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2018.03
森林雑学ゼミ
 

「生態系と人間生活」 高校の理科に

 

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森林と人間のかかわりといえば、やはり一番に思い浮かぶのは森林浴。






人々の暮らしを支えてきた森林。最高級の菊炭を生む炭焼きの窯。大阪・能勢にて。








 

 

 2月14日、高等学校の学習指導要領改訂案が公表されました。学習指導要領とは、国が学校教育法等に基づいて定める教育課程の基準であり、 教育の目標や指導すべき内容等を体系的に示すものです。
 今回の改訂案。高校に必要な学習内容や生徒が身につけるべき資質・能力を明確にし、時代に合った「社会に開かれた教育課程」を目指すとしており、「主体的・対話的で深い学び」に向け、高校教科の各科目が見直されています。

 その「理科」の部分に、私が大きく賛同したい内容を見つけました。「生物」の科目で「生態系と人間生活」のテーマが取り上げられていることです。
 理科全般のねらいは、自然の事物・現象について科学的に探究するために必要な資質・能力を育成することで、実際に関わり、考え、観察・実験を行うことを推奨しています。「生態系と人間生活」のテーマでは、人間生活が生態系に及ぼす影響、生態系における生物同士および生物と環境との関係性、を扱うといいます。

  日本の自然といえば、陸地での代表はもちろん「森林」であり、自然の生態系は森林そのものです。森林が、木材資源、環境保全、文化形成を通じ、人間の日常生活に深く関わり、また貢献してくれていることについては、現在では多くの人々の知るところとなっています。
 しかし、私が長らく教壇に立ちながら常々実感していたのは、入学してくる学生たちが、森林のこと、とくに環境としての森林の捉え方などにあまり関心がないということでした。もっともこれはあくまで一般的な感想であり、林業大学校に入学するなど、その分野への興味や目的が明確な諸君はその限りではありません。
 こうした事態について私は、世界有数の森林国・日本において、高校までの学校教育で森林のことを学ぶ機会が極めて少ないことが原因なのではないかと考えます。
 昭和40年代生まれの娘は、かつて彼女の教科書を見ながら私が「森林のこと、習わへんのやなぁ」と嘆いていたのを覚えていると言います。昭和の後半、林業が不振となって国内産業としての比率が相対的に低下すると(→2013.11森林雑学ゼミ)、「林業」が教科書から消えました。それに伴って、林業の関連として教えられていた「森林」そのものも影が薄くなったような・・・。そのように思えてならないのです。

 今回の改訂案に盛り込まれた「生態系と人間生活」。これ実は、私の研究におけるメインテーマです。このサイトでも過去、森林雑学ゼミとして、生態系の概要(→2010.11)、生態系の活動とそれに基づく物質・環境・文化資源サービス(→2011.2)、森林が生む思考タイプ(→2011.4)ほか、また、じぃじ先生ちょっと教えてでも様々に扱ってきました。
 それ故に、高校の教育現場での実施に大賛成なのは言うまでもありません。大いに期待したいと思います。



(c)只木良也 2018

   



 

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