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2015.10
じぃじ先生 ちょっと教えて

キュー・ガーデン、広かったねぇ。



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あれ、じぃじ先生。ロンドンの写真、まだ整理中なの?

いやあ、メモや資料と見比べながらやっているんだが、なかなか進まないよ。特にキュー・ガーデン(→2015.9森林雑学ゼミ)の写真が大変だ。


大きかったもんね〜。
私は午後から別行動でロンドン市内へ戻ってしまったけれど、じぃじ先生は残ってあちこち歩き回ったんだよね。

そう。でも、一日がかりでもまわりきれないほどの規模だった。
何しろ132 haの敷地、甲子園球場グランドの100枚分近いんだから。


うん。入ってすぐにトラムに乗って園内を一周したじゃない? 
その道に沿って写真をみながら復習していこうよ。














スタートは、エントランスからすぐの大きな温室Palm Houseの近く。しばらく林の中を走って、次の停留所がTreetop Walkway。

日本語で言うなら林冠歩道かな。空中回廊ともいう。
その名の通り、地上10mくらいの高さに歩道が作ってあって、木々の上の方の様子がよく見える。


鳥になった気分になれるもんね。きっと面白い。

もちろん遊歩道としても楽しいが、学問的にも樹木の枝葉の観察などにも使われる、重要な設備なんだ。日本にも、あちこちでつくられているが、大阪の万博公園にあるのが有名だね(→2010.11.7ひとりごと)。
後から行ってみたけれど、なかなか大規模。歩道は2人が並んで歩くのに充分な幅があったし、写真のようなエレベーターもついていた。


エレベーターが? それなら、車いすやベビーカーでも行けるね。子どもやお年寄りも楽しめそう。

ところで、これ、林冠歩道にあった看板なんだが・・・。


なになに、
「8900万本の樹木がイギリスにはあります。野山、生垣、果樹園、庭園、公園、そして道路に」。
うわ、8900万本って、いったい誰が数えたのよぉ。

あはははは。確かにそれは引っかかるな。
でも注目すべきは後半だ。gardenとparkが書いてある。


おお、これは! 我が家の永遠の疑問、「ガーデンとパークの違いは何?」問題じゃないですか!

それそれ。ロンドンの街中でもケンジントンガーデンとかハイドパークとか、ふたつの呼び方が混在していたから、どう違うんだろうって話していたよね。


イメージとしては、ガーデンは個人の庭、パークは公共のものって感じなんだけど、いまひとつわからないんだよなあ。
でも、こんなふうにふたつが並記されているのを見ると、やっぱり別のものなんだね。

もうひとつ、根っこの形のこんなプレートもあったよ。


「木の根っこの範囲は木の高さの2倍になるが、深さはたった1m」。
ということは、ここの土壌の深さは、日本の山地と同じくらいってことだね(→2015.3ちょっと教えて)。

そのとおり、よく覚えていました。さて、では先に進もうか。
改修中の大きな温室の横を通りすぎると、高い塔が見えただろう。あのすぐ横には、枯山水の日本庭園があった(→2015.10森林雑学ゼミ)。




巨大なボダイジュ


園内には大きな木もいっぱいあったよねぇ。トラムから、たくさん写真を撮ったよ。

そうだね。午後からゆっくり歩いて、たくさんの巨木に出会った。
原産地アメリカでは幹体積(幹材積)世界一になるギガントセコイア、高さ世界一のセンペルセコイア(→2012.9森林雑学ゼミ)、ボダイジュ(シナノキ)、プラタナス、マロニエなんかも。


ちょっと待って、ボダイジュって、歌のせいか、泉のそばに生えている背の低い木のイメージなんだけど。
プラタナスだってマロニエだって、街路樹に多い種類。だからそんなに大きくはないような・・・。植物園でのびのび育つと、大木になるのかな。

そう、そこはじぃじ先生も注目したところ。
特にボダイジュでこんなに大きいのは、見たことがなくてびっくりしたよ。




マツ枯れ





元気なヨーロッパナラ


これはマツだよね。枯れているんだけど、もしかして・・・。

そう、日本中で大きな問題になっているマツ枯れみたいだ(→2010.2森林雑学ゼミ)。
これがなんとキュー・ガーデンでも起きている。日本人としては本当にショックな風景だよ。


イギリスでは問題になっていないの?

そりゃあ被害はまったくないわけじゃないけど、日本ほど深刻じゃないよ。


日本から移植したときに、マツノザイセンチュウも一緒についていってしまったとか。だとしたら、なんか申し訳ないなぁ。

でもね、マツノザイセンチュウは、明治時代末にもともとアメリカから日本へ入ったものだよ。それが昭和中期から、天敵がいないために大繁殖したわけで。


ナラ枯れはどうなんだろう。ヨーロッパナラだっけ、日本ではカシって呼ばれるんだったよね(→2015.9森林雑学ゼミ)。名前のとおり、イギリスによくある種類なんでしょう?

