原生林、シイの花盛り
(奈良・春日山)
人工林 よく手入れされたスギ林
(東京都・桧原村)
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2011年12月のCOP17。(→2012.1森林雑学ゼミ)京都議定書の期限をめぐる議論で紛糾、その一方で、「伐採後の木材も温室効果ガスの貯蔵庫として計測」という評価すべき結果が得られました。
かねがねわが国も主張し、私もそうあるべきと論じてきたことで、森林と二酸化炭素問題を扱う上で、重要な意味を持っています。
ちなみに、COPで議論される「温室効果ガス」の想定は6種類ですが、その中で最大の影響を持つものが、いうまでもなく二酸化炭素(炭酸ガス、CO2)です。
森林の光合成生産物、すなわち炭素化合物の一部は、年々幹などに蓄積されていきます。
森林の炭素蓄積量は年々増加し、幹という蓄積器官の無い草原に比べると桁違いに大きいのが特徴です。つまり、森林は炭素を吸収するだけでなく、吸収した炭素を集積する「貯蔵庫」として機能するというわけです。
その蓄積速度は若い時期には盛んながら、生育が進むと枯死等の脱落量も増え、炭素蓄積量は頭打ちになっていきます。
いわゆる原生林などは、もはや蓄積増加はないが、長年にわたり積み重ねてきた大きな蓄積量を持っているのが一般です。
森林・木材を通じた炭素問題対応策の要点は、次のように整理されます。
@その吸収体としての活力ある森林の造成維持
・・・若い成長力旺盛な森林
A炭素貯留の場としての大蓄積森林の長期維持
・・・原生林のような成熟した森林
B放出源としての非保続的(非更新)森林破壊の停止
・・・伐採跡は必ず更新
C木材として炭素貯留のままの長期利用
これまで、「森林伐採」は炭素問題に関してはマイナス行為と捉えられてきましたが、林業においては、伐った跡には森林を回復させるのが昔からの鉄則です。
ならば、二酸化炭素の吸収能力の衰えた森林を伐り、二酸化炭素をよく吸ってくれる若い林に切り替えることは有効といえます。
また、伐採収穫した木材は炭素の蓄積物(絶乾重量の約1/2は炭素の重量)ですから、それを炭素固定したまま木材として長期間使えば、それは長期間炭素を地上に留めることになり、大気中のものは増えません。
つまり、伐採や木材利用は炭素の収穫であり、貯留として有効なのです。
いうならば、法隆寺は建立から1300年もの間、炭素を貯留し、その分大気中の二酸化炭素濃度を低く抑えるのに貢献してきたのでした。
冒頭のCOP17の伐採後の木材についての合意は、このことについて世界的な了解を得たものであり、喜ばしいことなのです。
・・・とすれば、植えすぎたと評判の悪い人工林(→2010.8森林雑学ゼミ)。二酸化炭素問題に関しては主役であるべきです。
なぜなら、人工林は、成長の大きいことを狙って造成され(上記@対応)、経営計画に基づいて運営され(B対応)、経営計画により高蓄積森林へ誘導可能になり(A対応)、木材収穫効率が良い(C対応)からです。
わが国の森林面積の40%が人工林ですが、私の計算によれば、人工林による二酸化炭素吸収量は、全森林によるものの70%あまりに達するのです。
最後に、この視点から外材を考えてみましょう。それは、他国の二酸化炭素を吸った木材を日本に持ちこんで、国内で吐き出させていること・・・。
自国の二酸化炭素を吸った国産木材を国内で使うのが、「森林国日本」の理に適っていると思われませんか・・・?
(c)只木良也 2012 |