一面真っ白。さて、場所はどこでしょう?
・・・正解は、関ヶ原。
京都から新幹線に乗って20〜30分のところです。
では、雪のカケラも見えないこちらの風景は?
・・・木曽谷です。寒い寒い長野県なのに?
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まず、左の2枚の写真見比べてください。
共に、2月8日撮影、撮影時間差は約1時間半。長野県の林大(木曽福島)へ向かう途中、列車の窓からのながめです。
1枚は東海道線:米原→関ヶ原、もう1枚は、中央西線:木曽谷、野尻→上松。さて、どちらがどちら? わかりますでしょうか。
木曽谷の冬は寒い、というのが一般的印象。それが「雪」と重なり合って、ついつい上が木曽谷、下が東海道と、大半が思われるのではないでしょうか。
ところが、正解はその逆。上が東海道、下が木曽谷、なのでした。
この日午前中、米原から関ヶ原にかけては、先日来降り積んだ雪に加えて、吹雪模様でした。これに対して木曽谷は晴天。少々あった積雪も前日に雨が降って消えてしまったとか。・・・で、この2枚の写真です。
さて、東海道線米原−関ヶ原間はかねてより雪が多く、JRの在来東海道線・新幹線はじめ交通の要注意箇所です。冬、ここを通過する新幹線の窓にシャーッと除雪用の水がかかるのに驚いた人も多いと思います。
この関ヶ原付近の雪は、日本海からやってきます。日本海側は、北陸地方をはじめ雪の多いことで知られています。冬、大陸から日本海を越えてやってくる寒冷で湿潤な大気が、本州の中央に連なる山々に遮られて、日本海側で降雪となる。
そのために、一方の太平洋側では雪は少なく晴天が多くなる、と説明されています。
では、日本の中央にそびえ連なる大きな山脈、いわゆる中央脊梁(せきりょう)山脈が無ければどうなるか・・・それが米原−関ヶ原なのでした。
福井県敦賀から滋賀県塩津、琵琶湖北端、伊吹山の西麓を巡って関ヶ原、岐阜から名古屋、伊勢湾というコースを考えてみてください。
さほど大きな障害物はありません。つまり、日本海経由の大気が寒冷湿潤なまま、太平洋への通過が容易な地峡地帯であり、これは、本州島の青森から山口までを通じて、唯一の大気通路です。とすれば、米原−関ヶ原に雪が多いこともわかります。
雪の多いときには、関ヶ原までに落ちきらなかった雪は、名古屋にも至ります。
実際に、名古屋の雪は、日本海側大雪と連動することが多いのでした。つい先日も、2月当初の北陸大雪の時に、名古屋15cmはじめ、東海各地にかなりの積雪がありました。
名古屋に住んでいたとき、私はこれに気付いて、「東海日本海型気候説」といいましたが、立派な気候学者の本にもこの記載を発見して、わが意を得たり、でした。
20年余り前、寒さのせいで、岐阜城のある金華山の常緑広葉樹やヒノキが枯れたことがありました。これも、関ヶ原を越してきた寒冷気のしわざ。まともにぶち当たったことによる被害だったのです。
木曽谷は冬寒いけれど、雪は案外少ないところ。もちろん、スキー場があるくらいですから毎年積雪はあります。
でもその雪の降り方は、北陸連動ではなくて、東日本太平洋側の雪とつながることが多いようです。日本海からは何重にも山の障壁があるからです。
かつて、長野県中央の松本に住んでいたことがありますが、松本も寒い割には雪の少ない地域で、降るときは太平洋側大雪のときに連動しているようでした。
こうした気候、雪と植生にはもちろん関係があります。雪の中の常緑広葉樹低木化(→2012.2ちょっと教えて)は、その一例です。
(c)只木良也 2012
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