線虫によるマツ枯れ木の伐倒処理。
その伐根、同心円の年輪間隔は、外側(最近)まで広いまま。
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前回、「松くい虫」の被害に少しだけ触れました(「マツ林盛衰記」)。
近年拡大の一途にあるマツ枯れ病は、カミキリとそれが運ぶ線虫が起こすものです。
元気なマツにカミキリが線虫を運び込む
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マツの体内で線虫大繁殖
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それらが樹体内の水の動きを妨げ、マツは枯れる
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枯れたマツにカミキリが産卵
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成虫になったカミキリは線虫を身体にいっぱいつけてマツから飛び出し(※1)
元気なマツの新芽をかじる
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そのとき、かじられた傷口から線虫がマツに侵入する
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移されたマツの体内で線虫大繁殖してマツは枯れる(※2)
・・・これがいわゆる「マツ枯れ病」の仕組みです。
カミキリ、正確にはマツノマダラカミキリが成虫になって飛び出す(※1)のは春。
これが元気なマツの今年ぐんと伸びたうまそうな新芽を餌にし、そのかじり口から線虫、正しくはマツノザイセンチュウが侵入・繁殖し、結果、マツが赤くなって枯れる(※2)のは夏。
その枯れは非常に急激です。もっとも最近は、寒い地方を中心に線虫侵入から1年持ち越して翌春に赤くなる例も増えているようですが。
被害枯死木は、被害拡大を防ぐために伐倒、林外へ運び出して処理されるのが原則。といいながら、それがなかなか進まないのが現実です。
ところで、写真のような風景、林道脇などで見かけませんか? これがマツ枯れ被害木の伐倒処理です。
伐り株の断面には年輪が見えます。写真ではちょっと判りにくいかもしれませんが、幹の外側まで年輪幅は広いまま、これが線虫によるマツ枯れの特徴なのです。
一般に、幹の断面の年輪は、幹の外側では間隔が狭まってきます。
森林が大きく成長するということは立木が混み合ってくるということですから、隣の木との競争関係から互いに成長を制約し合い、直径の成長はだんだんと抑圧されます。だから幹の断面の年輪幅は外側(幹の皮に近い方)ほど狭くなってくるのが普通なのです。
外側の年輪幅が狭いのは、最近の直径成長が低下しているということ。これにはほとんど例外がなく、間伐された木の切り口を見ても、山歩きの際に通りかかった伐採跡で、伐根を見ても、ほぼ同じ様子が見て取れます。
ところが、線虫によって枯れたマツは、年輪の幅は広いまま。
それは、それまですくすく元気に成長していた木が、線虫にやられて突然に枯れるためで、これはつまり特殊例なのです。
(c)只木良也 2010
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