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2010.11
森林雑学ゼミ
 

生態系、改まって聞かれると?

 

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葉緑素を持つ木々、葉緑素を持たない動物。
このカモとサギは、植物由来の有機物を食べて生きている。




自然界の偉大なシステム「生態系物質循環」。森林はその運用のお手本。

 

 

 

 

 

 10月11月の「じぃじ先生 ちょっと教えて」で話題にした今回のCOP10。そのキーワードは「生態系」でした。
 今は、新聞、テレビでも、日常的に注釈なく使われる言葉。しかし、「生態系とは?」と改まって聞かれると、すぐに答えられない人が多い。答えがあったとしても千差万別、精粗様々ではないでしようか。
 で、今回はちょっとその解説を。

 「生態系」、いろいろな定義があります。そのなかで、私は、

 あるまとまった地域(空間)に生育する生物のすべて(植物、動物、微生物)と、その生育空間を満たす非生物的環境(大気、土壌、水、・・・)が形成し、両者間に物質の移動が存在する系

 ・・・という定義を使っています。

 「系」とは「システム」、というとわかりやすいかもしれません。
 生き物がいれば、生き物同士で関係があり、また生き物の周囲には必ずそれを取り巻く環境があります。
 しかし、これらは別々に存在しているのではなく、当然、相互に関連しているもので、それらを総合的にシステムとして捉えたもの、といえます。

 植物は、光合成をします。光合成とは、周囲の環境から二酸化炭素、水、栄養元素などを取り入れて、葉緑素を持つ植物が、無機物から有機物を合成する作用です。
 葉緑素の無い動物は自分で光合成できませんから、植物の生産物を食べて生きています。その動物を食べる動物、またそれを食べる動物・・・。植物からの落ち葉・枯死物、動物の排泄物や死体など、生命を失った有機物は、小動物に噛み砕かれ、微生物によって腐ります。
 腐るということは、有機物が分解されて、元の無機物に還元されて環境に戻ること。そして環境に戻った無機物は、また次の光合成の原料になります。

 これが「物質循環」という自然界のシステムで、これこそ大切なのです。
 このシステムが典型的に機能しているのが森林であり、森林は生態系を説明するモデルとして常に使われています。

 こうした考え方をまとめ、それに「エコシステム」と命名したのが、イギリスのタンスレーという植物生態学者、1935年のことでした。
 ところがこの頃、世界相手に戦争の時代、世界の学術情報に疎遠だったわが国。1945年に大戦が終了して、欧米の知識が流れ込み、「エコシステム」を「生態系」と日本語訳して紹介したのが、生態学者・人類学者の今西錦司先生、1949年のことでした。
 生態系の一単位は、大小様々に捉えられますが、ある生態系が必ず隣り合う生態系と関連を持ち、それがまた隣とつながっているのが「自然」というもの。
それはさらにある区域、ある地域・・・と大きなまとまりになり、ついに地球レベルに至るのです。

 この「生態系」。構造や機能、その永続性、典型である森林の特徴、など、話題は多いのですが、それらは今後折りに触れて。


(c)只木良也 2010

 

 

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