本場、カナダのメープルシロップ。
これもローラのおじいちゃんがしたのと同じような方法で、集められたのかな。
樹液を集めてつくる、メープルシュガー。開拓時代、形はこれ以外にもいろいろあったらしい。
トロントの博物館にメープルシュガーの木型がいくつも置いてあったよ。
ローラのおじいちゃんの道具で、メープルシロップ採集中。バケツもパイプもこだわり。
漆器。漆は触ったらかぶれるけど、塗ったら高級感があるよね。
マレーシアのゴムの林。
樹の幹に切り込みが入っている。ここから、ゴムのもとができるのかな。
マレーシアにて。
ゴムの木から採った樹液は、こんな感じで乾燥させるらしい。
これもマレーシアにて、ゴム採取中のゴムの木。
この切込みはかなり大きめのものらしい。
一口にメープルシロップと言っても、実は5種類もある。濃さによって、色や味も様々。
全部試してみたいな。
| 2度目のカナダ研修のお土産は、メープルシロップだよ。
おお、これはこれは! メープルシロップはカエデの木の樹液で・・・。
もちろん知ってるよ。サトウカエデの木だよね。
では、どうやって収穫するか知ってるかい。
うん。子どものころに読んだ『大きな森の小さな家』に出てきたよ。
ああ、その本ならお母さんも夢中になって読んでいたな。アメリカの西部開拓時代、ある家族の物語。確か実話じゃなかったっけ。
そう、インガルス一家ね。書き手であり主人公であるローラのおじいちゃんが、樹液を集めてシロップをつくるの。パイプを樹に差し込んでね。
そんなシーンがあったか。
集めた樹液を煮詰めてつくったメイプルシュガーを、ローラがかじる描写があってね、きっと甘くておいしいんだろうなあと思っていたら、ちゃんとカナダで売っていたよ。
それはそれは。
ちなみにローラのおじいちゃんによると、いいシロップを採るためには、パイプは白トネリコ、樹液をためるバケツはヒマラヤスギ製に限るんだって。
トネリコは固くて弾力性があり、野球のバットなんかに使われる木だね。それは適材だ。
しかし、ヒマラヤスギはどうかなあ。話の舞台はどこなのかな?
西部開拓時代の物語だよ。大きな森の舞台は、北米のウィスコンシン州。カナダに近いところだね。
ん? そのあたりなら、ヒマラヤスギはないぞ。
え? どういうこと?
ヒマラヤスギの原産地は文字通りヒマラヤ地方。
原文では、おそらくcedarとなっているのではないかな。
ちょっと待って調べてみる・・・ああ、ほんとだ! バケツとパイプは“ cedar and white ash”でつくるって!
やっぱりね。cedarは、よくヒマラヤスギと訳される。一般的な辞書にもそう記してある場合が多いんだが、実は樹種を特定するのではなく、もっと広い意味を指す呼び方なんだ。
もっと広い意味? 「ヒマラヤスギ的なもの」「似た者たち」みたいな?
そう、cedarは日本の木々で言えばヒノキやサワラの仲間のこと、北米ではローソンヒノキと言うのが代表的。 いずれにせよ、桶に加工しやすい材であることは間違いない。
じゃあ、cedarという言葉からでは、バケツにどの樹種が使われているか厳密に特定するのは難しいんだね。
そうだね。ヒノキの仲間、針葉樹ということだね。
ここでちょっと問題を。
サトウカエデの樹液を採集してつくるのがメープルシロップなわけだが、樹液や樹脂由来のもの、他にどんなものがあるでしょう。
ゴムとか、漆とか?
うん、代表選手だね。他には松ヤニ、琥珀なんかがそうだ。
松ヤニは胡弓やバイオリンの弦を調整するときに使うよ。琥珀は宝石じゃないの?
たしかに宝石扱いされているね。でも実際は、樹脂が長い年月の間に固くなった化石だ。 中に木の葉や小さな枝が入っていたり、昆虫が閉じ込められたままといったものもある。
椿油は? あれも同じようなもの?
いや、あれはちょっと違う。樹液ではなくツバキの実から精製してつくるものだから。
そもそも、樹液はどうして出るの?
樹液というのは、いわば人間の血液のようなものだ。人間が傷をつくれば体外に血が出るのと同じで、木も傷ができれば樹液が幹から出る。
傷つけられた木は迷惑だよね。本には「ローラが指先を針で刺したくらいのものだから、木は痛くない」ってあったけれど。
それは、なかなかいい例えなんじゃないかな。
この本ではカエデの樹液を幹に挿し込んだパイプで集めているね。ゴムの木やウルシの木の場合は、木の肌にY字型などの切り込みを入れて、その下にたまった樹液を集める。
重要なのは、このパイプの挿し込みや切り込みのやり方だ。木の幹を、ぐるっと一周傷つけてしまってはダメなんだ。
ぐるっと一周?
そう。樹液は血液のようなものだと言ったろう。
一周傷つけてしまったら、根っこから枝の先端まで到達するはずの樹液が・・・。
あ、全身に回らなくなる!
ということは、すなわち?
木が枯れちゃう。
そのとおり。血液、すなわち樹液がその傷のところで止まってしまうわけだからね。
実はこれ「リンギング」といって、森の手入れをするときに、わざと木を枯れさせるために使う方法でもある。「巻き枯らし」とも言うね。
なんかかわいそうだなあ。
それにしても、樹液とか果実の油とか、森林からの産物って木材以外にもたくさんあるんだね。
そのような木材以外の産物は、「特殊林産物」「特用林産物」と呼ばれているよ。
ところで、留学先はメープルシロップの産地のそばだったんだろう? 産地で味わうフレッシュなシロップは、やっぱりおいしかったのかな。
それがねえ、実はタイミングが悪くて・・・。
メイプルシロップの収穫期は春先なんだって。少し暖かくなって葉が開き始めるタイミングらしいんだけど。
なるほど。葉が開くには、寒い時期からの温度の積み重ねが必要だからね(→2012.5森林雑学ゼミ)。 葉が開かないと樹液の流れがないのは当然だ。
カナダにいたのは2月末から3月末にかけてで、最後の週になってようやく雪がとけ地面が見え始めたの。
聞けば、帰った翌週がメイプルシロップフェスティバルで、その年の新作シロップが販売開始になる日だったんだって。
だから、お土産に買ってきたのは去年産なんだ。
いや、それでもきっと産地直送のものはおいしいさ。
ん? 色の濃さがなんだか違うみたいだな。この特別濃いものは見たことがないぞ。
うん、それはちょっと苦味がある感じ。色の濃さによって味もさまざまなんだよ。 じゃ、講義終了ね。ホットケーキにしよ♪
|