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2014.09
森林雑学ゼミ
 

土石流とヤマタノオロチ

 

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同じ山地の何本もの小沢に土石流が発生。
それらが合流して大きくなった流れは、 一気に斜面をかけ降り麓で拡がる。

 

 

 

 

 

 

中国山地の日常はこんなにも穏やかで、景勝地も多い。

岩国・錦帯橋からのぞむ。

 

 

 

 


日本最古の正史『日本書紀』より。

スサノオノミコトは林業の元祖!?

 

 

 

 

 

 「記録的」とか「気象台開設以来」だとかの気象データが連日の、この夏でした。台風、 大雨、大風、洪水、そして広島の住宅地を襲った土石流災害。

 今回の広島の災害の特徴は、同じ山地の平行する何本もの小沢が、連続して同時に土石流を起こしました。被害地域を覆う風化が進んだ花崗岩の「まさ土」は、水に侵食されやすく、土砂崩壊にも弱い表層土。土石の流れは斜面を下るとき、大きな岩石、倒した立木などを巻き込み、破壊力は大きくなりました。

 とすれば、森林のないほうが土石流の被害は少なくて済む、と思うかもしれません。

 しかし、それは早合点というもの。森林は水と土を護ってくれています(→2010.8ちょっと教えて2011.10森林雑学ゼミ)。

 今回の広島の豪雨は、森林が効力を発揮できる、いわば許容量を超えたものだと言わざるを得ません。

 

 ところで、最大の被害にみまわれた安佐南区八木。この被害地の古い地名は、蛇落地悪谷(じゃらくじあしだに)というそうです。

 そういえば、本年7月、土石流災害のあった長野県南木曽のあたりでは、土石流のことを古くから「蛇抜け」と呼んでいました。

  両者に共通するのは、そう「蛇」。

 いにしえの人々は、土砂が山から流れ下り荒れ狂うのを、大蛇が暴れる様に見立てたのでしょう。八木の地形を見れば「扇状地」。遠い昔から、土石流が繰り返して発生していた土地であることが推測されるのです。

 

 大蛇と言えば、ヤマタノオロチ(八岐大蛇)があります。

 頭・尾は八つに分かれ、背にはコケ、スギ、ヒノキ、マツなどが生い茂り、身体の長さは谷八つをわたるほど、といった異形とともに、里に出て人を襲いその命を奪うのが常、と、それは恐ろしいものとして古事記や日本書紀に描かれています。

 その出現の場は出雲の国です。つまり、広島と背中合わせの中国山地。

 ・・・といえば、今回の、7つの小沢で発生し合流して大きくなったという土石流とイメージが重なりませんか。

 

 この大蛇を退治したのがスサノオノミコトです。大蛇に酒を与え、酔って寝たところを斬り殺したという神話はおなじみですが、この話、私流に解釈してみました。

 古くから製鉄が盛んだった中国山地。その燃料のための森林の伐採があり、禿げ山化が進んで、当然山崩れ・土石流が起こりました。

 繰り返す土石流災害を何か上手くコントロールして、被害を軽減。その手段は、山の緑を大切にということで・・・。

 

 話を「被害の軽減」で終えず、「山の緑の大切さ」まで加えたのは、このスサノオノミコトには、「山の緑化」の元祖みたいな伝説があるから。

 彼が、髭を抜いて山に散らすとスギになった。胸毛はヒノキに、尻毛はマキに、眉毛はクスノキになり、そして、スギとクスノキは船に、ヒノキは宮殿建築に,マキは棺に使えと教えた、と、日本書紀にあるのです。

 おそらくというか、当然というか、かの時代、人工植栽ではなかったでしょう。

 しかし、山の緑を育成することが災害防止に役立った例は、きっとあったと思うのです。  


  

(c)只木良也 2014

 

 

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