地下鉄の中で「森の京都」という広告を見たよ。
あるある。京都府の「もうひとつの京都、行こう。」キャンペーンのひとつだね。
京都PRというと、どうしても京都市内の社寺中心になりがちだけど、市ばかりでなく、府内には他にもいいものがあることを知ってもらいたい、というコンセプトで展開中だ。
たしかに、平安京のインパクトがあまりにも大きいから、京都市のイメージばかりが強いよね。世界遺産も「古都京都の文化財」としての認定だもの。
そういえば、この間、友達が描いていた近畿地方の地図、なんと京都府は琵琶湖と大阪湾の間にあって、海に面していなかった!
なんだって!? 京都には舞鶴という有名な軍港があるじゃないか! 天橋立という日本三景も。
いやいや、じぃじ先生。戦後70年を超えた今、「有名な軍港」と言われても・・・。 その友達、「天橋立は?」って聞いたら「あ〜! 日本海!」って。言われてはじめて気づいたみたい。
じゃあ、京都市から丹後の日本海に行く途中の京丹波や福知山は・・・。
京丹波って、じぃじ校長先生の林業大学校があるあたりだよね。そのあたりは、あまり・・・う〜ん、かなり知られていないかも。 私だって・・・ごめんなさい。最初に聞いた時は、ピンとこなかった。
う〜ん、京都には天橋立はもちろん、嵐山、芦生など森林・樹木関連の景勝地がたくさんあるというのに、なんてことだ。
嵐山は、もちろん誰もが知っているけどね。
茅葺き屋根の集落が美しい京北や美山があり、世界一集約な林業地の北山杉もあるのに。
ちょっとちょっと、そんな嘆かないで。 「集約」ってなに? 林業のスタイル?
限定した樹種を手厚く世話して育てるという意味だよ。
北山では、もともと地面近くで伐ったスギの幹から出てくる萌芽を育て、美しい細材(垂木)を採る台杉仕立てが盛んだった。昭和中期以降は、密に植えたスギの人工林で、幹の細い時から枝打ちを繰り返し、伐採木は砂で磨いて高品質の床柱を生産してきた。
北山杉の柱はすべすべで光沢があって、ほんと、きれいだよね。
そう。京都府はね、実際には、全体面積の3/4、つまり75%を森林が占めているんだ。 この森林率は、全国都道府県中10位。
ええと、日本全体では・・・?
日本全体の森林率は66%だ。
日本平均より9%も多い森林県。だからこそ、西日本最初の林業大学校がつくられたんだよね(→2012.5ちょっと教えて)。
京都の森林規模の大きさを示すひとつが、二酸化炭素の吸収・固定量のデータだ。
そう。1997年COP3の京都議定書での、日本の二酸化炭素排出量の話を覚えているかい?
えーっと、削減目標は6%で、そのうち3.8%は森林の吸収に依存する、だっけ?
ご名答! その森林による吸収・固定量というものを、京都府についてじぃじ先生なりに試算してみたんだ。
京都府が排出した二酸化炭素を、京都府の森林がどれだけ吸収・固定するかってことだね。なんだか大変そう・・・。で、結果は?
試算では、京都府の森林が吸収・固定する二酸化炭素量は、森林の年成長量から計算すれば、京都府全体からの年間放出量の8%にあたる。
8%も吸ってくれるの!? 日本全体で森林にお願いするのは3.8%だっていうのに? いかに森林の規模が大きいかがわかるね。 京都って森林県なんだ、本当に。なんかそういう部分、「京都」のイメージから置いてきぼりな感じがする。
そうだなあ。日本を語るのに平安京は外せないから、訪れる人は多いんだけどなぁ。まぁほとんどが京都市内というわけだが・・・。
だからね、ようやく京都の森と海にも目が向いたのはいいことだ。 特設サイトもあるんだよ(→京都府公式内「もうひとつの京都、行こう。」)。
「海」「森」「お茶」が3つの柱で、毎年、順にクローズアップされていっているんだね。で、今年が「森」の番だと。
「森の京都博」(→公式「森の京都博」)と銘打って展開しているが、その中心的舞台が、いわゆる丹波地区だ。丹波の国といえば・・・。
はいはい、本当に好きだなぁ(笑)。
もちろんそれらも有名だが、森林資源もまた豊富な地域。その昔、平安京を造る木材も、丹波から大量に伐り出された。保津川を筏(いかだ)で流して、今の嵐山のあたりで陸揚げ。そこから都まで運んだ道が丸太町通だよ。
保津川って、トロッコ列車が沿って走る、あの川? 乗ったことあるよ。丸太町通だって、お墓参りの時にいつも通るじゃない。
小さい頃に日吉のプールに行ったこともあったんじゃないかな。
なんとなく覚えてる。プールと温泉があったような。
あのあたりも含めて、京都府中部に広がっているのが、今年3月に国定公園に指定されたばかりの「京都丹波高原」だ。 主に、京都大学の芦生研究林のある南丹市、そして綾部市、もちろん林業大学校のある京丹波町も含まれている。このほかに京都市の一部もね。
なんだ、知らないうちに「森の京都」に関わっていたんだ、私。
身近に感じられるようになってきたかな。今年は、その丹波地方を中心にさまざまなイベントが予定されている。 中でも最重要イベントに位置付けられているのが、第40回全国育樹祭だ。
育樹祭って、毎年どこかでやっているイメージだよね。・・・あれ、植樹祭とは違うの?
全国植樹祭は、太平洋戦争後の昭和25年から全国回り持ちで毎年開催の、国土緑化運動の中心的行事。天皇皇后両陛下によるお手植えやお手播きを中心にした記念式典だ。
一方、全国育樹祭は、昭和52年開始、以降毎年開催。植樹祭での天皇皇后両陛下のお手植え・お手播きによる木を、皇族の方が枝打ち等の手入れをなさる祭典。いずれも国民の森林に対する愛情を培うことを目的にしている。
植えることと育てること。うん、森林には手入れが必要だ。
今年の育樹祭のメインは10月8日の山城総合運動公園(宇治市)での「お手入れ行事」と、9日府民の森ひよし(南丹市)での「式典行事」だよ。
ちゃんと「森の京都」の日吉でやるんだね。
もちろんだよ。「森の京都博」は、他にも、全国緑の子供サミット、国際森林シンポジウム、森林・林業・環境機械展示実演会、などなどイベント盛り沢山で、他にもさまざま計画・進行中。 詳しくは特設サイトをご覧ください(笑)。
じぃじ先生、すっかり関係者みたい。
みたいじゃなくて、実はしっかり関係者なんだ。 わが京都林大にも、メイン会場には当然、国際シンポジウムにも学生諸君の参加が要請されている。
それは大忙しだ。 そういえば前にあった、旧京都府議場でのじぃじ先生講演(→2016. 5.26ひとりごと)も一環だったんだね。
こうしたイベントを通じて、京都に住む人々、観光に訪れる人々に、楽しみながら、京都の森林の存在そのものと、その美しさ・大切さを改めて認識してもらいたいものだ。 それが、また明日の森林の活力に繋がるんだから。
日本の森林応援団のじぃじ先生、今年は京都の森応援団。 私も「京都出身です」と言う以上、いろいろちゃんと知っておかなくちゃ。
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