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2013.02
森林雑学ゼミ
 

常緑広葉樹―照葉樹、硬葉樹

 

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シイ類主体の照葉樹林。緑鮮やか。

奈良・春日山

 

 

 

 

コジイ主体の照葉樹林。

林の中は、陰鬱な感じ。

 

 

 

 

照葉樹といえばツバキ。品種名「玉垂」。

京都植物園

 

 

 

 

硬葉樹林、チャパラルと呼ばれる。

アメリカ・カリフォルニア

 

 節分、厄除けとして使われるヒイラギ(→2013.2ちょっと教えて)は、刺のある葉が特徴的な「常緑広葉樹」、つまり1年中緑の葉を着けている広葉樹です。

 どうして1年中緑でいられるのでしょうか。その理由は、樹木が成長するのに必要な降水量と気温の条件を満たしているからです。

 

  この常緑広葉樹を主体に構成されている森林が常緑広葉樹林。1年中気温が高い熱帯・亜熱帯では、降水量が十分なところでは年中緑の常緑樹林ですが、雨季と乾季がある地域では、乾季には光合成を諦め、また水分の損失を防ぐ為に葉を落としてしまう落葉樹林になります。前者には多雨林、後者には雨緑林(雨の時期だけ緑)といった直截的な名がついています。

 これが温帯になると、降水量は十分であっても気温の影響が大きく、冬も暖かく葉を落とさない常緑樹林、寒い冬には葉の無い落葉樹林ということになります。

 わが国をはじめ降水量十分な東アジアでは、暖かい地域(暖温帯)でシイ類、カシ類などを代表とする常緑の照葉樹林、寒い地域(冷温帯)ではブナやナラ類などの落葉樹林です。

 なお、照葉樹の葉は、寒さに対抗するためか、比較的小型でちょっと厚ぼったく、つやつやした表皮が発達して、日の光に「照る」のでこの名で呼ばれています。ツバキの葉を想像してみてください。

 

 照葉樹林というのは暖温帯、つまりわが国の西部・南部を占める森林でした。それはわが国の文化が発達してきた主要地域というわけで、日本文化の進展に大きく貢献してきた、といっても良いでしょう。

 照葉樹林文化が大いに論議されたのは昭和の後半、中尾佐助先生、吉良龍夫先生はじめ、諸先生の照葉樹林文化に対する考えをまとめた、『照葉樹林文化』(上山春平編/中公新書、1969年)という本には副題として「日本文化の深層」と付いています。

 

  ということは、照葉樹林は日本文化発展の犠牲になった、とも考えられないでしょうか。何しろ降水量の多いわが国では、太古の昔はどこもかしこも森林、人が住み着くのも、農地を作るのも、土地を得るにはまず森林を壊すことから始めなければならなかったはずだからです。

 

 よく茂った照葉樹林は、年中暗くて陰気でうっとうしく、湿度高く、ヘビやカエルなど嫌な動物も多い、といった、人に好まれない雰囲気のものでした。それ故に、これを避ける、これを壊して他のものに作り変えることが「文化」だとしたのも無理ないかもしれません。

 事実、山菜取りやキノコ狩りなどの森を楽しみ使うことが盛んなのは、明るく人の立ち入りに抵抗のない中部・東北日本の冷温帯の落葉樹林だからです。

 

 さて、同じ常緑広葉樹でも、東アジア系の照葉樹に対して、地中海やカリフォルニアなどの硬葉樹という名のものがあります。これら大陸西部地方は、東アジアの3分の1程度の降水量で、それも冬に多いのです。

  ということは、夏の生育期に乾燥するわけで、水の損失を防ぐ為、厚い樹皮の幹、小型で表皮の発達した革質の葉を持っています。

 オリーブオイルで有名なオリーブ(モクセイ科)や、樹皮から採れる良質コルクでつくった栓が地中海沿岸のワイン生産を支えたコルクガシ(ブナ科)などが、その代表です。


(c)只木良也 2013

 

 

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