只木良也森林雑学研究室 本文へジャンプ

 
2009.11
森林雑学ゼミ
 

落ち葉の季節

 

  swpochiバックナンバー






秋、散り敷く落葉。



トチの落ち葉、地表に鮮やか。



こちらはヒノキ。枝で落ちるのを待つ。



落葉を踏みしめながら・・・。


 

 

 

 

 

 「じぃじ先生 ちょっと教えて」では、紅葉が話題。この紅葉に続くものは、言うまでもなく落葉。晩秋は落ち葉のシーズンです。
 
 ところが、沖縄へ行くと、落ち葉の季節は春。
 そんな馬鹿な、と思われるでしょうが、ここでは街にも山にも多いのは、常緑広葉樹の類で、彼らの落ち葉の季節は春なのでした。
 沖縄に限らず、常緑広葉樹(照葉樹)は皆同じで、その年の新葉が開いた直後に、古い葉の約半分が枯れ落ちます。シイ・カシ類、タブ、イスノキ、ツバキ・・・。中でもクスノキは、1年中緑は当然ですが、春の新葉展開の後、去年の葉が全部落ちて、新葉ばかりになります。
 冬に葉があり、夏に葉を落とす変わった樹種もあります。ジンチョウゲの仲間のオニシバリです。樹皮が強靭なところから「鬼縛り」なのですが、夏に葉がないという意味で、ナツボウズとも呼ばれています。

 さて、常緑広葉樹の中には、春と秋と二度、落葉季を持つものもあります。
 ソヨゴ、ヤマグルマ、ヤマモモなどはその例です。これらは比較的寒さに強く、照葉樹の育たない冷温帯にかなり食い込んで分布していて、常緑・落葉の折衷型と言えるかもしれません。なお、寒い国でソヨゴは、寒さで育たないサカキの代わりに神様に供えられています。
 常緑のタケも春の落葉です。だから、俳句の世界では、春の季題に「竹の秋」。なるほど「落葉は秋のもの」の裏返しです。同じ春の季題の「麦秋」と似た発想ですね。

 常緑樹といいます。確かに冬も葉をつけており、1年中緑の意味ですが、「葉が落ちない」わけではありません。新しい葉と交代するが、真っ裸にはならないということです。
 スギやヒノキ、モミやマツ類などの常緑針葉樹ももちろん、葉は交代します。彼らの交代の時期は秋、したがって秋に落葉します。この時期、彼らの樹冠(じゅかん:枝葉の層)をよく見ると、茶色い枯れ葉が沢山ついています。
 
 ちなみに、この落葉。冬の無い熱帯へいくと、春とか秋とかではなく、雨季と乾季によって支配されます。
 水不足の乾季には、はじめから光合成をあきらめ、また水消費を少なくするために、葉を落としてしまいます。したがって、こうした森林は、雨の時期に緑ですから雨緑林(うりょくりん)と呼びます。
 それに対応して、わが国のような冬には葉を落とす森林は、夏は緑ですから夏緑林(かりょくりん)と呼ばれています。

 わが国のような中緯度地帯では、ちゃんと茂った森林の1年間の落葉量は、常緑・落葉、広葉・針葉を問わず、乾燥重量にしてヘクタールあたり3トン程度(参照:前回「森の葉の量はどれくらい?」)。この落ち葉はやがて腐って、豊かな土をつくります。
 光合成の働きを終えた葉は、落ちて「ゴミ」ではなく「肥料」になるのでした。自然界には無駄はありません。


(c)只木良也 2009

 

 

swpochiページの先頭に戻る

swpochi森林雑学ゼミ バックナンバー

 

   


 
Stories of Forest Ecology  只木良也 森林雑学研究室
当サイト内の文章・画像等の無断転載はご遠慮ください。©2009-2024 YOSHIYA TADAKI All Rights Reserved.
inserted by FC2 system