今月の「じぃじ先生 ちょっと教えて」は「光合成」。
 光合成とは、改めて確認しておくと、植物が葉緑素の働きにより、太陽エネルギーを利用して、二酸化炭素と水から炭水化物を生成する作用のことです。

 光合成による生産物は、植物の生活はもちろん、動物の生活も支えます。
 葉緑素がなくて、自ら光合成生産ができない動物の生活は、全面的に植物の生産に依存しているからです。
 その意味で、植物のことを「生産者」、動物のことを「消費者」と呼んでいます。

 一般論で言えば、光合成による生産物の量は、森林で最高です。それは、森林は草原などに比べて大規模な生態系を成すこと、とくに高さ、つまり垂直的な広がりがあること、そしてびっしり葉を着けること、に由来します。
 わが国では、樹高が30mもあれば、かなり立派な森林ですが、これくらいのものなら世界にはいくらでも。熱帯の多雨林へ行けば、最大木60mくらいはざらにあります。
 高さがあるということは、葉を垂直的に広く配置できるということ。
 したがって葉量は多く保持でき、光すなわち太陽エネルギーを無駄なく使えることを意味します。実際に光合成の担い手、葉の表面積(片面)合計は、森林ではそれが覆う土地面積の7〜8倍にも達し、これは、草原の葉の面積合計より5割程度は多いのです。

 たとえば1年間といったある時間内の総光合成生産の量を「総生産量」といいます。そして、生活に必要な呼吸に使う量を差し引いて、実際に植物有機物として固定された量を「純生産量」といいます。
 この関係は、ある商店を例にして、光合成における総生産量→店の総売上げ、呼吸量→必要経費、純生産量→純益、と、それぞれ置き換えればわかりやすいでしょう。
 森林の場合、これらの量は普通、年間1ヘクタール当たりの絶乾重量(水分ゼロの状態の重量)に換算して示されます。

 さて、過去の数多い調査から集約すれば、森林の総生産量は、草原の1.5〜2倍に達し、森林の光合成の効率のよさを物語ります。
 ところが、純生産量で比較すると、確かに森林の方が大きいものの、その差は目立たなくなります。これはどうしたことか。
 実は、森林には草原には無い幹や枝があり、根も大きく、植物量自体が二桁も違うので、それらの呼吸消費量が草原よりずっと大きいためだと考えられます。

 森林の光合成効率が良いことは間違いありません。海も含めた全地球上の純生産量の40〜50パーセントは森林によると推定されていますが、森林の占める面積は、全地球表面の9パーセントに過ぎないのです。
 そして光合成の原材料は、言うまでもなく二酸化炭素。地球温暖化を進める二酸化炭素を吸収・固定・貯留する森林の重要性、ますます大きくなっていくでしょう。
 
 ところで、光合成に使われる太陽エネルギーは、そこへ落ちてくる総量に対してどれくらいでしょうか。
 これはなんと最高能率の森林でもせいぜい3パーセント程度なのです。
 意外に小さい割合と思われるかもしれませんが、太陽エネルギーの大半は、地面や水を温めたりするのに使われるのです。



(c)只木良也 2010

YOSHIYA TADAKI 's web site 森林雑学研究室 Stories of Forest Ecology
只木良也



  光合成、その能力抜群の森林

森林雑学ゼミ
バックナンバー>>>



垂直的に広い葉の配置。奈良・春日山





びっしり葉で覆う。これが鬱閉(うっぺい)。
姫路・書写山



森林雑学ゼミ
バックナンバー>>>



inserted by FC2 system