葉の落ちたソメイヨシノとまだ緑のシダレヤナギ
緑のシダレヤナギ、葉のないクヌギ、枯葉のコナラ
冬も落葉しないシダレヤナギ。
2001年1月末、名古屋にて
街灯のそばのプラタナス。
2001年1月末、名古屋にて
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先日、「見渡せば柳桜をこき混ぜて都ぞ春の錦なりける」という素性法師の歌をひきながら、緑のシダレヤナギと紅葉のサクラが並ぶ写真を紹介しました。(→2012.11.28ひとりごと)
あれは11月27日の撮影で、今回示すのは12月6日のもの。
ソメイヨシノの葉はすっかり散り果て、一方、ヤナギはまだ青々と。
次の写真は植物園にて。
左のヤナギは緑、右手前のクヌギは葉が落ち、その奥のコナラは茶色の葉。
ヤナギはもちろん落葉樹です。
樹種によって、落葉の早い遅いはあって当然でしょうが、その度合いにはかなりの違いがあるようです。
樹木の紅葉・黄葉の時期、落葉の時期を決めるのは温度です。以前カラマツを例に説明しましたが(→2012.5森林雑学ゼミ)、温度の必要条件は樹種ごとに異なっていて、ヤナギはその条件が厳しく、いつまでも緑というわけです。
ところで、街角の写真を2枚。
やや見にくいかもしれませんが、これらは10年前の名古屋、あるビル街でのシダレヤナギとプラタナスの姿です。
一見何の変哲もありませんが、実はこの撮影は1月末。
他の木はとっくに落葉しているのに、なんと両方とも緑でした。
いうまでもなく両方とも落葉樹で、1月末には葉は無いはずの樹種。
実はこうした落葉樹の「常緑化」現象、昨今では各地の市街地でしばしば見られるものです。
この現象に注目が集まり始めたのは、昭和40年代後半のこと。
その原因としては、当然都市の温暖化説もありましたが、どうやら夜間照明による「日長効果」が大きいらしいとされました。
日長効果とは、明期と暗期の長さが生物の生理現象に影響することを言います。
季節に応じた生命活動を展開する植物は、気温とともに1日の長さ(24時間の中での昼と夜の長さの割合)を、季節を知る手段としています。
夜間照明の明るさは太陽光に比べるべくもなく光合成もできませんが、樹木にしてみれば昼(明期)の認識をします。
言われてみれば、こうした木々の多くは、街灯や夜間営業の店舗の脇、ビルの窓下、インターチェンジの周辺、ライトアップされているモニュメント周りなど、「夜も明るい」ところに育っています。なるほど、写真でもすぐ隣に街灯がありました。
樹種を問わずに見られる現象ですが、ヤナギはその性質がとくに顕著だと言えそうです。
明と暗の繰り返しは、植物の生活に正確なリズムを与えます。
芽が出る、花が咲く、実がなる、葉が落ちるというのは、植物が明暗から時期を判断して行っているものなのです。
こうした性質を有効利用したのが、夜も電気のついたビニールハウスなど。人為的に明暗時間をコントロールして育種や作物栽培に使ったりしてきたのですが。
ところで今後も、前述の街の照明のような「日長効果」の状態がずっと続いていったとしたら・・・。
例えば樹木は徐々に寒い冬に至ることが判断できなくなり、落葉はどんどん遅れていくでしょう。
それは、樹木が冬に耐える態勢を整えられていないということを意味します。となると、例えば急激な寒さに見舞われたとしたら、何らかの障害が起こる可能性は十分に考えられるのです。
将来、春の開葉や開花に影響がおよばないとも限りません。
落葉樹だというのに、冬は青々、春には開くべき葉が開かず、咲くべき花が咲かない・・・。
どうぞ、取り越し苦労であって欲しいものですが。
(c)只木良也 2012
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