熱帯多雨林(マレーシア・パソー)
ジャイアント・セコイア林
(米・カリフォルニア州)
スギ人工林、これは80年生(山形・金山)
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バイオマスという言葉よく聞きますよね。バイオマス資源、バイオマス・エネルギー、バイオマス利用、・・・。
バイオマスbio-mass、バイオとは生物、マスとは量、すなわち、生物の量のこと。
今、ゼロの状態から出発した植物群落があるとします。時間とともに成長が進んで植物の量が大きくなっていくのは当然のこと。
そこで、ある空間内に存在する生物体の量を“ある時点”に限って計測したものを「現存量」(=standing crop)と呼びます。
これは、単位面積あたりの絶乾重量(生物体から水分を完全に追い出した重さ)で表し、森林の場合はふつう、トン/haという単位が使われます。
十分生育が進めば現存量の増加速度は次第に低下し、やがて現存量は上限に到達して、横ばいになります。それはどれくらいでしようか。
植物群落の種類によって、当然、その量は変わってきます。
草原ではせいぜい20トン/ha程度ですが、森林ではその10〜30倍にもなります。森林は、草原にはない幹や枝を大量に持っているからです。
森林の中でも、そのタイプによって現存量が異なり、一般に寒冷地域よりは温暖地域の方が大きな現存量を持つといえます。
アメリカの生態学者・ホイタッカーは、その1haあたりの平均値を、熱帯・亜熱帯多雨林450、熱帯・亜熱帯雨緑林350、暖・冷温帯常緑樹林350、暖・冷温帯落葉樹林300、亜寒帯林200トン、と、それぞれしています。
具体的な森林の、大きな現存量の例を挙げてみましょう。
1970年代に、私もその伐倒・計測調査に参加したマレーシアの熱帯多雨林、最高樹高58mのこの林の現存量は664トン/haでした。
しかし、アメリカ西海岸のセコイアの林では、樹高80mで、何と2,300トン/haと計測されています。ここは巨木林で、この近所には世界最大木、幹体積1,487?のジャイアント・セコイアが生育しているのです。この幹体積から換算すれば、この巨木1本で900トン!?
さて、わが国の最大現存量記録となると、最大蓄積記録を誇る、かつて山形県金山にあったスギ人工林。この森林(139年生時)1haあたりの幹体積が2、780?です(→2011.1.29ひとりごと.)。
それから換算した1,250トン/haという数字が挙げられるでしょう。
なお、この金山の森林の最大樹高は54m、平均樹高は42mでした。
さて、大きな話。
地球上の植物現存量は、1兆8千億トンほどと概算されています。ところがその99.8%までが陸上にあるといいます。
広大な海洋ではその表面だけが小さな植物プランクトンの生育するところ、波に揺れる昆布など大型海藻の生育可能な大陸棚・浅海などの面積は限られているからです。
陸上の植物現存量のうち、80%が森林です。
森林面積は陸地の4分の1近くにまで減少し、海も含めた地球表面積の11分の1を切りました。
この限られた面積の中に、地球全植物量の80%が詰め込まれているということ、このことだけでも地球における森林の重要性がわかるような気がしませんか。
なお、今も熱帯の林を中心に、年々730万haの森林が減り続けているといいます。
これは単純計算で、年々30億トンずつ現存量が減っていることを意味するのです。
(c)只木良也 2011
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