お昼のお弁当はやっぱりおにぎり。
必ずひとつは梅干なんだ。「身体にいいから」ってお母さんは言うんだけど・・・


梅干は殺菌作用があるなど、効用がよく言われるね。
ウメはもともと、中国から・・・



え? ウメって、日本の木じゃないの?


そうか、先にそれを言わなきゃいけないな。
うん。ウメはわが国の自生種でなくて原産地は中国なんだ。もっとも、日本でもごく限られた地域に自生していたという話もあるけれども。
日本には最初、それこそ薬用として梅干のような形で伝わってきて、次いで生きた木が輸入・植栽されたといわれている



そうなんだ・・・。
菅原道真の話があるよね。だから日本古来の木だと思ってた。


お、それを知ってるのか。


うん、飛梅伝説って言ったっけ? 
大宰府に流された道真を慕って、京都の屋敷にあったウメが九州まで飛んでいったんだよね。それにちなんで、太宰府天満宮の名物は「梅ヶ枝餅」!


あははは、食べたいねぇ。
道真はこよなくウメを愛した人で、
「東風(こち)吹かば匂いおこせよ梅の花主なしとて春な忘れそ」の歌は、彼が京を離れるとき、庭のウメに別れを惜しんで詠んだとして有名だ。
こうした故事が由来となって、学問の神様として道真をまつる天満宮の紋には梅があしらわれ、境内にはウメの木がとても多いんだよ。



ウメが日本に入ってきたのは、いつ頃なんだろう?


詳しいことはわからないが、歴史がうんと古いことは確かだよ。
700年代中期に編纂された万葉集にはウメを詠んだ歌が多いんだ。サクラを詠んだ歌44首に対して、ウメは118首と倍以上もあるという。
となると、その頃にはウメはその地位を確保していた、と考えられるんじゃないだろうか。
それから、「左近の桜・右近の橘」っていうのは知っているかな?



おひなさまのとき、お人形と一緒に飾る、あれだよね? 
京都御所でも見たよ。花は咲いていない時期だったけど。


おひなさまの飾りは御所の風景を模したもので、御所の紫宸殿の前のが本家本元だよ。
今はサクラとタチバナが植わっている。でも、平安遷都(794年)のときにはサクラではなくウメが植えられて、平安中期(960年頃)までは「左近の梅」だったというんだ。


日本ではサクラよりウメの方が多かった、身近だったってことかな?


いやいや、それは言えないね。ほら、ウメは中国が原産の外来種で、一方サクラは日本が原産なわけだから。ただ、「サクラよりウメ」で考えられるのは・・・。
当時の日本で、日本の歌を詠むほどの知識人や上流階級の人々にとって、中国ってどういう国だったと思う?



憧れの国、かな。
学問や文化などを学ぶために、遣隋使とか遣唐使を送ってたよね。


そう、知識の源といったところだね。
そうした国で生まれた花木のウメを持つことは、彼らにとっては一種のステータスだったのではないかな。競って身の回りに配したに違いない。
ウメそのものの魅力も、もちろんある。
いろいろな花のトップを切って、まだ寒い時期から花開き、匂いを放つ。あの凛(りん)とした気品は、昔ばかりでなく今も愛される理由だろう。「花の兄」の名もある。



枝も他の木となんか違うでしょう? ちょっとカクカクした、あの感じ。


それはおもしろい観察だなぁ。
ウメは庭木や梅林といった観賞を目的として育てられるものが多い。ということは、枝を剪定して整える、すなわち人の手が加わっていることが多いということ。
だからよけいに、そう見えるんだろうな。



すごく特徴的。あの枝にウグイスがとまるのは、やっぱり絵になる。


ウメにウグイスは、定番の構図だね。
「サクラ切る馬鹿、ウメ切らぬ馬鹿」という言葉があるが、これには、サクラの枝は一度切れば再生が難しい、ウメの枝は再生しやすくて枝振りや花付きも良くなる、という両者の性質の違いが語られている。
それを整枝作業に活かそうという、花木の手入れのコツを伝える言葉だよ。


ウメが育ちやすいのは、どういう環境なの? 
気候とか土とか、関係あるのかな。


ウメは中国から渡来したものを、接木や挿し木で増やしてきた栽培種だから、環境に関しても肥料など人為的な工夫がされている。ひと口にウメといっても300種以上の品趣があるんだよ。
寒暖にも対応できるし、古い園芸書には、ウメは峰にも谷にも、山にも里にも適応できると書いてある。



ウメの名所としてはお寺の庭とか梅林ばかりを聞くけど、ウメ並木ってないのかな?
サクラ並木はよくあるけど・・・。


ああ、これは参ったな! 言われてみれば、なるほど、ウメは単木か梅林、梅苑だ。並木は見たことがないなぁ。
どうしてだろう? もっとも、あまり大きな木にならないあの樹形で。並木になっていても、サマにならないと思うんだが・・・。



じゃあ、それは、じぃじ先生への宿題ということで、よろしくね(笑)。


YOSHIYA TADAKI 's web site 森林雑学研究室 Stories of Forest Ecology


 



2月の初め、北野天満宮にて紅梅。咲いていたのはごくわずか。他はまだまだ。





同じく白梅。お提灯には天神さんの社紋。もちろん、梅です。





絵画や工芸、ウメはなにかと好まれます。おや、こんなとこにも・・・階段の飾り窓なり。





関東の七五三、関西(ことに京都)の十三参り。
そのときのお着物は、ウメとタケのめでた柄でした。





確かに、枝は“カクカク”している。





“カクカク”雪化粧。







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お弁当のおにぎりは、いつも梅干入り。

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