只木良也森林雑学研究室 本文へジャンプ

 
2014.01
森林雑学ゼミ
 

ハイマツみたいなカラマツ−富士山にて

 

  swpochiバックナンバー




 

新幹線の車窓から富士川越しに。

 

 

 

富士山高山帯にて、ハイマツ型のカラマツ。

 

 

 

カラマツ本来の姿はこちら。

亜高山郷土地帯ですくすく。

 

 




 

 

 白雪を頂いた富士山。新春のイメージとして、そのために準備されたような絵柄で、まったく違和感はありません。
 頭を雲の上に出し、四方の山を見下ろす日本一の山。その標高は3,776m。
 二つと無い「不二の山」、かぐや姫に去られ落胆した帝が不老不死の薬を燃やし「不死の山」。はたまた、不死薬を燃やすのに士(つわもの)大勢が山へ登ったことから、士に富む山で「富士の山」・・・。
 今年は世界文化遺産登録成って、はじめてのお正月。お祝いの意味も込め、今回は富士山に生育する、ある樹木の話です。

 

 登山の好きの人には常識ですが、中部地方の山岳地帯における植生は、海抜2,500m前後のところまでで樹高の高い森林(亜高山帯)がなくなり、それから上は樹高の低い茂み(高山帯)に変わるのが一般です。
 その低い茂みの代表がハイマツ。

 ハイマツは、お馴染みのアカマツやクロマツと同属ですが、葉は2本でなくて5本が1セット。寒いところに生育して、背は低くて株立ち、幹と枝の区別がはっきりしないというのが特徴です(「低木」といいます)。

 

 富士山の植生はというと、同じように海抜高2,500mあたりで、高木林から低木林に様変わりし、ハイマツらしきものの姿が見えます。
 しかし。実のところそれは、ハイマツでなくてカラマツなのでした。

 

 本来、亜高山帯の樹種であるカラマツ。中部地方に天然分布し、高木で、材木をとるのにも適した通直な針葉樹です。
 なのに、富士山ではハイマツが生育するはずの高山帯を占め、姿も背の低いハイマツ型に変えている。どうしてでしょう?


 その原因としては、富士山が比較的最近まで噴火を繰り返していたまだ新しい山であること、完全に独立峰である故に、ハイマツのタネがまだ入って来られないことが挙げられます。
 そこで、その空席を埋めるように、カラマツが亜高山帯から森林限界を越えて登ってきた、というわけなのです。

 

 ちなみに、カラマツは落葉樹です。日本にある他の針葉樹、スギ、ヒノキ、マツ類、モミ類、トウヒなどが冬も緑の常緑樹なのに対し、秋に見事に黄葉した後、葉は皆無になります。
 そんな特性は、「針葉樹(古くは「松」と総称)は常緑」という意識を常とする日本人には、異質なものに見えたのかもしれません。
 「あれは日本の松じゃない。唐(外国)の松だ」ということから唐松(カラマツ)の名がついたことも、「落葉松」と書いてカラマツと読ませることにも、なるほど納得です。


  

(c)只木良也 2014

 

 

swpochiページの先頭に戻る

swpochi森林雑学ゼミ バックナンバー

 

   


 
Stories of Forest Ecology  只木良也 森林雑学研究室
当サイト内の文章・画像等の無断転載はご遠慮ください。©2009-2017 YOSHIYA TADAKI All Rights Reserved.
inserted by FC2 system