木へんに冬と書いて(柊)、ヒイラギ。その文字が示すとおり、ヒイラギは冬を代表する木で、とくに年の瀬から節分にかけて、我々の生活とも深く関わっています(→2013.2ちょっと教えて)。
ヒイラギのいちばんの特徴といえば、葉の刺でしょう。
だからこそ古来、方除けや節分の鬼除けなどに使われてきたわけですが、それも木が老熟するにつれて、だんだん無くなり丸く(全縁)なっていきます(→2013.2ちょっと教えて)。
つまり、ヒイラギの葉は千差万別。造園学者・上原敬二氏は『樹木大図説(1961年)』に、「ヒイラギの葉各様」として19枚の葉の図を残しておられます。
今夏訪れたイギリスでは、ヒイラギをよく見かけました。ヨーロッパのものは、セイヨウヒイラギと呼び、わが国のヒイラギとは科は異なります(ヒイラギ:モクセイ科、セイヨウヒイラギ:モチノキ科)。
両者における大きな違いは葉の付き方で、ヒイラギでは同じところから左右に2枚出る(対生)、セイヨウヒイラギは枝から互い違いに付く(互生)という点。とはいえ、刺のある葉は見た目そっくり、木が大きくなると全縁になるのも同じです。
また、刺の有るものを“he holly”、刺の無いものを“she holly”と、それぞれ呼ぶのだそうですが、わが国でも、刺有りを「オ(男)ヒイラギ」、刺無しを「メ(女)ヒイラギ」と呼ぶ地方があり、発想もよく似ています。
常緑樹種の少ないヨーロッパ、そこで生垣を造ろうと思えば、自ずと種が限られます。現地で見たところ、このセイヨウヒイラギがよく使われているようでした。
たとえばキュー・ガーデン(→2015.9森林雑学ゼミ、2015.10ちょっと教えて)では、公園の中心的存在の大温室の周辺には、大きく整形刈り込みされた生垣が配置されていました。
ロンドン西方、歴史的に羊毛の交易で栄え、今も古く美しいコッツウォルズ地方にもまた。
農村集落にある邸宅。そこの道路沿いの生垣や、その内側に丸く刈り込んだ庭木はセイヨウヒイラギでしょう。
車窓からの田園風景、畑・放牧地などの境界「ヘッジ」(→2015.11ちょっと教えて)をなす樹木も、確かめてはいないものの見た限り、多くはそれと思われます。
もちろん、セイヨウヒイラギ以外の常緑針葉樹も使われており、ケンジントン・ガーデンには、葉の細かいイチイの生垣がありました。
余談ながら、この樹種について刈り込み作業中のスタッフに尋ねたところ、返事はなんと、イチイの英名“yew”ではなくて、学名の“Taxus”で。
・・・感服しました(→2015.11ちょっと教えて)。
(c)只木良也 2015
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