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2018.10
じぃじ先生 ちょっと教えて

ひどい台風だったね。



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京都府立植物園マップ
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植物園北山門の貼り紙。
赤い立入禁止区域の多さに、言葉が出ない。


今年の関西は台風の連続。もう、気が滅入っちゃうよ。 特に京都直撃の台風21号(2018年9月4日)では、市内のあちこちで大きな被害が出たね。

おなじみの上賀茂神社も京都御所もひどいことになっていたし(→2018.9.11ひとりごと)、サクラで有名な平野神社では、江戸時代初期の建築で指定文化財の拝殿が倒壊してしまった。二条城でも被害が出ている。


京都府立植物園でも、たくさんの木が倒れたって聞いたよ。

そうなんだ。園内は大変な被害でね。その後の整備のために5日間も閉園していた。ようやく9月10日から再開したので、その翌日9月11日に早速行ってきたよ。


どんな感じだったのかな。もう片付いていた?

いやいや、まだまだ。もちろん危険のないように整えられてはいたが、まだ多くの部分が立入禁止になっていた。入口のところには、こんな貼り紙があってね。赤い部分が立入禁止区域だ。


え、結構広くない? 禁止エリア。

そうなんだ。園内のあちこちには、黄色いテープが張り巡らされていたよ。 広い道に倒れこんだ木は処理されて、安全に通行できるようになっていたけど、見える範囲だけでも、かなりたくさん倒れていたなぁ。


新聞には、植物園全体で約200本の被害と出ていたけど。

う〜ん。まぁ主要なものを数えたらそうなるだろうね。でもざっと見た感じでは、とてもそんな数ではおさまらないんじゃないかな。


実際はもっとひどいってこと?


2016年12月撮影


9月11日撮影
 


地図を見ながら説明しようか。

まずだ。毎年冬のイルミネーションでおなじみの木といえば、わかるかな。


四文字評言の木だね(→2017.12.28ひとりごと)。

うん、北山門から入ってすぐのところの樹高20mのトウカエデ


白一色のイルミネーション、神々しくてきれいなんだけど・・・。

それがこのありさまだ。  


あれ? なんだか形が違うよ。高さも低いような・・・。

わかるかい? そうなんだ。こずえが風で折れてしまった。


ええー! 今年のライトアップどうなるんだろう!


9月2日撮影


9月11日撮影
 


この木はわかるかな?


これは確か、去年の台風でやられたヒマラヤシーダー

そう、2017年の台風21号で、幹から太枝が2本削げ落ち、幹も上方で折れたが、直立のまま1年過ごしたところだった。
今回、たまたま台風2日前に植物園のイベントに出かけ、そのついでに、その後どうしてるかなと寄ってみたんだが、その時はこんな姿でちょっと安心していた。
それが今回の台風でこれだ。


右側の枝がなくなってる!

2年連続の災難だ。健全回復を祈りたいよ。





9月11日撮影
 

この木は?
道から見ると大きな年輪の標本が置いてあるみたいだけど。

メタセコイアだね。見てのとおりの大木が根こそぎ倒れたんだが、道をふさいでしまった幹の部分だけを切って撤去したんだろう。
裏から見るとこんな感じ。もちろんこのあたりも通路以外は立入禁止だ。



9月11日撮影
 

次はその近くのダイオウショウ ④ 。


葉が長くて3本のマツだよね。・・・ん? ええっ!?

まるでホウキのようだろう? 枝ごと折れて落ちている。ちょっと不思議な光景だよね。


写真の上下が逆さまみたい。


9月2日撮影


9月11日撮影
 

大芝生を抜けて南に行くと、美しいクスの並木 ⑤ がある。


うん。例の川端康成『古都』で有名なスポット。

200mほどの道の両側に、100年生になるクス90本余りが立ち並んでいる。ここも、台風2日前に写真を撮っていたんだ。


緑が生き生きしてきれいだけど・・・なんか嫌な予感がする。

それ、残念ながら大あたり。ほら、台風通過後がこれだ。


ああ! 空が広くなっている。

「空が広い」は、言い得ているなぁ。今まで空を覆っていた枝葉の閉鎖が破れてしまっているからね。



9月11日撮影


9月19日撮影
 


クスの並木 ⑤ のここに、2本並んで根から倒伏しているだろう。


ほんとだ。両方根こそぎだ。こういう場合って植え直すのかな。

実は気になって、台風から2週間たった19日にも見に行ってきたんだ。
そうしたら、木を起こして植え直してあった。


ほんとだ、根っこのところが盛り上がっている。うまく根付いて、何とか元気になってほしいなあ。







9月11日撮影
 


クスノキ並木のはずれに、ヒマラヤスギ ⑥ があったのを覚えているかな。


うん。大きくて立派な木が何本もあったよ。

ヒマラヤスギとはヒンズー語で「神の木」を意味するそうだが、その名のとおり枝ぶりが美しい木だ。明治期から輸入されて流行した。
京都府立植物園の開園は1923(大正12)年だが、それよりも前、1917(大正6)年に最初の植栽記録がある。長い時間をかけてかなりの大木に育っていたんだが・・・。


ああ、ひどい! このスカスカな感じは、枝がごっそり落ちたってことなんだよね。

倒伏、枝折れ、かなり目立っているよ。
何しろ大きな木だろう? 園内の他の場所からもよく見える、シンボル的な存在だった。だが、それが逆にはたらいてしまってねぇ・・・植物園の風景が寂しくなってしまった。たとえばここだ。


バラ園のあたりから比叡山を見たところだね。

美智子皇后が「比叡山、ここから見ると最もきれい」とお褒めになったというアングルだ。その前景として欠かせないのが、枝ぶりの豊かなヒマラヤスギだったはずなんだが。


その姿がこれでは、比叡山も魅力半減だよぅ。もう痛々しくてたまらないよ。




9月19日撮影
 

あ、そうだ。レバノンスギ ⑦ はどうなの? 去年の台風で倒れて、水琴窟のあずまやの屋根を壊しちゃったという、あの木。

お、覚えていたか。中近東原産のレバノンスギ。
ノアの箱舟の材料になったとも伝えられる木だが、もう原産地でも希少な樹種だ。


珍しいからなんとか助けたいって話があったよね。
起こして植え直してあったって、ついこの間、聞いたばかりだけど(→2018.9.2ひとりごと)、まさか、また・・・。

いや、あれは大丈夫だったよ。起こしたばかりだからまだワイヤーで支えてあったんだ。それが功を奏したのか、今回は無事。再建なったばかりのあずまやもね。


ああ、よかった!! それは不幸中の幸い。でも、不幸が大きすぎるなぁ。

とにかくひどい台風だった。
こうして写真を見ていても、被害の大きさに、やりきれない思いだよ。この後にも、またやってきたし。


小さい頃から何度も出かけた植物園。仲良しの木もいっぱいあるんだよ・・・。いつもならもっといろいろ質問するところなんだけど、今日ばかりはその気力もなくなっちゃった。
じぃじ先生、これからもときどき見に行って、様子を教えてね。見守りと応援、よろしくお願いします。

     
     


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