原生林なんかも含まれるだろうし。
正解だ。いや、問題が簡単すぎたな。両者の成長ぶりについて、こんな数字がある。
わが国の2007〜2012年の5年間の成長量の平均は、天然林1,576万m3/年に対し、若い森林が多い人工林は7,811万m3/年。
面積比率で言うと天然林:人工林=57:43だから・・・。
わ、成長量ってそんなに違うんだ。ということは、きっと吸収量も大きく違うんだろうな。
そもそも、日本の森林って、いったいどれくらい二酸化炭素を吸収してくれるの?
いい質問だ。今話した成長量のデータから試算してみよう。
まずは、1年あたりの炭素固定量(森林が成長するために取り込んだ二酸化炭素の量)。これは、天然林が519万トン/年で、人工林は1,715万トン/年となる。
そして、伐採木材製品が貯留する量は、333万トン/年だ。
天然林と人工林では約3倍もの差があるんだね。それに、伐採木材製品の分を加えて、合計では2,567万トン/年ということか。
そう。この合計の2,567万トン/年という数字は、2012年の全国CO2排出量に対して約7.3%にあたるんだよ。
なるほど。それが日本の森林の実力ってことだね。
あくまで試算だけどね。
この貯留という点についてひとつ付け足しておくと、じぃじ先生は昔ながらの炭焼きは有効なんじゃないかと考えているんだ。
炭焼き? あの七輪とかで使う炭?
炭は炭素のかたまりだから、大気中の二酸化炭素を取り込んでいる。炭を燃料として燃やせば放出だが、炭のまま置いておけば炭素の永年貯留となるというわけだ。
だから、里山で大規模に炭焼きを復活させて、炭を貯留したらどうだろうか、と。
里山で炭焼きは似合うなあ。むかし話の世界だねぇ。
・・・なんてうっとりしている場合じゃない!
ん? どうしたどうした?
う〜ん・・・なんかもどかしいんだよね。
このままいくと、すべてが先送りされて若い世代にまかせた! ってなっちゃいそうで。それは勘弁。せめて私たちの世代が対処できる程度のことにおさめてほしいなぁと思って。
ほう。若者の生の意見だな。
1992年の地球サミットで、「どうやって直すのかわからないものを、壊し続けるのはもうやめてください。」という12歳の少女(セヴァン・スズキ)のスピーチがあったでしょう。
あれを聞いた時、「ほんと、それ!」って思ったの。
なかなか先へ進まない現状を憂いた環境保護活動家が、懸命に訴え、大人たちを戒めるような内容だった。
・・・ん? でも、それ生まれる前の話じゃないのか? よく知ってるな。
学校で習ったし、本でも読んだんだ。
でもね、これ、今、覚えている人ってすごく少ないんだよ。みんな忘れてしまったみたい。
ああ、そうか・・・。資本主義の世の中、それをベースに温暖化対策を考えるから、どうしても限界があるんだな。
環境保護ばかりを強化して、人間の生活がおびやかされ、国が亡びたらどうするんだ、なんていう極端な説もある。
大人の事情じゃない、それ。
でも、私たちの世代も関係ない顔はしていられない。
何ができるかわからないけど、少なくとも意識は持っていなきゃね! |