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2011.06
森林雑学ゼミ
 

案外スカスカの森の中―現存量の空間的密度

 

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文字通り「林立」、でも案外スカスカ。
(木曽・ヒノキ人工林)











こんなにしっかり「鬱閉」、でも案外スカスカ。
(奈良春日山・照葉樹林)

 

 

 

 

 

 前回、森林の「現存量」の話をしました(→2011.5森林雑学ゼミ)。現存量とは、ある時点にそこに存在する生物体の量(絶乾重量)のこと、と念のため、くり返しておきます。

 この現存量が大きいものとして、マレーシアの熱帯多雨林(最高樹高58mの林、現存量664トン/ha)、アメリカ西海岸のセコイアの林(最高樹高84m、2,300トン/ha)、わが国・山形県金山の139年生スギ人工林(最高樹高54m、1,250トン/ha)を列挙。
 これらを含めた巨大な森林の現存量は、地球の陸上の植物現存量の8割にあたるが、森林の面積は海を含めた地球表面積の11分の1に足りないということは、前回述べたとおりです。
 狭い面積に密度高く詰め込まれた現存量、そんなイメージが湧いてきます。

 ところで、それぞれの林で「底面積:1ha、高さ:樹高相当(m)」という空間を想定してみてください。
 今度は、その空間に存在する現存量について、密度を計算してみましょう。熱帯林で1.1、セコイア林で2.8、スギ林で2.3kg/m3、という数値が出ました。
 この値は、それぞれの森林において、木がびっしり生えているように見えても、森林の中は案外スカスカであることを表します。
 数字ではピンとこないかもしれませんね。カラカラに乾燥した状態の台所の洗い物用スポンジが10kg/m3程度といえば、イメージしやすいでしょうか。

 しかも、例としたセコイア林やスギ林は、極端な現存量を持つちょっと特異な例です。
 普通一般の森林の多くでは、地上部についてのこの現存量密度は、0.5〜1.5kg/m3(平均1kg/m3)あたりに落ち着くとされています(吉良・四手井1967年)。このことについて、針葉・広葉樹林、常緑・落葉樹林の明らかな差はありません。その森林が、葉ですっかり覆われた、すなわち鬱閉(閉鎖)状態にあることが必須条件ですが。
 1kg/m3といえば・・・。森林の物質密度は、先のスポンジのわずか10分の1にすぎません。
 
 この0.5〜1.5kg/m3(平均1kg/m3)という数値は、空間内の現存量の密度をあらわしています。これを、haを基準にすれば、樹高1mあたり5〜15トン/ha(平均10トン/ha)となります。
 この平均値を覚えておけば、上層木樹高さえわかれば、その森林の現存量は推定可能。例えば、上層木樹高10mならば10×10トン/ha=100トン/ha、15mならば15×10トン/ha=150トン/ha といった具合です。
 そして、この数値は、群落の現存量を決める最大の要因は樹高であること、樹高が高くなれば現存量はそれに比例して大きくなることをあらわしています。

 上記セコイアやスギ林とは反対に、密生した低木林などでは、樹高が低いことが影響して、現存量密度が高い例が見られます。
 例えば、ハイマツ林では10 kg/m3、極端に密生したトドマツ低木林やウバメガシ低木林2〜3kg/m3などです。
 また、草本群落における現存量密度は木本群落よりも小さくなるようで、0.2〜0.8、平均で0.5kg/ m3 程度。ササのように茎が木化するものでは、その中間の値になるようです。


(c)只木良也 2011

 

 

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