・・・あ、これこれ! トラムから見えた「モリゾーのおばけ」!
あははは、それはいいなぁ。うん、あれはもうすごかった!
これは全体を撮影した写真だが、何しろすごい大きさ。木の横に人が立っているから、そのスケール感が伝わるだろうか。
わかるわかる。で、そもそも、これ何の木なんだろう。
ブナ、ヨーロッパブナだよ。しかも、なんとこれが1本だ。
え? ブナ!? ブナって、こんな形だったっけ。 知っているのと全然違うんだけど、こんな風に育つ種類があるの?
違う違う。枝が垂れているのは特異だけれど、大きく育っただけだよ。でも、確かに大きさも姿も規格外だね。
シダレザクラとかシダレヤナギとか、枝が垂れる種類の木でも、こんな風に地面に着くまで伸びるということは、そうそう無いよ。
この枝垂れた枝の中って・・・うわぁ、すごいっ!
びっくりするだろう? まるで緑のカーテンで囲まれた、広大なドームだ。小学校1クラス分がお弁当を広げられるくらいのスペースがあって、その真ん中に太い幹が立っている。
そしてね、このドームの中では、貴重な現象が見られるんだ。この写真からわかるかな。
あ、伏条更新だ(→2009.10.31ひとりごと)。積雪の重みなどで枝が地面に垂れて・・・。
そう。伸びた枝が地面まで届き、そこから根が出て別の新しい木(個体)として成長している現象のこと。このブナも一種の伏条更新だね。 もとになるのは、言うまでもなく真ん中にどんと構える大きな木だ。
ということは、新しい木はもとの木のクローンだね。
ねぇ、新しい木が育って自力で土の養分を得られるようになったら、もとの垂れ下がった枝はどうなるの?
養分供給の必要がなくなるのだから、自然に枯れるさ。もとの木自体にとっても、上の方にいくらでも光合成ができる枝葉があるわけだから、もう必要がない。
まあつまり、子どもが独り立ちしたら、親が援助しなくてもよくなる・・・というわけだ。
うーん、私の場合はまだ止めてもらったら困るんだけど。
それは切実だな、大学生(笑)。 この木の姿は、枝を垂らし、地面について根を張り・・・それを繰り返し放射状にどんどん広がった結果だろうね。
じゃあ、何百年もたったら、この場所に巨大なブナドームができあがっているかも!
その可能性は十分考えられるよ。 ただ、伏条更新という現象自体は日本でも見られる。さっき「貴重な」と言ったのには、実はもうひとつ意味があるんだ。
そういえば、木曽のアスナロとか、芦生のスギとか、伏条更新の例は聞いたことがある。 じゃあ、もうひとつの意味って?
アスナロ、スギといえば?
針葉樹、かな?
それそれ。一方、ブナは?
広葉樹。ん? 伏条更新は針葉樹に多い現象ってこと?
そのとおり。広葉樹では極めて珍しいと思う。 しかもこの規模だろう?
それは、行った甲斐があったね。
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