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2015.11
じぃじ先生 ちょっと教えて

ロンドンは、ミュージアムも面白かったね。



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ホームページを見てくれた友達から、「ロンドンはキューガーデン(→2015.10ちょっと教えて)だけじゃないでしょ」って言われちゃったよ。

それはそうだ。あまりに立派な植物園だったから、つい紹介に力が入ってしまったが、もちろん、ほかにもおもしろいものがたくさんあったね。
ウィンザー城では、城のなかの庭園が美しく、通路沿いの植え込みも見事だった。
お城の中門の脇には、ノウゼンカズラがあった。これまで注目してきただけに(→2015.7.10ひとりごと)、嬉しかったよ。


やっぱり木の話題だねぇ、じぃじ先生(笑)。
ここのお城にはエリザベス女王が滞在されることも多いらしいんだけど、その割に、城壁のすぐ外の芝生で子どもたちが遊んでいたりして、穏やかだった。

そうだね。なにより芝生が、お城に限らず街の公園でも、とにかくきれいに手入れされていたのに感激だったな。


ホテルの近くのケンジントン・ガーデンもきれいだったよね。宮殿やイングリッシュ・ガーデンがあるかと思えば、池には白鳥やカモがたくさんいて、人のすぐ横までやってくる。
そういえば、じぃじ先生。庭師さんに話しかけてなかった?

そうそう、ちょうど生垣の手入れをしているところに出くわしたんだ。
木の種類を訊ねてみたら、なんと学名で答えてくれたんだよ。恐れ入ったねえ。


じぃじ先生、どんどん周りの人に話しかけちゃうんだもん。
英語通じたの?

英語自体はともかくとして、学名は世界共通だからね。
公園だけではなく、街中の街路樹も立派なもんだった(→2015.9森林雑学ゼミ)。観光バスの2階に座っていても、目の高さに街路樹の枝があるんだから。


大きな街路樹は、レンガや石造りの街並みとよく調和していて、きれいだったねえ。

ホテルもそんな街並みのなかにあって、古い建物だがよく手入れされていたね。
周囲には建築中、というか、修理中のビルもあった。


うん、傷んでも建て直すんじゃなくて、道に面しているところは、ちゃんと元のように直す。景観を損なわないようにしているんだって感激したよ。
だからこそ、あの街並みが維持されているんだね。
京都もまだまだ考えなくちゃ。

 

 

 

 

 

 


保存と言えば、鉄道に乗りに行っただろう。


うん、オックスフォードからコッツウォルズ地方に行ったとき、蒸気機関車に乗ったよね。
昔の鉄道を復元して、ボランティアで運営している、グロスタシャー・ウォーリック・レイルウェイ(Gloucestershire Warwickshire Railway)。

SLも客車も、古いものを丁寧に修理して使っているようだったね。


じぃじ先生、すごくうれしそうだったよねぇ。
そういえば、始発のチェルトナム駅、ホームの横にマツ林があって、なんだか日本の風景みたいって思った。

そう、いいところに気がついた。
あのマツはおそらくヨーロッパアカマツ、幹も赤くて、日本のアカマツとよく似ている。ヨーロッパのマツの代表だ。


乗ったのは40分くらいかな。窓から見える風景がきれいだったね。
いかにもイギリスの風景。ジオグラフィの授業でやった「ヘッジ(hedge)」も見られたよ。

農地の境界線だね。低木が配置され、生垣状に見える。
イギリスは丘陵地形が多く、日本のように傾斜が急でないこと、また農用地が水田でなく、麦畑や放牧地が主体だから丘陵のてっぺんまで農地化される。
日本で言う「里山」の風景とはちょっと違うね。


 

 

 

 

 

 

 

 

 




街並みにせよ、鉄道にせよ、古いものの値打ちを認めて大切にすることが、ロンドンではすごく自然に、皆のなかに根付いているんだよね。
たくさんあったミュージアムも、そう感じた場所のひとつ。

ミュージアム、本当にたくさんあったなぁ。
大英博物館はもちろんだが、じぃじ先生としては、自然史博物館に感心したよ。


あそこは、もともと大英博物館が持っていた自然史系のコレクションを、1881年に建物を新築して移したものなんだって。

きっと大量の標本があって、「場所ふさぎで迷惑だ」って追い出されたんだろう。
とにかく建物が大きいし、大通りに面して堂々としている。大英博物館より立派なくらいだった。


ロマネスク様式の重厚な建物なのに、天井には植物の絵が何百枚もあるし、壁には動物や植物の彫刻が、それはもうあちこちに。
さすが自然史系コレクションのためにつくった建物、動植物への愛情に満ちていて、それだけで圧倒されたよ(笑)。

