カラマツ林地面を覆う落葉。
熱帯多雨林 生産力大、落葉も多い。
熱帯多雨林伐採跡、土は黒くない。
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前回の最後で、落ち葉はやがて豊かな土をつくると述べました(参照:「落ち葉の季節」)。光合成の働きを終えた落ち葉は「ゴミ」ではなく「肥料」であり、自然界に無駄はありません。
地上に落ちた葉は、さまざまな土壌動物や微生物類の働きによって腐らされ、土壌を豊かに育みます。
この「腐る」ということは、自然界では大切なこと。生物の身体をつくっていた生命を持つもの(有機物)が、それの原材料である生命を持たないもの(無機物)に戻る(有機物の分解・還元)ということであり、それがまた次の光合成に使われるというわけです。
光合成→植物→動物→植物・動物遺体〈落葉・落枝・排泄物・死体など〉→微生物→光合成原料→光合成→・・・。
自然界の必要物質がぐるぐる回るこの「物質循環」という現象は、自然界永続のための基本といえるものです。
この循環において「落ち葉」は、森林ではとくに大切です。単に量が多いというだけでなく、枯れた枝や幹よりずっと腐りやすく、よって良い土をより早くつくることができるのです。枯れ葉が細かくなり、腐りながら土に混ざるとき、炭素はやがて二酸化炭素として大気に戻りますが、その他の元素のほとんどは土の中に残り、栄養豊かな、つまり光合成原料豊富な、そして同時に穴が多くて柔らかい土が出来ていきます。
林道脇の切り開き箇所などで、土の垂直断面が見えることがあるでしょう。土の表面近くは色が黒く、深いほど明るい色だと気づいたことはありませんか?
表面近くの土の色が黒いのは、こうした落ち葉などの分解物が混ざったためです。
ところが、熱帯多雨林。この地域では、表面近くの土は薄い色をしています。
1年中高温・多湿で、光合成も盛ん、落葉も多い、分解も速い、さぞ土が出来るのも・・・と、つい思います。
しかし、高温・多湿すぎるため、分解は早いが流されやすく、有機物は土の中に残りにくいという状況があります。落葉が完全に腐ってしまうのに1年かからないのですから。
したがって、熱帯林の土は栄養不足で、薄い色をしています(写真)。土の力が不足なため、こうした熱帯林を伐採した跡は、なかなか森林に回復せず、それが、熱帯林伐採が問題化しているひとつの原因なのです。
反対に、寒い亜寒帯の森林。低温で分解が遅く、土の中の有機物はたくさん溜まります。しかし、ここにはまた別の問題が・・・。
そうした森林を伐採すると、太陽光が差し込んで土の温度が上がり分解促進、今までその中に貯留されていた炭素が二酸化炭素化して排出量が増加するのです。
「物質循環」という自然界の現象。優れた“リサイクル・システム”であることに間違いありません。それを壊さないこと、活かして使うこと、人間はまだそれに不得手みたいです。
(c)只木良也 2009
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