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2016.06
森林雑学ゼミ
 

熊本・立田山コジイ林

 

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50余年前の立田山。
コジイ林をはるかに望む。







落ち葉の量を調べるための金網カゴ、
リター・トラップ







林内に置かれたリター・トラップ。
この中に落ちた葉を回収して重さを量る。





 

 熊本の地震災害、4月14日21時26分、M6.4震度7。続いて、4月16日1時25分、これを上回る本震、被害が拡大。1ヵ月余が経つ今もなお余震は続くとか。
 熊本は50年前、私の生活の場であったところです。(→2016.5ちょっと教えて)。


 50年前に研究対象としていたあのシイノキ林も、どうしているでしょうか。
 熊本市の東北部に位置し、標高150mほどの小丘陵ながら、頂上から阿蘇山がよく見えた立田山。その緩傾斜の南斜面は、1961(昭和36)年に私が赴任した農林省林業試験場(現森林総合研究所)九州支場の実験林でした。
 そこに広がっていたのが、コジイの幼齢林。戦後燃料用に伐採したアカマツ・コジイ林の跡にびっしりと更新したものと思われ、樹高4〜5mでした。


 当時、森林の立木密度と生長の問題は、重要な研究課題でした。試験場は、このコジイ林に手を入れて、1haあたり4,000〜45,000本の、立木密度の違う8区の試験区をつくり、その生育経過の調査を開始しました。
 そこで得られた結果は、吉良龍夫先生たちが草本植物で発見した生育密度と生長(競争密度効果)の法則の公式と一致。木本植物でもそれが成り立つことを証明する数少ない具体例となりました。
 同じ土地面積に本数を違えて植物を生育させた場合、平均1本あたりの重量は生育本数の少ない方が大きく、一方、面積あたりの重量は本数の多い方が大きくなります。
 しかし森林において、こうした差は、充分時間が経てば無くなる、という法則があります。
 この現象を数式で表わしたものが、競争密度効果。人工林の植栽本数・間伐などの実施設計に応用されています。


 ここでは、立木密度の違う試験区の落葉の量も調べました。
 試験区内に受け口面積0.5uの金網カゴ(リター・トラップ)を置き、それが受ける落葉を月1〜2回回収して重量を測ります。

 完全に葉で覆われた状態(鬱閉/うっぺい)だったこのコジイの試験区間では、年間落葉量にはほとんど差がなく(2.5〜3.5トン/ha/年)、年間の落葉のピークは毎年、新葉展開直後の5月頃で、この折に年間量の約半分が集中的に落葉することを、実際に確かめることができたのです。

 わが国の閉鎖している森林の葉量について言えるのは、樹種・生活タイプ別にha当たり葉量(絶乾重)ほぼ一定、絶乾重3トン/haという「基本葉量」で毎年新生・落葉、森林の葉量は基本葉量]葉の平均寿命(今年出た葉が枝についている年数)、常緑広葉樹の落葉シーズンは春の新葉展開直後、といった点(→2009.102009.11森林雑学ゼミ)。
 すなわち、生育本数密度が大幅に違っていても閉鎖林なら葉量は一定であること、コジイのような常緑広葉樹林では春に落葉、着葉の半分が交代する(葉の平均寿命は約25ヶ月)こと。これらを実際例として確かめることができた、その場所が、立田山のコジイ林だったのです。


 当時も今も、大きな感謝と思い出のある、あのコジイ林。九州には、私にとってそんな場所がいっぱい。
 生活の回復・街の復旧を祈るのはもちろん、山林の状況にも注目していたいと思っています。



(c)只木良也 2016

 

 

   



 

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