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2022.03
じぃじ先生 ちょっと教えて

深泥池に行ってみようよ。


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住宅街の真ん中に、突然の深泥池。





池の植物についての詳しい説明版が。





どれが浮島?





道路がカーブした先にすぐ水面がある。





池のまわりは歩いて一周できる。





深泥池のまわりは、照葉樹混生の雑木林。



 
今年の冬は寒かったねえ。3月に入ってようやくウメの花。

京都は雪も多かった。おかげで日課の散歩に出られないことも何度かあったなあ。


あのー、そもそもコロナが気になるからあまり出歩かないでほしいんだけど・・・。

いやいや、このあたりは人は多くない。もちろん三密にならない、いいコースがあるんだよ。


知ってるよ。じぃじのブログによく出てくるもの。
ロングコースは上賀茂神社と二葉姫稲荷・大田神社コース。ほかに、冬枯れの木越しの夕日が美しい賀茂川河川敷コース、もちろん植物園コース、とか。

もうひとつあるよ。深泥池コースだ。 京都の町と鞍馬山を結ぶ鞍馬街道を北に進むと、次第に山が両側からせまってくる。そこにあるのが深泥池だ。


聞いてはいるけど、そういえばちゃんと行ったことはないかも。
深泥池という語感、ちょっとおどろおどろしいよねぇ。

「みぞろがいけ」という呼び方にこだわる人も多いよ。「みどろ」も「みぞろ」も歴史の古い呼び名だ。


「みぞろがいけ」・・・さらにざわざわする。幽霊が出るって聞いたことがあるよぅ。

ははは。では、今日はそこをご案内しよう。


う〜ん・・・冬だからな。幽霊のシーズンじゃないから怖くないよね。

コンサートホールの横からまっすぐ下鴨中通を北上すると、突然道が右にカーブする。


うわ、いきなり池の水面じゃない!? 慣れていなかったら曲がり切れずにつっこんでしまいそうだよ。

まさか。でもまぁ、車道のすぐ横が池だからね。


水が今にもあふれ出てきそう・・・。池とは言うものの一面に草が生えていて、湿原って感じだね。

周囲1.5km。面積は9haで、その1/3は浮島になっている。


浮島? 島が浮いているの?

いや、もちろんプカプカ浮いているわけじゃないよ。

水草などの遺体が腐って泥炭化し、植生の根を支えたものが、四季と共に上下を繰り替えして発達しているんだ。


そういえば、氷河期以来の動植物が生息しているんだったよね。天然記念物に指定されているって(→2015.5.16ひとりごと)。

そう、深泥池の水生植物群落は、古く1927(昭和2)年に国の天然記念物に指定されている。


じぃじ先生の生まれる前だ。

そうなんだよ。その後、1988(昭和63)年、生物群集全体が対象になったんだ。陸地化した個所には、水面、湿原、浮島を取り巻いて、雑木林が広がっている。


えーっと、広葉樹だよね?

そう。一般には、コナラ・ネジキなど、落葉広葉樹主体の明るい林地だね。

それに加えて、地域の気候帯(暖温帯)らしくアラカシ・コジイなどの照葉樹も混生している。


住宅地のすぐ近くに、こんなすごい自然があるんだねぇ。

それを眺めながら池を1周したいところだが、このあたりも山からおりてくるシカがいるらしくて、最近は鹿よけの柵ができている。人間は入れるようだが・・・。


出られなくなったら困るからね。危うきに近寄らず、でお願いしまーす。

はいはい。もっとも、倒木も多くて、足元があまりよくないんだ。じぃじ先生も用心して、このところあまり行かないようにしている。


倒木? そうか、このあたりも例の台風でひどい被害を受けたんだよね(→2018.2.1110.12ひとりごと)。

そう。2017(平成29)年、2018(平成30)年、立て続けに京都を襲った台風だ。御所や植物園、あちこちの寺社や公園等の樹木が沢山やられてしまった(→2018.1012ちょっと教えて2017.11森林雑学ゼミ)。


もうあれから5年近くにもなるのにね。すごい勢力だったんだなぁ。




鳥居の横に大きな伐り株。





こんな大きな木が・・・。







神社の裏山にはまだ倒れた木が。





すぐきの神様縁起。
 

ちょっと寄り道をしようか。 深泥池の脇の道は鞍馬に通じる鞍馬街道だ。その街道沿いに深泥池貴舩(みそろがいけきふね)神社がある。


大きなスギが倒れた神社だよね(→2018.10.13ひとりごと)。気になっていたんだよ。
・・・ああ、こんな姿に!!

根っこがしっかり残っているので、根こそぎ倒れたのではなく途中で折れたのだろうなあ。


被害も出たんだよね。

近くにあった民家の屋根を壊してしまったそうだ。


こんな大きな木が倒れてきたなんて、怖かっただろうなぁ、その家の人。 大きな切り株。ぐるっと見てみても、ひこばえはなさそうだねえ。

ここは、鳥居の向こうに大きなスギがそびえている印象的なアングルだったんだ。鞍馬街道を行きかう人の目を楽しませただろうね。


奥のほうでも木がだいぶ倒れているね。

さて、日が傾いて寒くなってきた。そろそろ戻ろうか。

おっとその前に、もうひとつ。境内にある火伏の神様、秋葉神社。ここの石碑は知っているかな?


石碑?

上賀茂の名物すぐきは知っているよね。


もちろんだよ。

その名前の由来がここに書いてある。


由来? 知っているよ。「酸い茎」でしょ。

なんだ、知っていたか。


じぃじ先生、ブログに書いていたじゃない。
それにね、小学校に、すぐき屋のおじさんがゲストティーチャーに来てくれたことがあって、お話を聞いたの。

ほほう。


昔、上賀茂村で大火事があって、村人が後片付けをしていたら、漬物桶だけが焼け残っていたんだって。で、それを食べてみた人が「こりゃうまい、酸い(すっぱい)茎や」、で「すぐき」という名前になった、と。
火事の熱でいい感じに発酵していたんだね。

これは参った。


うふふ。地元っ子ですもの♪



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