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2012.01
森林雑学ゼミ
 

どうなる 気候変動枠組み条約

 

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「京都議定書」誕生の地、国立京都国際会館。
建物の前景を飾るのは、北山台杉。







二酸化炭素を吸収・貯蔵して、
加工を待つ木材・出荷を待つ木材。

 

 

 

 

 

 一昨年2010年12月、気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)が行われました(→2011.1森林雑学ゼミ)。
 そのときの最大の焦点は、1997年COP3で生まれた「京都議定書」の設定期間が2012年に終了、その後をどうするか。

 途上国は京都議定書期間延長を主張し、一方、京都議定書を批准して地球温暖化ガス削減義務を負う38の先進国・地域は単なる期間延長に反対。
 というのも、削減義務を負う国のなかに、今や合計して全世界の4割以上の温暖化ガスを排出している中国とアメリカの2国は含まれておらず、それでは「温暖化対策の解決にならない。すべての主要国が参加すべきだ」という理由からです。

 COP16では結論は出ずに先送り。昨年11〜12月に南アフリカのダーバンで開催されたCOP17が、その再検討の場となりました。2012年、期限切れ直前です。

 COP17の焦点は、2012年京都議定書終了後の空白期間をどう避けるか。新しい議定書の制定は最初からあきらめ、すったもんだの末、京都議定書期限をしばらく延長した上で、中国やアメリカ、インドも含んだ2020年に発効目途の新ルールを、2015年までに策定という合意にこぎ着けました。
 しかしそれは、各国の削減義務など、肝心の中身は3年後まで先送りというあいまいな対策に終わったことになります。

 わが国は、ロシアやカナダとともに、米中抜きの議定書延長は対策にならないとして、これに不参加。延長後新ルール発効までの期間は削減義務を受け入れないとしました。
 この行動、「削減努力しない」「削減できないから離脱」を意味すると理解されてしまわないか心配です。なんといっても、日本は京都議定書の親元の国ですから。
 新ルール発効までの7年間、排出量世界15%のEU(欧州連合)がリーダーシップをとります。現在経済危機のEUですが、です。
 それに比べて、京都議定書の母国・日本の存在感のなんと希薄なこと。世界に、無責任と思われないよう、相当の努力が必要です。

 2010年。世界の二酸化炭素排出量は、前年より6%増えて過去最高を記録し、2011年、北極海の氷は最小になった、といいます。もはや余裕は無いのです。
 しかし、この段階に至ってもまだ、世界の諸国間では、論議は経済成長優先です。南北問題の図式は崩れ始めている、とは言われていますが。

 そんななかでも、今回のCOP17で評価すべきことも幾つかありました。
 ひとつは、水没、砂漠化など、温暖化の被害ある途上国を、先進国が援助する「緑の気候基金」の設置。
 もうひとつは、「伐採後の国産木材も温室効果ガスの貯蔵庫として計測される」合意で、細部の詰めはこれからですが、森林にとっては重要なこと。しかし、新聞等ではあまり扱われませんでした。

 森林の伐採は、二酸化炭素問題に関してマイナス評価しがちですが、ある程度の生育段階を越え二酸化炭素吸収能力の衰えた森林を、伐採して吸収力の大きな若い森林に更新する、そのとき伐採収穫した木材を炭素貯留のまま長期間使用する、ということは、炭素の貯留として、大気中の二酸化炭素削減に大いに有効なのです。
 これは私のかねてよりの持論でもありました。





(c)只木良也 2012

 

 

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