じぃじ先生の家も、地デジ対応のテレビになったね。
エコポイント、もらったの?


あれ、申請しないといけないんだけど・・・。
そのエコポイントの「エコ」。言葉の意味って知ってるかな?



えーっと、エコバッグとか、エコカーとか・・・。
環境のことを考えた商品だから・・・「エコロジー」だ! 
辞書で調べてみるね。ecologyは、eco(環境)のlogy(学問)、だって。


あ、そう書いてあるのか。じぃじ先生の立場からすると、ちょっと違うなぁ。エコロジーは「生態学」だよ。
ecoの語源は、ギリシャ語のoikosで・・・。


ちょっと待って・・・ギリシャ語で「家」の意味。
え? 家???


そう。家とか、すみか、そして生計・生活の意味だ。
本来、生物のありよう・そのすみかといったことを考える生態学という学問の内容から、生物のすみか=自然→地球と広く捉えられるようになり、環境の代名詞のように使われるようになったのではないかと思うんだ。
・・・で、その近くに、economyって言葉はないかな?


経済学、だよね。あるある。
economyは、eco(家)のnomy(法則)、らしい。


これもまた、oikosから生まれた言葉なんだ。もとは一家の生計・生活の法則、それが社会全体の経済学の意味に広がっていった。
語源が同じだから、エコロジーとエコノミーとは、兄弟のようなものだね。
歴史はエコノミーの方が古い。古代から概念はあって、16世紀の近代化にともなって学問として発展したんだ。そして、現代の資本主義の礎であり、人間にとって発展した社会をつくった。
われわれは、ずっと、その恩恵にあずかってきたんだよ。



エコロジーの成り立ちは、いつ頃?


ずっと若く、生まれたのは1866年、ドイツのヘッケルという学者によって唱えられた言葉だ。
彼はもともと生物学に詳しかったんだが、その分野の研究が深まるうち、環境と生物との関係に着目し始め、やがてそれを生物学のひとつの学問分野として独立させることを考えた。そして「エコロジー(ドイツ語でŎkologie)」と呼んだんだ。



エコロジーとエコノミー。確かに言葉としては似てる。でも、内容に共通点がどうも見えないんだけど・・・。


うんうん。そこ、大事なところだよ。
兄のエコノミーと弟のエコロジー。2人は同じ家で生まれたものの、エコノミーが人間社会の金銭収支、エコロジーが生物社会の物質収支とそれを支える環境といったぐあいに、兄弟の性格は異なるんだよ。



仲良くないのかぁ・・・。


あははは。熱帯の森林を例に見ようか。
生えている木を木材として売って収入を得た後、その土地を畑にするという話が、よくある。
畑にするのは、手っ取り早くくり返し収入を得るためだ。木を育てるには時間がかかるだろう? 収入が見込める森林に育つまで、待っていられないよね。



収入かぁ。お兄ちゃんの勝ちだ。森林がなくなっていく・・・。


何より問題なのは、そのとき収入は増えるが、今まで人間たちの生活を支えてくれていた森林が提供する「環境」が失われてしまうことだ。


あ~あ・・・なんでそうなっちゃうんだろ?


人間が収入にこだわるから。また、便利さを手放さない、手放せないからなんだろうね。
どうしても人間の生活を最優先に考え、そのために、大切な環境や自然に負担をかける、犠牲にするような形になってしまう。



え? あれ? その話って前に・・・?


お、思い出したかな?


生物多様性会議で環境問題の議論が人間本位になっちゃってる、って話があったよね。


そう。その考え方は、生物多様性問題におけるキーポイントだ。そして名古屋で行われた、COP10のあの会議は、まさしく現代におけるエコ兄弟の関係を表していたといえる。
年末にメキシコでCOP16があったろう? あれも、同じような様相だったみたいだよ。あの会議については、雑学で話すとしよう。



兄弟が仲良くやっている例はないのかなぁ。
あ、愛知万博の会場、環境を考えて計画を変更したんじゃなかったっけ?


お、よく覚えているなぁ。
そう、あの会場、海上(かいしょ)の森の開発は計画からかなり変わったんだよ。生態系のことはもちろん、他にもいろいろな事象が重なってね。



弟の言い分をお兄ちゃんが聞き入れた、みたいな感じ?


「聞き入れた」と言い切っていいかは疑問だけど、兄弟のバランスがまずまず保てた例と言えるんじゃないかな。
兄弟仲良しの例といえば、日本の里山がそれに近いね。



里山が? え~っと・・・里山って、人の暮らしを支えてきた自然のことだよね。それって、エコノミー兄ちゃんの勝ちじゃないの?


うん、里山が人の暮らしを支えてきたのは確かだ。ただ、人々は里山の自然と共存してきたんだ。
食用に、燃料用に、自分たちが暮らしていくのに必要なものを必要な分だけを得ていた。
もちろんやりすぎたところも全国あちこちにあったが、さっきの熱帯の例とは違って、何もかも根こそぎ取ってしまうのではなく、土壌が自力で十分に再生できる力を残していたんだよ。


だから、「共存」なんだ。


そう。そこに注目し、日本が世界に向けて発信したのが、COP10のときの“SATOYAMA”提言だ。
今まで、エコノミー兄ちゃんが支配して立派な世界を築いてきた。しかし、これからは弟のエコロジーの出番。弟がしっかりしないと、兄貴が築いた文明も危うくなる。


エコ兄弟に仲良くしてもらわないと、大変だよね。
だって、oikos(家)、地球はひとつしかないんだから。






YOSHIYA TADAKI 's web site 森林雑学研究室 Stories of Forest Ecology


  エコノミ―とエコロジーは兄弟なの?



テレビを買ったら、こんな書類をもらった。
じぃじ先生、ちゃんと記入しなくちゃ。










熱帯の森林。
木材として収入を得るために伐られたあとは、さて、どうなるか・・・。










熱帯の木々伐採跡の風景。
熱帯にはこんな状態で放置せざるを得なくなった土地があちこちに。










愛知万博開催前の海上の森。
モリゾーとキッコロはこの森からやってきて、閉幕後、帰っていったんだよね。




















兄・エコノミ―
「おいっ、それもこっちによこせ。
 開発するんだからなっ」

弟・エコロジー
「ダメだよ、これは! 
ボクの大事なものなんだから(泣)
お兄ちゃん、これくらいボクに残しておいてよ!!」

















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