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2017.02
森林雑学ゼミ
 

なんともおもしろい名前の木

 

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アリドオシ




バクチノキ




ナンジャモンジャ




ヤマコウバシ




アアソウカイ

 






 

 先に扱った、植物園の様々な掲示。植物の名前を筆頭に、学名、和名、品種名などがありました(→2017.1ちょっと教えて)。
 日本で使われる植物の名前を和名と言います。その基本は昔から使われてきた呼び名で、材が素直な木、「直グ木」がスギに、すり合わせて火が起こしやすい「火の木」がヒノキに、葉の形が「蛙の手」のようだからカエデなどであり、それを長短、紅白、鋭鈍、地名などで形容しているのが一般です。
 しかし、中にはその枠には収まらない、こんなおもしろいものもあるのです。

 薬効があることから“難を転じる”で「ナンテン」というのは、有名な話です(→2012.1ちょっと教えて)。
 また、トゲがあるという樹木の特徴から蛇も登れないとして「ヘビノボラズ」(→2013.1ちょっと教えて)というものも。
 このヘビノボラズと同じ感覚の由来をもつのが「アリドオシ」。細く鋭いトゲがいっぱいの常緑低木で、そのトゲはアリの身体も通すほど、と言った意味。トゲのため「コトリトマラズ」の名もあり。

 「マタタビ」は猫の大好物とされますが、その名は昔、疲れ果てた旅人が摂って元気を回復し“また旅”を続けられたことに由来するとか。古人にとって旅の必需品というほどまでではなさそうですが、近年では、果実や葉に含まれる成分が疲労回復に効果ありとの研究結果が出ています。
 写真の赤い幹の木は、ウメやサクラと同属の「バクチノキ」。幹の皮が時ならず、次々めくれて落下するという不思議な特性を持ちます。そこから、不時に金を失う博打(ばくち)になぞらえた名がつきました。まさかと思いきや、これ、正式の和名です。

 まさかといえば「ナンジャモンジャ」。
 もっともこれは通称で、正式和名は「ヒトツバタゴ」。白い花をつけるモクセイの仲間で、明治神宮外苑の木がよく知られていますが、実は分布が稀でなかなか見ることがありません。ゆえに、「これ何の木?」「(分からない)何ジャモンジャ」・・・それが、有名すぎる通称の由来とされています。
 ただ、この点から、ナンジャモンジャは、名前が分かりにくい木に対して総合的に(便利に?)使われることもあります。クスノキ、アブラチャン、カツラなどが、主にその対象です。

  中国渡来の薬用植物としての名前“天台烏薬”が、そのまま和名となったのが、クスノキ科の「テンダイウヤク」。烏薬とは、その根から採れる樟脳の香りをもった利尿剤のことです。
 クスノキ科の植物は、匂いが良いものです。「ヤマコウバシ」はそのものズバリ、香り抜群の木です。クスノキの仲間でありながら常緑樹ではなく、冬に全部の葉が枯れたまま枝に残るのが特徴。葉が“落ちない”ので受験生に人気ありとか。

 香り・珍名とくれば避けて通れないのが「ヨグソミネバリ」。これはかつて神事などにも使われ、枕詞としても多用された“梓弓”をはじめ、建築材、漆器用材としても、古来重宝されてきた「ミズメ」(アズサ、カンバ属)の俗名。枝を折れば湿布薬のような香りがするものの、これを“夜糞”と表現するとは・・・。
 類似のものに、アカネ科の蔓茎植物で匂いの強い「へクソカズラ(屁糞蔓)」、葉を揉んで嗅ぐとくしゃみをもよおすツツジ科の「ハナヒリノキ」などなど。
 昔の人の発想は、いろいろな意味で見事です。

 そして最後に「アアソウカイ」。原産地が、アジア(亜細亜)とアフリカ(阿弗利加)両方の植生の接点であるマダガスカル。だから、漢字で書いて「亜阿相界」。
 ・・・ああそうかい、なるほど。京都府立植物園の温室で見られます。
     



(c)只木良也 2017

 

 

   



 

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