ウメ。寒風の中、凛と咲く(2月中旬/京都市内)。
アセビ。こちらも早々と(2月下旬/京都醍醐山)。
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春の花といえばサクラ。サクラ咲く頃は、陽気もぽかぽか。
その春に先駆けて、まだコートもマフラーも必要な時期に花咲く樹木、ウメはその代表で、このことは誰でも知っています。
春に咲く樹木の花の芽の基は、実は前の年の夏に出来ています。
昼間の長さで時期を知り、高い気温で出来た芽の基は、春まで休眠するのですが、花開くべき春に至るまでの冬の間の、ある一定の低温条件が満足されると休眠から醒め、暖かくなるのに伴って花開きます。暖かくなれば花開くのは間違いないのですが、その前に、冬の寒さが必要、これは間違えて秋に咲かないようにという安全対策なのです。
この低温という安全条件、サクラよりもウメの方が緩く、したがって暖かい地方でウメの花がずっと先行します。
一方寒い地方では、条件満足は早くても、その後の暖かくなり方がゆっくりです。 従って、ウメ前線、サクラ前線は暖地から寒地へと動いて行くことは同じとしても、ウメの花からサクラの花への日数は、暖かい地方ほど長くなることになります。
暖かい鹿児島での平年の開花日は、ウメ1月20日頃、サクラ3月末で、その開花日の間隔は70日ほどもあるのですが、その間隔は寒い地方に向かって東京で55日、仙台40日、新潟20日程度とだんだん短くなり、ついに青森では3日、札幌では0日、つまりウメとサクラは同時に開花(5月6日)になってしまいます。
うんと暖かい沖縄では、サクラの花は山の上から咲き始めて、下へ降りてくるといいます。標高の高いところで相対的に気温が低いことが、低温条件満足に効いているようです。
春の花には寒さが必要。
昨今話題の「温暖化」、温暖化になれば、花見が早くから出来るなんて、のんきなことは言っていられません。温暖化進行すれば、花の咲かないことが・・・。ちょっと心配が過ぎましたかな。
ところで、ウメに負けずに、寒さの中でも早くから花を着ける樹木はいろいろあります。
たとえば、ツバキ。ツバキは「椿」、春の木の字をもらっていますが寒風の中に花開く常緑樹です。そして西日本の里山に多く、庭木としてもよく使われているアセビ(ツツジ科)、これも常緑です。あんまりニュースなどにはなりませんが、白や淡紅の小さな壷型の花が円錐状に群がって咲き、なかなかきれいです。
このアセビ、花よりは「馬酔木」という漢字を持ち出せば、ハハァンという人も多いかも。古来の呼名「アシビ」と読んで明治の短歌雑誌、昭和の俳句雑誌で有名だからです。
馬酔木とは、有毒で牛馬が食べると中毒し、麻痺状態になるという意味の名。シカの場合はアセビを食べると角が落ちるとも。
それを知ってか、シカで有名な奈良公園。アセビだけはシカに食い残されています。
(c)只木良也 2010
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