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2014.08
森林雑学ゼミ
 

農山村、里山の活性化こそ

 

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この森林地帯どう取り扱うか。

考えるべきは、人工林ばかりでなく 全体のこと。

 

 

 

 


里地から里山を望む。

農・人・林のつながりの回復を。

京都・胡麻

 

 

 

 

 

里山から里地を望む。

林・人・農のつながりの回復を。

京都・南山城

 

 

 

 

 

 行政への提言を重要な任務とする国民森林会議。平成25年度の提言書「生活林と農家林家の再構築」を手に、今年7月3日、林野庁長官と意見を交換しました(→2014.7.9ひとりごと)。

 

 国民森林会議は平成24年度の提言において、現在進行中の「森林・林業再生プラン」、「森林林業基本計画」の施策をある程度高く評価をした上で、いくつかの指摘をしました。

 

・このプランは、わが国森林面積の40%を占める人工林経営の課題の対策に偏ったもので、日本の森林全体のグランドデザインが描けていないこと


・流域・地域の多数の中小規模林家の統合と施業体制化は、大いに効率的だが、メリットを狙い過ぎては、中小規模所有で意欲的な林家への配慮を欠いてしまうこと

 

・・・などです。今回の内容は、これを引継いでまとめています。

 

 農山村のあるべき姿の基本は、その地域の自然が産する資源を持続的・効率的に最大限に活かすことです。
 すなわち、国民生活にとって不可欠な食糧・エネルギー・資材は、本来、自国内の豊かな自然から供給されるべきものであり、農山村に広がる里山(≒生活林)と称するものの大事な意味はそこにあります。
 しかし、世界的な規模での経済発展は、分業化による効率上昇を求め続けるばかりで、農山村では農・林・人の横のつながりは断たれてしまいました。里山は機能せずに放置され、資源の多くあるいはほとんどを外国からの輸入に頼っているのが現状です。
 これは、都市化・経済効率化がすなわち「文明・近代化」であると理解し、推進してきたことの結果です。

 

 しかし、この思考を今、考え直すべきだという論議が世界的に認められ、広がりつつあります。
 人間社会が将来にも続いてゆくため、今必要なのは、農山村の再生・活性化といっていいでしょう。これは、地域内の物質とエネルギーを正常に循環させ、余剰物を都市に供給するという地域内再投資の効く動きの実現を求めていくということです。
 そのためには、農山村地域での雇用機会を増やし、人々の生活を安定させて、農山村を正常に維持してゆくことがまず必要。小規模農林家の活性化を図り、かつてのような里山の利用を、現代向きに復活適用することが、重要なポイントです。

 

 こうした今回の提言の要点は、俗に里山と呼ばれる人間生活に関与するところの多い森林の利活用についてですが、それは、単に農山村の活性化を狙うばかりではありません。
 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次報告書(2014年3月)が、このままいけば世界的食料不足や生物の大量絶滅などは避けられないと見る現在の消費型人間社会。これを、循環型の社会に転換するのに有力な具体例という意味も、今回の提言は持っているのです。


 国民森林会議の本年度の検討テーマは、「豊かな(農)山村をどのように築いていくか」。引き続き、提言をしていくべく討議を重ねてゆくつもりです。


  

(c)只木良也 2014

 

 

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