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2012.09
森林雑学ゼミ
 

巨木は針葉樹?

 

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高知・大豊町の大杉。美空ひばりが駆け出しの頃に願掛けしたという話も。





「シャーマン将軍」と呼ばれる、世界最大の樹・ギガントセコイア。アメリカ・カリフォルニア州





センペルセコイア。庭木植栽の大木。

京都 山科区。


 

 

 

 

 

 針葉樹とは、裸子植物の中の球果植物であって、その葉に針状のものが多いことからついた、いわば通り名です(→2012.9ちょっと教えて)。
 その後進化の進んだ被子植物の「広葉樹」と比べると、一般に、針葉樹のほうが成長速度は劣るが寿命は長いといえるようです。

 4,767歳(2001年現在)という世界の最長老の木、ブリッスルコーンパイン(米国カリフォルニア州ホワイト山地)も、わが国の最長老・推定3,500歳の屋久島の縄文杉も、もちろん針葉樹です。

 寿命が長いということは、巨木になるという意味も持っています。2000年に林野庁発表の全国国有林内「巨木100選」によると、うち28本が、わが国針葉樹の代表ともいうべきスギ、6本がヒノキでした。

 樹高でみれば、これもやはり、わが国ではスギが群を抜いています。
 現在トップを争うのは、高知県大豊町の大杉60m、秋田県二ツ井町のきみまち杉58m、愛知県宝来町の傘杉60mの3本とされます。なかでも、大豊町の大杉(国特別天然記念物)など、所在地は「大豊町杉」、最寄駅名は「大杉」(JR土讃線)、まさに地元のシンボル。
 また、そこへ水をさすつもりはないのですが、京都市文化財ブックス(1986年)に京都市左京区花背大悲山三本杉62.4mという記載もあります。 

 この樹高について世界に目を向けると、恐れ入りました。
 アメリカ西海岸コースト山脈のセンペルセコイア。セコイアメスギ、レッドウッドの名でも知られる樹種ですが、その高さ112m。日本記録の2倍近くです。推定樹齢2,000年以上とされ、その近所には、世界2・3・6位の同種も生育とか。

 また、幹体積(幹材積)世界一はというと、以前紹介したアメリカ・カリフォルニア州シェラネバダ山脈のギガントセコイア(セコイアオスギ/→2011.01.29ひとりごと)が君臨します。

 シャーマン将軍の呼称で知られるその巨木は、幹体積1,487m3、胸高周囲25m、樹高84m、樹齢2,000〜2,700年。わが国の最高蓄積記録といわれる山形県金山のスギ人工林(2,780m3/ha)の約半分、つまり0.5ha分をたった1本で持っているのです。

 オスギ、メスギと呼ぶことからも分かるように、両セコイアともに、スギ科所属の針葉樹。
 センペル(メスギ)の葉は一見モミやツガの系列ですが、ギガント(オスギ)の葉はわが国のスギにそっくりです。

 わが国にはギガントセコイアはなく、時折見かけるセコイアの名の植栽木はセンペルの方。
 スギに似ているギガントは、スギの大敵の赤枯れ病にさらに弱く、わが国では育苗できないようです。

 この桁外れの巨木針葉樹「セコイア」。「世界翁」の当て字があります。
 なんとも上手く考えたものだと、常々感心するところ・・・。


(c)只木良也 2012

 

 

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