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2013.08
森林雑学ゼミ
 

森林生態系、特徴いろいろ

 

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本文A:

階層構造の発達した熱帯多雨林。

マレーシア 

 

 

 

 
本文C:

カモシカ、森林に棲む大型動物。

長野・木曽ヒノキ林内 

 

 

 


本文F:

針葉樹・広葉樹の混交林。

長野・大町


 

 

 生態系、それは、ある空間に生活する生物の全てとその生活空間を満たす無機的環境とが成す一つの系のことを言います(→2010.11森林雑学ゼミ)。
 「生物の全て」とは、植物、動物、微生物全てのことで、それらが生活しているところは、必ず大気、土、水などの「無機的環境」に充たされています。生物と環境とは不可分で、相互に関連しあう仕組み「系(システム)」を成し、その系の要点は、太陽をエネルギー源とする物質循環(環境→植物→動物→微生物→環境という物質の流れ)という基本システムを持つことです。
 この生態系を完成させる過程が「遷移」(→2013.8ちょっと教えて)であり、その終着点である「極相」は、その場所の条件が許す最高の構造と機能を持つ生態系だといえるのです。

 

 降水量の多いわが国では、極相は森林です(→2013.8ちょっと教えて)。
つまり、わが国は全国的に、どこへ行っても最も完成された生態系を持ちうる、ということです。
 逆に言えば、わが国では身近な自然:森林が、完成された典型的な生態系の姿と性質を教えてくれるということ。生態学の書物でも、生態系の説明のために、森林はいつも例に引かれています。 
そこで、完成度の高い生態系としての森林の特徴を考えてみましょう。

 

@ 長寿命の大型植物(樹木)で構成
森林を作る高木の年令は100〜1000年単位、樹高も大きく、わが国でも30m以上。アメリカとなると、セコイアの巨木地帯では100mほどまで達します。カリフォルニアのシェラネバダ山脈には84mのギガントセコイアが(→2012.9森林雑学ゼミ)、そして同じくコースト山脈にはかつてギネスブックに最高樹高として認定されたという111mのセンペルセコイアがそびえています。

 

A 立体的構造の発達・生物多様性
樹高の高い上層木の下に、亜高木、低木、草本、コケなど、いろいろな階層の植物が生育します。また、それに伴って動物も生育。生物多様性は豊かです。

B 大きな植物現存量  
立体構造が発達して、当然森林での植物体量は多く、それは草原と2桁も違います。

 

C 植物現存量≫動物現存量  
とにかく植物量が圧倒的。森林内には動物も沢山生育していますが、森林内の動植物量の90%以上が植物であるのが普通です。

 

D 大きな植物生産力  
立体的な階層構造の発達は光合成を行う葉が垂直的に広く分布し、光の利用に無駄がありません。そのため、森林は大きな植物生産力をもつことができるのです。       

 

E 大規模で円滑な物質循環
植物の光合成生産力が大きいことは、それを食べる消費者である動物たちを養う力も大きいということ。それは、動物間の食物連鎖(→2010.10ちょっと教えて)も複雑・大規模であることであり、動植物の生物遺体(生命を失った有機物) を分解・無機物への還元する微生物類の働きもスムーズになります。生態系の本質である物質循環(→2009.122010.11森林雑学ゼミ)が、規模・活動ともに抜群なのです。

 

F 和らいだ気象条件
樹高の高い森林は、その中に大量の大気を包み込み、外とは違った気象条件をつくります。林外と比べて、林内は気温・地温の変化幅が小さく、風の少ない、湿度のやや高い緩和された気象条件。それは、森林気象と呼ばれるほどです。

 

 ・・・このように考えてみれば、完成度の高い生態系はやはり、陰性高木林、それも原生林に集約されます。
 そこでは生態系の正常な活動があり、人間に生活に貢献する各種「生態系サービス」(→2011.2森林雑学ゼミ)も豊富に提供されている、と言えましょう。

  




(c)只木良也 2013

 

 

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