北海道大学に行ったよ。札幌駅から歩いてすぐのところ、キャンパスが広い〜!
北大と言えば、クラーク博士とポプラ並木だな。
ポプラ並木、キャンパスの奥のほうにあるんだね。
そう。あの並木は、明治期にアメリカから入った苗、アメリカヤマナラシが元祖といわれている。
ヤマナラシ? あんまり聞いたことないけど、何のお仲間?
ヤナギだよ。シダレヤナギなどと属は違うが、科は同じ。同属には、ハコヤナギ、ドロノキがある。
ポプラはあちこちに植えられたが、北大の並木は,その存在場所から大学のシンボル的存在となり、今や観光地化しているね。ただ・・・。
ただ?
並木、どうなっていた? これまで何度も台風等で被害を受け、その都度修復されてきた歴史がある。 10年ほど前にも台風でたくさん倒れてしまったと聞いたんだが。
それがね、中を歩きたかったんだけど、積雪のせいか入れないようになっていたの。 だから、残念ながらよくわからない。2004年の台風被害についての報告書があったから買ってきたよ。
なんと! これはものすごい記録写真集だなぁ。 その表題も『烈風一過 北大キャンパスの樹々』とは。
あ、なんかわくわくしてる(笑)。
そりゃあ、するさ。校内の樹木に愛着をもつ人々の思いにあふれているねぇ。 発行は北海道大学総合博物館、か。
北大博物館、1929(昭和4)年建設の古くて立派な建物だったよ。今でも理学部の本部があって、ノーベル化学賞(2010年)を受けた鈴木章博士が学生時代に学んだという講義室が今も現役。
展示内容は北大が手がける研究紹介や膨大なコレクション。恐竜の化石やマンモスの標本もある。 それと、大英自然史博物館のダーウィンセンター(→2015.11ちょっと教えて)みたいに、研究中の学者さんの様子もオープンなの。
研究室の中がのぞけるという、あのスタイルだね。
小惑星探査機「はやぶさ2」が持って帰ってくる資料を分析する予定の装置、近くで見せてもらってワクワクしたよ。
何よりすごいのがコレクション展示。恐竜の部屋も大迫力だったけど、剥製がむき出しで、あちこちにごろごろ。
さすがはフィールドワークに強い北大だ。 この部屋は収蔵庫みたいだね。
中にも入れるよ。で、奥に進むと暗がりからクマが、ぬっ!
おお!
ビックリした子どもが怖がって泣くんだって。
だろうなぁ。これはヒグマだね。 ヒグマは本州に住む人間がイメージするクマとはまるで違っていて、大きい体つきに、精悍なキリリとした顔つきだそうだよ。 地元の人によると、「山で出会ったらもうおしまい」なんだって。
わかる! 旭山動物園でヒグマを見たけど、もうほんと、怖かった。
実はじぃじ先生も、北海道の森でクマに出会ったことがあるよ。
ええ!? あ、そういえば、学生時代から何度か北海道で森林の調査をしたことがあるって聞いたことがあるけれど。
そう。最初は、1955(昭和30)年、大学4年の時で国有林の実習・アルバイト。森林の立木の大きさを測って歩くことが主な仕事だったが、青函連絡船・洞爺丸が沈没するなど大きな被害を出した台風の翌年でね。 強風で倒れた被害木が多くて、現場の林班境界票(生木に懸けてある)を探し、付け替えるという仕事も多かった。
院生時代の4大学(東大・北大・京大・大阪市大)合同調査では、実際に木を伐って、目方を計り、現存量や生産力を推定した。これは北見と帯広の国有林管内。京大の演習林(釧路・標茶)へも行ったよ。
で、山で・・・?
うん。北見の山の尾根筋を歩いていたとき、先頭の人が「あれ?」と足を止めたんだ。目線の先を見ると、ササで覆われた斜面の下のほうに黒い動く物が・・・。 クマだと理解するのに一呼吸二呼吸。なにしろ初体験だからね。 慣れている人たちは既に逃げ出していたから、「食われるとすれば俺かな」なんて思ったものだよ。
うわぁぁぁ。
幸いにもクマ君は谷の方へ降りていったらしく、助かりました。なかなかな体験だったな、うん。
しかし、今回行ったのって3月末だろう? 雪って話が出ていたけれど、北海道はまだまだ寒かったんじゃないのかな。
そう、旭川は街中に積雪。札幌の街は少なかったけど、帰りは大雪で飛行機がすごく遅れた。
だろうなぁ。北海道は亜寒帯だからね。
うん、さすがはウメとサクラが同時に開花する土地(→2010.3森林雑学ゼミ)。気候の違いを実感したよ。
亜寒帯は、トドマツ・エゾマツの針葉樹林が自然植生する気候帯だ。
ただし、北海道西部の広い平地部は、冷温帯から亜寒帯への推移地帯で、亜寒帯の常緑針葉樹と、冷温帯の落葉広葉樹(ミズナラ・シナノキ・カエデ類・カンバ類等)を交えた森林が広く分布している。「汎針広混交林」と呼ばれていてね、北海道の特徴だ。
汎針広混交林? 亜寒帯の極相が常緑針葉樹林、冷温帯の極相が落葉広葉樹林ということなのかな。
あくまで推移帯だよ。だから、両者が混在しているんだ。
推移帯だから当然本州にもあるけれど、北海道の場合、その垂直的な広がりがちょうど北海道の中央から西の平野部と合致したものだから、面積も広くて特徴的とされる。
北海道といえば原生林のイメージだけど、人の手はどんなふうに入ってきたのかな。
もともと広大な天然林を抱えていたから、江戸時代からずっと天然林からの略奪的伐採が主流だった。 択伐と称して、天然林を単木的に伐採、自然更新するやり方であったが、更新は必ずしもうまくいっていたとはいえない。
彼の地でもやはりその実施は当然。植栽樹種はカラマツ。大規模造林地が各地にできた。
カラマツ? 拡大造林といえば、スギやヒノキじゃないの?
ほら、北海道は寒いから。スギやヒノキは林業対象としての人工植栽に不向き。一方でカラマツは寒さに強く、寒冷地人工林樹種としてはこれしかないとして、明治以来中部日本から持ち込まれたんだ。
しかしその後、関税撤廃の外国産材に負けての全国的な林業不況、伐採期に至ったカラマツも値が安くて。 まぁ近年では、ロシアの政策変更(高輸出税)のため、シベリアカラマツの輸入量が減り、国産カラマツがやや盛り返しているという話はあるけどね。
うーん、日本の林業の悩みは北海道でも同じか。
ところで北大には、立派な植物園(北海道大学植物園)もあるけれど、行った?
今回は残念ながら行ってないの。雪がひどくなってきたし、博物館で時間を使い果たして挫折しちゃった。そもそも、冬の間、温室以外はクローズしているんだって。 今度は夏に行かなくちゃ。
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