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2014.11
森林雑学ゼミ
 

山火事が世界一の巨木を生んだ

 

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ギガント・セコイア“グラント将軍”。

幹の一部が焼けて空洞化していても、
幹材積は世界第3位。

 

 

 


 

山火事の跡の風景。

“toothpick forest(爪楊枝林)”と呼ばれる。





 

山火事の跡も年月が経つと・・・

更新したセコイアの若齢林。

 

 

 

 テレビの紀行番組で、アメリカ・ヨセミテ国立公園にあるセコイアの巨木が紹介されていました。当サイトでもおなじみの木です。
 ヨセミテの隣にあるセコイア・キングスキャニオン国立公園には、世界一の巨木、General Sherman(シャーマン将軍)と名付けられたギガント・セコイアが生育しています(→2012.9森林雑学ゼミ2011.1.29ひとりごと)。

 樹齢2700年ともいわれるこの木1本の幹材積ですが、わが国の高蓄積記録である山形県金山の大杉林の0.5ha分を超えるという大きさというから驚きです。
 このエリア周辺には、同様の巨木たちが大勢生育していて、その光景は圧巻としか言いようがありません。

 これらの巨木をよく見ると、太く大きな幹に焼け焦げ痕を持つもの、焼けて空洞化した枯立木などがあちこちに見られます。

 山火事の痕跡です。シェラネバダ山地は山火事の多いところで、50〜60年に1度の頻度で山火事が起こるといいます。
 ならば、セコイアもその被害に遭ってきたはず。火は木を燃やすのにどうして、あんなに巨木に・・・?
 当然の疑問です。しかし、実はあのセコイア巨木、山火事のおかげで今日まで育ってきたのです。

 セコイア・キングスキャニオン国立公園にあるGiant Forest 博物館に、こんな展示説明があります。

 “Life Cycle = Fire Cycle”  森林は火事によって作り出される。
 
 どういうことでしょうか。

 発生した山火事は、言うまでもなく、地表の落葉落枝などの堆積物、下層植生や低木類、中層木の葉を燃やし、見た目には無残な焼け野原が広がります。
 しかしそれは同時に、生態学的に見れば、地表が整理されて明るくなった状態ができあがったということ。そして広がった火は害虫・菌類を殺し、火災で生じた灰は土を肥やします。
 また、火事の熱はセコイアの球果を開かせます。中から出てきたタネは、火災による灰で肥えた土の上に落ちて芽を出し、育つのです。
 セコイアの樹皮は火に強く、巨木では厚さ数十cmにも達します。
 若い間に火災から免れたセコイアは、樹皮を発達させ、樹皮の表面は焦げても幹本体を守ります。こうして巨木が成立するのです。

 ここヨセミテの山火事はほとんどが自然発火ですが、時に人為的に火を放つこともあります。目的は森林更新のため。その作業をcontrol fire, management fireと言いますが、なるほど納得の呼び名です。
 その一方、現在では山火事拡大防止のために、落枝を整理処置する手入れ作業にも配慮しているのだそうです。
 なお、国立公園には山火事の判定担当専門官という専門職がおかれているのだとか。山火事の発生時には、気象、とくに風、火災の場所、火災の向き、人命への危険性、過去の経歴、など総合判断して、消火の程度を決定する役割を担っているのだそうです。

 ちなみに、アメリカでは、火事の熱で球果が開いてタネが飛び出す例は、マツでも見られます。厳正な自然保護としては山火事も消さない、ということにはこんな理由もあったのでした。
 とはいえ、わが国ではそんな例は知られていないため、厳正保護地でも山火事は消すことになっています。


  

(c)只木良也 2014

 

 

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