ムクロジにモウソウチク、青々と。(奈良・国立博物館裏)
大木の枝、球状にほわほわと見えるものがヤドリギ。ホストは全国4位の大ケヤキ。(大阪府能勢町野間)
絞め殺し植物。伸びた気根がホストの幹を絞める。(ベトナム・フエ)
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今回の「ちょっと教えて」で、タケの成長力のすごさから里山の侵略について触れました。ここでは、こんな一例をご紹介しましょう。
場所は奈良、国立博物館裏に、ムクロジという名の木が生育しています。
その幹直径は1mを超すものの、地上3〜4mのところで幹が折れ、そこから側枝が主幹として立ち上がって、樹高10mに達する大木です。
その幹折れのところから、モウソウチクが何本か伸びて、しっかり枝葉を広げて元気に育っているのです。そんなに太くはありませんが。
このムクロジから数m 離れたところにモウソウチク林があり、そこから伸びてきた地下茎がうまい具合にムクロジの根元に潜り込み、直下でタケノコの芽を出したと見られます。
その木がかなりの古木で中心部が腐っていたことも幸い。そこにタケノコが垂直に立ち上がり、ムクロジの幹折れの箇所から顔を出したというわけ。
なかなか見事なやり方です。空き地にタケノコを出していたならすぐ切られたでしょうから。
老大木に木本、草本、シダ類が着生・寄生すること自体は、さして珍しいことではありません。4月に紹介した京都御苑の「黒松桜」もその例です。
しかし、このケース、タケであることを考えてください。
タケにタネが実るのは、60年以上に一度しかありません。つまり、この木の上にタネが落ちて発芽したのではないということです。
ここでは紛れもなく地下茎からのタケノコであり、しかも年が変わって新竹も加わった様子。
と言うことは、このモウソウチクは、着生でなし寄生でもなし、と考えざるを得ないのです。
改めて、タケの生命力・成長力に驚かされる光景でした。
なお、着生・寄生について。
似たような言葉ですが、正しくは宿主(ホスト)にとって害の無いものが着生、害を生むものが寄生と区別されています。
たとえば、大木の幹についたコケの類。大木からそんなに栄養をもらうわけでもないので、「着生」。
これがヤドリギになると、ホストの枝で大増殖して栄養を奪い、ホストの成長を減退、ついには枯死させることもあるので、「寄生」。
また、熱帯では「絞め殺し植物」が有名。
鳥が運んできたイチジクの仲間などのタネが、元気な大木の枝の股などに発芽し大繁茂、ホストである巨木の樹冠を被い尽くすその一方で、樹上から気根(空中根)を垂らします。その気根はやがて地面に達し、独立して土壌から栄養をとるように。また、その何本もの気根によってホストの樹木はがんじがらめにされ、衰弱、ついに枯れてしまうのです。
「着生」から「寄生」へのエスカレート、といえばよいでしょうか。
(c)只木良也 2010
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