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2015.09
森林雑学ゼミ
 

ロンドンの“大きな”緑に

 

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公園越しに見える赤レンガの建物、風格ある。

 

 

 

 

街路樹は大きい。

樹種はマロニエ(わが国のトチノキと同属)。

 

 

 

 

ケンジントン・ガーデンの巨木。

樹種はヨーロッパナラ。

 

 

 

 

キュー・ガーデンのHolm oak(日本名:セイヨウヒイラギガシ )。
学名Quercus iIlex

 

 8月末、ごく短期間ながら、英国・ロンドンへ行ってきました。
 実に40年ぶりの訪問。古い街並み、風格ある教会などの建物、変わらぬ姿で迎えてくれました。
 石造り、レンガ造り主体のロンドンでは、その街並み景観の保存がかなり徹底しており、内部は改装しても、建物の道路面はそのままが原則なのだとか。
 あちこちの民家に、「過去、有名人居住のところ」を示す公設の青いプレートがついています。

  変わらぬ街並みを通って、あらためて感じたのは、街路樹や公園の樹などが大きなこと! もちろん「この40年間に大きくなった」と言うつもりはありません。
 もともと大樹尊重が基本だったのでしょうが、街路樹にしても、街中の小公園(といっても個々の面積はかなり広い)の樹木にしても、幹は太くて立派で、高さはビルの5階に達するほどの大きさはザラです。
 数字であらわせば、幹直径50p以上、高さ20m以上、といったところでしょうか。

 わが国の街路樹の枝は、空中の電線を守る、街の明るさ・景観を保つ、また落ち葉を減らすなどのため、通常刈り込まれます。
 しかし一方、ロンドンでは刈り込み無し、あるいは軽度の処置のみで、いうなれば街路樹は伸び放題のようです。
 なお、樹種はマロニエやプラタナスが多く、カエデ類も・・・。夏も終わりに近く、紅葉準備中。

 大公園においては、さらに見事な「大木・巨樹」が見られます。広い芝生に巨樹を点々と配置するのが常道で、太い枝張りには圧倒されます。
 ロンドンには、ハイド・パーク、ケンジントン・ガーデン、リージェント・パークなど大規模な公園がいくつもありますが、こうした光景は共通です。

 こうした公園群に君臨して存在するのが、Royal Botanic Gardens(王立植物園)と冠したキュー・ガーデン。
 250年以上の歴史をほこる世界遺産で、132haの敷地に「芝生と大木」を基調にしながら、40,000種もの世界各地の植物を育成展示しています。
 その中に、“holm” を見つけました。立派な枝振りを持つかなりの大木。昔から会いたかった奴。

 “holm”とはカシのことです。・・・と書くと、「え? カシはオークでしょ?」と思われる方は少なくないでしょう。
 たしかに日本では、“oak(オーク)”はカシの木のことという認識が一般的です。しかし、本来、ナラやカシワ等の落葉樹を指す言葉。ナラもカシもともにブナ科コナラ属の樹木ですが、英語ではそれらについて、落葉するものをoak、常緑のものをholmと使い分けているのです。

 日本でその使い分けがされなかったことを、私は、樹種の認知度の違いのためと推測しています。

 本来、英語圏では気候区分からoakの生育が圧倒的です。一方、日本文化においては同属のカシがポピュラーな存在。
 この状況から、日本では英語文化流入以来、「カシ」をoakの訳語とし、それが普及・定着してしまったのではないか、と。

 1975年、英国エリザベス女王による来日記念の植樹。これを新聞各社は「女王、カシの木をお手植え」と報じましたが、実はその樹種、oakだったのでした(→2010.5森林雑学ゼミ)。




(c)只木良也 2015

 

 

   



 

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