「子どもの頃、ニセアカシアの葉で遊びました」ってメールが、読者の方から届いたよ! アカシアの話(→2011.5ちょっと教えて)から当時を思い出して、送ってくださったんだって。


それはそれは、嬉しいことだなぁ。
どれどれ、どんな遊びだろう・・・?



 ① 自分の葉っぱを選び、少しちぎって印をつける。

 ② 右下の葉から上へ「月、火、水、木、金、土、日」と、
  ぐるりとひとつずつ数え、日曜日の葉を取る。

 ③ 印をつけた葉が日曜日に当たれば負け。②をくり返し、
 最後に葉が残った人の勝ち。



なるほどなぁ。これは、ニセアカシアの葉が「複葉」という形状だからこそ、の遊びだね。



複葉・・・?


見たとおり、ニセアカシアの葉は、小さな葉がたくさん集まっている形だ。
この小さな葉は、一枚一枚を「小葉」といい、実は中央の軸についている小葉全部で一枚の葉ととらえる。
こうした葉のことを「複葉」と呼んでいる。



複数の小葉が集まった葉っていうことなんだね。


そうだ。ニセアカシアの葉のようなものは、その形を鳥の羽にたとえて、特に「羽状複葉」という。
同じような木は他にもあるよ。考えてごらん。



こういう葉っぱ、フジとか、つるが伸びる植物に多いイメージがあるなぁ。あとは、シダ系とか。


うんうん、なるほど。ツル植物とは限らないけれどね。
ほかにも、ハゼノキ、ネムノキ・・・。



冷奴や若竹煮に添えてある木の芽もかな? 食べる前にパン!と叩いて香りを出す、あれもそう?


サンショだね。あれもそうだ。他にもまだまだ。
クルミの類、センダン、野球のバットのアオダモなどのトネリコの類、樹皮を胃腸薬に使うキハダ・・・。



たくさんあるねえ。
複葉という言葉がわざわざあるということは、単葉っていうのもあるのかな?


そのとおり、あるある。
1枚ごとに独立した葉と認識するものを「単葉」と呼ぶんだ。シイ類、カシ類、ブナ、ナラ類、カエデ類などが代表的だね。



同じ種類の木で、単葉と複葉の両方がある場合なんかもあるのかな? 
それとも親戚はみんな似た形をしてるの?


原則として種によってどちらか決まっているんだ。



単葉と複葉は交配できるの? 


どんな形の葉になるかって?(笑) 残念、種が違うから、交配はできないね。


そっか・・・。


そして、これが、孔子が好んだというカイノキ(偕の木、ランシンボク)。これも複葉だ。



あれ? このカイノキの葉っぱ、アカシアとはてっぺんの葉のつき方が違う。


お、気がついたな(笑)。
小葉の数は分類のポイントのひとつ。数によって呼び方が異なるんだよ。
てっぺんが1枚のものは「奇数羽状複葉」、ニセアカシアがそうだね。
一方、このカイノキのようなてっぺんが2枚のものは、「偶数羽状複葉」と呼ぶんだ。


奇数と偶数、どうして違うの?


葉のつき方は種によって決まっていて、種の判別の基準になっている。
時折、気まぐれなものが混じることもあるけどね。



あ、これはもっと複雑だよ。小さな葉っぱがさらに細かくなってる。テッペンに葉が2枚のと1枚のとが・・・


ああ、これは羽状複葉の、もうひと段階複雑なもの。


えぇ~!? ということは、これ全部でひとつの葉っぱなの?


そう。各小葉がさらに分かれた「再複葉」というものだ。



羽みたいな羽状複葉のほかには、どんな種類があるの?


もうひとつ「掌状複葉」というのもある。



掌状・・・手のひらみたいってことかな?


そのとおり。教えられるまで案外気がつかないのだが。トチノキがそれ。
トチノキは,小葉が7枚のものが多く、七葉樹という古い呼び方もある。



複葉だから、本当は「一葉樹」ってことだよね。


あははは。そうだね。


大好きな朴葉巻(→2011.6.4ひとりごと)に使うホウノキの葉っぱもよく似ているけど、あれも掌状複葉?


いや、ホウノキは1枚1枚が単葉扱いなんだ。
枝先の葉の数は、2~10枚近くまでまちまちだ。ほら、朴葉巻って一枝についている団子の数、すなわち葉の枚数はいろいろだろう?



トチノキは複葉、ホウノキは単葉。あんなに似ているのに?


そうだね。その違いは葉の落ち方で判断するんだよ。葉が一枚ずつ落ちるのが単葉、小葉ひとまとまりで落ちるのが複葉というわけだ。


そっか。葉の種類には複葉と単葉があって、複葉はさらに細分化されて、いくつか種類があるってことだね。

つまりこういうことか。

ところで、・・・葉っぱが複葉になるのは、何かメリットがあるのかな?


メリットって?


う~ん・・・例えば、べったり葉っぱが広がっている単葉より、小葉の集まった複葉の方が、風通しがよくて軽いイメージ。
そのせいかな? 幹があまり太くないツル科とかマメ科に多い感じがするんだけど。


ああ、そういう意味か。なかなかおもしろい着眼点だな。
ただ、一概に軽いからとは言えないな。複葉は、クルミなどの大木にも普通にみられるからね。
むしろ、光を受けるについて葉の角度を変えやすいとか、外界の条件に応じて反応しやすいということが考えられるね。



外界の条件? 夕方になると寝ちゃうネムノキとか?


そうだね。刺激に反応するオジギソウなんかもそうだ。


なるほど。フレキシブルって大切なんだ。葉っぱも人間もね。



YOSHIYA TADAKI 's web site 森林雑学研究室 Stories of Forest Ecology


  ニセアカシアの葉、こんな遊びがあるんだって。



これがその遊びかた! 京都のSさんより。





ニセアカシア





フジ





カイノキ




左)偶数羽状複葉 
カイノキ、ネムノキ、ムクロジ(→2010.7森林雑学ゼミ)など例は少ないが。

右)奇数羽状複葉 
ニセアカシア、フジ、クルミ、トネリコなど、こちらのタイプが普通。





複葉がさらに複葉になった再複葉





掌状複葉のトチノキ





ホウノキは単葉





ネムノキ









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