そうだな、ヨーロッパナラは沢山見かけたが、日本の「ナラ枯れ」にあたる枯れ木には気がつかなかった。


じゃあ、ヨーロッパナラは、ナラ枯れには強いのかな。

いや、そんなことは無いよ。京都大学に移植されていたヨーロッパナラは枯れてしまったんだから(→2010.5森林雑学ゼミ)。


とにかく被害が広がらないことを祈るばかりだね。



















地面に接している枝先




写真右側がブナドーム入口


・・・あ、これこれ! トラムから見えた「モリゾーのおばけ」!

あははは、それはいいなぁ。うん、あれはもうすごかった!
これは全体を撮影した写真だが、何しろすごい大きさ。木の横に人が立っているから、そのスケール感が伝わるだろうか。


わかるわかる。で、そもそも、これ何の木なんだろう。

ブナ、ヨーロッパブナだよ。しかも、なんとこれが1本だ。


え? ブナ!? ブナって、こんな形だったっけ。
知っているのと全然違うんだけど、こんな風に育つ種類があるの?

違う違う。枝が垂れているのは特異だけれど、大きく育っただけだよ。でも、確かに大きさも姿も規格外だね。
シダレザクラとかシダレヤナギとか、枝が垂れる種類の木でも、こんな風に地面に着くまで伸びるということは、そうそう無いよ。


この枝垂れた枝の中って・・・うわぁ、すごいっ! 

びっくりするだろう? まるで緑のカーテンで囲まれた、広大なドームだ。小学校1クラス分がお弁当を広げられるくらいのスペースがあって、その真ん中に太い幹が立っている。
そしてね、このドームの中では、貴重な現象が見られるんだ。この写真からわかるかな。


あ、伏条更新だ(→2009.10.31ひとりごと)。積雪の重みなどで枝が地面に垂れて・・・。

そう。伸びた枝が地面まで届き、そこから根が出て別の新しい木(個体)として成長している現象のこと。このブナも一種の伏条更新だね。
もとになるのは、言うまでもなく真ん中にどんと構える大きな木だ。




ということは、新しい木はもとの木のクローンだね。
ねぇ、新しい木が育って自力で土の養分を得られるようになったら、もとの垂れ下がった枝はどうなるの?

養分供給の必要がなくなるのだから、自然に枯れるさ。もとの木自体にとっても、上の方にいくらでも光合成ができる枝葉があるわけだから、もう必要がない。
まあつまり、子どもが独り立ちしたら、親が援助しなくてもよくなる・・・というわけだ。


うーん、私の場合はまだ止めてもらったら困るんだけど。

それは切実だな、大学生(笑)。
この木の姿は、枝を垂らし、地面について根を張り・・・それを繰り返し放射状にどんどん広がった結果だろうね。


じゃあ、何百年もたったら、この場所に巨大なブナドームができあがっているかも!

その可能性は十分考えられるよ。
ただ、伏条更新という現象自体は日本でも見られる。さっき「貴重な」と言ったのには、実はもうひとつ意味があるんだ。


そういえば、木曽のアスナロとか、芦生のスギとか、伏条更新の例は聞いたことがある。
じゃあ、もうひとつの意味って? 

アスナロ、スギといえば?


針葉樹、かな?

それそれ。一方、ブナは?


広葉樹。ん? 伏条更新は針葉樹に多い現象ってこと?

そのとおり。広葉樹では極めて珍しいと思う。
しかもこの規模だろう?


それは、行った甲斐があったね。










道の向かい側にもエンジュ。こちら、花盛り


あ、そうだ。「寝ンネのサクラ」(→2010.4森林雑学ゼミ)みたいな姿の木もあったよ。
同じような姿に、なんか親近感を覚えてしまった。

お、これはまいった。実はじぃじ先生も同じことを思っていたよ。
エンジュの木だね。キュー・ガーデンでも特に大事にされているようで、詳しい説明書きがあったな。


えーっと・・・根元のレンガはむき出しになった根の保護のためらしい。
へぇ、てっきり倒木防止だと思っていたけど、そんな役割があったんだ。
で、金属の支えは、エンジュは遮るものがない場所だとランダムかつねじれた形で成長する特性があるから、その補正として必要なんだって。

うん。そして、学名を読んでごらん。


Styphnolobium japonicum ・・・あ、日本産の木なんだね。

そう。実はエンジュは中国原産の木だ。
でも、学名にはjaponicum とある。これは古くから日本で生育していたことを物語っているね。
・・・さて、トラムの旅も終わりだ。


振り返っても思うのは、やっぱり広かったなぁってこと。また、今度はゆっくり歩いて回りたいな。
・・・で、じぃじ先生。復習を手伝ってきたつもりなんだけど、写真は整理できた?(笑)




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