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2011.04
森林雑学ゼミ
 

森林型の思考と行動

 

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われら東北出身者です

 

 

 

 

 

 2011年3月11日地震発生。
 津波の襲い来る映像、被災地の破壊の実況、避難の方々の生活状況、次々とテレビ画面に映し出されるのを、唖然として眺める数日でした。

 そのころの、まだ原発問題が顕在化する前の欧米メディアの記事・論評に、被災地での日本人の辛抱強さ、相互協力・助け合いをほめるものが目立つということを耳にしました。例えば・・・

 日本人の“Gaman”に驚いた、辛うじて助かった人たちの悲しみを必死に耐えながら、秩序正しく、冷静さを保つ様子。
 事を処するに当たって一般市民が示した弾力性と禁欲的、規律正しさ。
 自分のことは傍らに置いて、他人を助ける。
 日本人は一致団結して、この国難に立ち向かうだろう。 ・・・

 こうしたことを私は、わが国の国民が長い間培ってきた「森林型思考(→2010.6雑学ゼミ)」のものの考え方の反映だと捉えたいのです。

 豊かな森林のあるところ、自ずからその影響を受けたものの見方が育ちます。
 いまなお国土の3分の2が森林の日本。その森林が育んできたのが、一度落ち込んでも、必ず豊かな自然が再生し、やり直し復活、試行錯誤、修正可能なのが湿潤森林型思考・行動です。
 だからこそ、米人記者をも感心させた“Gaman”が可能なのでしょう。

 これの正反対が、「乾燥砂漠型思考」。
 死体も干乾びてしまう、厳しく冷酷な砂漠。見通しは森林内に比べていいという利点はあるものの、試行錯誤、やり直しは効かず、直裁直決の思考回路でないと自分の生存も危うい世界。中近東に生まれ育った砂漠型思考は、西進して西欧型に発達しました。

 わが国が明治以降、西洋文化を「先進」とみて追従・転換してきた結果、どうなったか。
 鳥瞰的に大局を視るという西洋型の長所は取り入れず、目先の黒か白かに汲々とするのみで、共生や助け合い、誤りを正す余裕もある森林型の長所も忘れた欠陥だらけの思考回路と行動に陥ったように思うのです。

 ・・・そう、思っていたのでした。

 それをあの海外メディアの評価を読んでこんな風に考えたいと思いました。

 東北は日本の中でも森林の多いところ。
 ということは、「一度落ち込んでも、必ず豊かな自然が再生し、協力してやり直し可能」、「それまで我慢」、その森林型思考も色濃く残るところ。
 再生を目指して、その森林が育んだ人々の力に希望を持っていたい。私にできることは、声援を送ることぐらいかもしれませんが。



(c)只木良也 2011

 

 

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