そうだね、本当に。もちろん、展示の充実ぶりは言うまでもなかった。
入ってすぐに、日本のタケの展示があったろう? 嬉しくてねぇ。
説明には「タケの伸長記録1日に1m」とあったので、隣にいた英国人ファミリーに「現在のギネス記録は1.2mですよ」と言ってしまったよ。


もう、びっくりだよ(笑)。
でも、思わず言っちゃうくらい、じぃじ先生はもちろん、そのファミリーも熱心で楽しんでいたってことだね。
東日本大震災の映像や、阪神大震災を体感できるコーナーがあったのにも驚いた。イギリスは地震が少ない国だけど、きちんと教育している。
というより、少ない国だからこそ、なのかもしれないね。

話し出したらキリがないけど、生態学の食物連鎖の説明の剥製、覚えているかな。
草食動物がトラに食べられていて・・・。


じぃじ先生の名言、「えげつない剥製やなぁ」(笑)。

いやぁ、あれにはびっくり。日本では見たことない。さすが肉食の国だ。


あははは。そして忘れちゃいけないのが、世界一の巨木・セコイア様の輪切り標本。もう大きくて大きくて。

本当に。展示円盤(幹の輪切り)の直径は、3.5uくらいあったんじゃないかな。
しかし、このギガントセコイア、世界最大木の直径はなんとあの3倍もあるんだよ(→2012.9森林雑学ゼミ)。


そんなサイズ、あのホールに入らないよ。
あれでも十分すぎるくらいで、メインエントランスのホールを見下ろす特等席に、どどーんとそびえていらっしゃったんだから。

いやまぁ、そう言えばそうなんだけれど、何しろ館内が広すぎてねぇ。
動線はわかりにくいし、大混雑で、たどりつくまでが大変だった。


うん、混んでいたね。子どもも大人もたくさん。でもみんなとても楽しそうだったよね。
入場無料っていうのもあるかもしれないけど、それ以上にやっぱり魅力的な展示があるっていうことなんだろうな。

子どものころからあんなふうに「自然はすごい、科学はおもしろい」ということを、博物館で実感できるのはすばらしいことだと思うよ。
で、残念ながら、じぃじ先生は時間切れで帰国。見たいものはまだまだあったんだがなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 



私はその後もうちょっとロンドンに残って、あちこちのミュージアムを見て回ったんだ。自然史博物館併設のダーウィンセンターにも行ったよ。

一番奥にある新しい展示コーナーだね。どうだった?


展示物が単なるモノではなくて、研究そのものなの。

研究そのものの展示?


まずは、どんな研究者がいるかを紹介するコーナー。本人の映像はもちろん、研究しているテーマや道具が紹介されている。
その大半が、自分でさわれるし、操作できるのね。
それから、研究ラボが展示室から見えるようになっているんだけど、説明板の横にマイクが置いてあって、「質問をどうぞ」って。

質問? もしや・・・。


そう。マイク越しにしゃべれるの。
聞きたいことを言えば、まさに今そのラボの中で研究しているその本人さんが答えてくれるんだ。

研究の展示ではなくて、研究者の展示ってことか! 見られる立場としてはちょっと勘弁してほしい気がするけど・・・。
いやでも、実験や研究の様子・現場が実際に見られる、ふれられるというのは、何にも勝る経験だよ。


じぃじ先生なら、のぞき込んでいる子どもたちに思わず手を振ったりしちゃいそう。

うんうん、やりそうだ。興味あるかい? じゃあこっちも見るかい? なんて、大サービスしそうだ。楽しいなぁ。


私が興味深かったのは、論文の動画。
自分が書いた論文について、どうやって専門誌の掲載までこぎつけるかという経緯を紹介したものなんだけど、途中で査読者に「独創性がない」とか「イントロダクションが長すぎ」とか、どんどんダメ出しされて、ヘコむシーンが出てくるんだよ。

それはなんとシビアな・・・。
で、これから論文を書く立場としては参考になった?


と、言うより、ここまで見せるのがおもしろいと思った。

研究の世界は甘くないね。


もちろんわかってるよぅ。
それとは別に、もうひとつ感じたことがあるんだ。
たとえば昆虫に夢中の子どもがいるとするじゃない? その子がこんな展示を見たら、昆虫の研究が身近になると思うんだよね。
自分の知りたい・捕まえたいという気持ちも研究に結びつくかもしれない、研究って決して雲の上の特別なことじゃないのかもしれない。
そうやって具体的にイメージできるようになれば、じゃあ自分もその道を目指してみようと考えるんじゃないかなって。

たしかに。それこそが科学教育の原点であり、すそ野の広さの重要性だね。 そこからたくさん人材が育っていくだろう。
科学離れが心配される日本としては、博物館先進国のイギリスに、まだまだたくさん学ぶことがありそうだ。


ミュージアムはほかにもまわったんだけど、時間が全然足りなかった。また行かなくちゃ!



 
 


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