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2011.11
森林雑学ゼミ
 

原発事故、森林の今後は?

 

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こんな一面の落ち葉、どう取り除く?  
どこへどう片付ける?




こんな生きた木の葉をどう取り除く?  
どこへどう片付ける?




葉むしり調査中(1970年頃)。
研究のためとはいえ、地道でなかなか骨が折れます。


 

 

 

 

 

 2011年3月11日の大地震、それに伴う福島原発事故。
 森林の放射能汚染への対策として、汚染度の高くなりやすい葉と落葉を取り除くという手段が考えられています。
 本当にそんなことができるのかと悩むのは、先に述べたとおり(→2011.10.10ひとりごと)。
 なぜなら、それは森林生態系の本質である物質循環システム(→2009.12森林雑学ゼミ)を壊してしまうことだからです。

 森林が生きてゆくのに必須のこと、それは光合成です。光合成をつかさどるのは、言うまでもなく生きた葉であり、その産物は、樹木の成長はじめ、森林に生きるあらゆる生き物の生活を支えます(→2010.12森林雑学ゼミ)。
 光合成生産を終えると葉は散っていき、落ち葉は土壌生物の働きで分解されます。分解とは俗に言う「腐る」ということ。家の台所で食べ物が腐れば騒ぎですが、自然界では「腐る」のは大切なことです。
 そして、分解された養分元素は土を栄養豊富にし、また、腐りながら土に混ざる落ち葉は孔の多い柔らかな土を造るため、光合成生産力は向上します。
 
 つまり森林は、生きていくための資源を得るのに自給自足のシステム(=自己施肥)を持っているために、農地のように肥料が与えられなくても成長していけるというわけです。
 そしてこの、光合成→落葉→分解→土壌生成→光合成・・・という循環システムの運営にあたって中心となるのが、葉、です。
 ということから、今回の「森林の除染」の方法案。木々の生葉と落葉を除去するという手段は、森林の自給自足の循環システムを破壊することと考えられるのです。

 実際の作業についても考えるところがあります。
 かつて、森林の持つ葉の量を調査したことがありました(→2009.10森林雑学ゼミ)。調査結果は後の研究に大いに役立っていますが、当時の実際の作業としては、サンプル木を伐り倒し、葉をむしり取って重さを量るという、きわめて単純で手間のかかる面倒なもの。
 それを思うと、生きた木から大々的・全面的に葉を取る、それも汚染可能性の高い上層の葉をという「除染」作業について、さぞ大変だろうと感じ、そもそも広い森林でそんな作業は本当にできるのかと疑問が浮かびます。

 「除染」については、もうひとつ、学校のグラウンドの表層土はじめ放射能汚染物の仮置き場のことが気になっています。

 仮置き場として国有林を使用する(自治体に無償貸与)という方針が決められたとのこと。国が責任を持つ「除染」だから国有地の提供をという、方針決定に至るまでの経緯はわかります。国有林ですから、これまでも今後も公益性が重視されるのは当然のことですから。
 ですが、置かれるものというのは、ほかでもない「放射能汚染物」です。コンクリート枠詰めで林内に置くとする仮置き、その後の「除染」方法は今も不明のままであるとか。
 そう聞くと、この方針の背景に、森林という場は「木が生えている」だけの遊休地であり、未利用の空き地にすぎないといったような意識があるように思えてなりません。
 一般社会の森林への認識とは、その程度のものなのでしょうか。

 この問題の行く末、心配なことばかり。
 まずは流出水の水質に関する水源涵養機能、・・・。  


(c)只木良也 2011

 

 

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